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第五章 それは日々の話
148 赤璃さまの侍女さん 成人
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部屋の扉が、こんこん、と強めに叩かれた。
出ていった侍女さんの叩きかたじゃない、と赤璃さまと目を見合わせる。
「赤璃さま。皇宮医長の大国真白にございます」
「聞いてないわ」
聞こえてきた嗄れた声に、赤璃さまが小さな声で呟いた。
「どうされますか?」
じいやが扉の近くに立って赤璃さまに聞く。
「会いたくないけど……」
「赤璃さまはお休み中です。お引き取りください」
扉の向こうから侍女さんの声が聞こえた。お茶と軽食を持って帰ってきたところに、さっきの大国真白がいたんだろう。
じいやが、すっと、扉を開けても見えない位置に移動する。任せることにしたらしい。
「定期的に診察を受けに来てください、とお伝えしてあるというのに、全く音沙汰無しとはどういうことだ?」
大国の声は大きい。赤璃さまはお休みしている、と侍女さんが言っているのに、駄目だと思う。
「大きなお声を出されないでくださいませ。お休み中だと申した筈です」
侍女さんの抑えた声は、冷静に少しだけ聞こえてくる。俺と赤璃さまは、そうっと扉の近くに寄った。じいやが、少し笑うのが見える。面白そうにしてるから、これはやってもいいってことだな。
「はっ。お休み中の方に、温かいお茶と軽食をお運びするのか?見え透いた嘘をつくな!」
「お休み中ですが、体のために、そろそろ水分や軽食をとられた方がよろしいかと愚考致しましてございます。今、妃殿下は皇家の御子様の命を預かっておられますゆえ」
「さればこそだ!」
冷静に返されて、大国は更に、かっと頭に血が上ったらしい。
扉で隔てられて見えていないのに、顔を真っ赤にしたお爺さんが思い浮かんだ。
「さればこそ、定期的に診察を受けに来られたし、と申し上げておる!」
「何故、皇太子妃殿下が、わざわざ指示に従い医局まで出向かねばならぬのでしょう?必要とあればお呼びしますので、大国さまがお気になさることはございません」
おお。侍女さん、格好いい。赤璃さまは満足げに頷いて、ソファに帰って行った。
俺も、もういいや。
「つまんなかったわね」
「格好良かったよ」
「後で言ってあげて」
「いいよー」
俺たちがソファに並んで呑気にお茶を待っていると、大きな音が扉の向こうから聞こえた。じいやが扉の向こうへ一度、消える。
すぐに戻ってきて、赤璃さまに耳打ちした。
何なに?
俺に聞こえてないよ。
「部屋の中へ入れなさい」
俺が、話を教えてもらおうと顔を上げると、赤璃さまの冷たい声がした。
出ていった侍女さんの叩きかたじゃない、と赤璃さまと目を見合わせる。
「赤璃さま。皇宮医長の大国真白にございます」
「聞いてないわ」
聞こえてきた嗄れた声に、赤璃さまが小さな声で呟いた。
「どうされますか?」
じいやが扉の近くに立って赤璃さまに聞く。
「会いたくないけど……」
「赤璃さまはお休み中です。お引き取りください」
扉の向こうから侍女さんの声が聞こえた。お茶と軽食を持って帰ってきたところに、さっきの大国真白がいたんだろう。
じいやが、すっと、扉を開けても見えない位置に移動する。任せることにしたらしい。
「定期的に診察を受けに来てください、とお伝えしてあるというのに、全く音沙汰無しとはどういうことだ?」
大国の声は大きい。赤璃さまはお休みしている、と侍女さんが言っているのに、駄目だと思う。
「大きなお声を出されないでくださいませ。お休み中だと申した筈です」
侍女さんの抑えた声は、冷静に少しだけ聞こえてくる。俺と赤璃さまは、そうっと扉の近くに寄った。じいやが、少し笑うのが見える。面白そうにしてるから、これはやってもいいってことだな。
「はっ。お休み中の方に、温かいお茶と軽食をお運びするのか?見え透いた嘘をつくな!」
「お休み中ですが、体のために、そろそろ水分や軽食をとられた方がよろしいかと愚考致しましてございます。今、妃殿下は皇家の御子様の命を預かっておられますゆえ」
「さればこそだ!」
冷静に返されて、大国は更に、かっと頭に血が上ったらしい。
扉で隔てられて見えていないのに、顔を真っ赤にしたお爺さんが思い浮かんだ。
「さればこそ、定期的に診察を受けに来られたし、と申し上げておる!」
「何故、皇太子妃殿下が、わざわざ指示に従い医局まで出向かねばならぬのでしょう?必要とあればお呼びしますので、大国さまがお気になさることはございません」
おお。侍女さん、格好いい。赤璃さまは満足げに頷いて、ソファに帰って行った。
俺も、もういいや。
「つまんなかったわね」
「格好良かったよ」
「後で言ってあげて」
「いいよー」
俺たちがソファに並んで呑気にお茶を待っていると、大きな音が扉の向こうから聞こえた。じいやが扉の向こうへ一度、消える。
すぐに戻ってきて、赤璃さまに耳打ちした。
何なに?
俺に聞こえてないよ。
「部屋の中へ入れなさい」
俺が、話を教えてもらおうと顔を上げると、赤璃さまの冷たい声がした。
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