【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
429 / 1,325
第五章 それは日々の話

79 崩し文字を読める人  成人

しおりを挟む
「なんでお仕事のお部屋にいるのー?」

 ご飯の後で三郎さぶろうを探していると、緋色ひいろがいつもお仕事をしている部屋で何か読んでいた。電気もつけてないから、少し暗い。

「あ、あ、すみません。勝手に入って……」

 三郎さぶろうは、すごく慌てて立ち上がる。机の上の紙や本がばさばさと落ちた。
 え?入るのはいいんじゃない?だって、三郎さぶろうのお仕事の部屋でもあるんだし。

「忙しい?」
「いいえ。あの、特にすることも無くて。仕事の助けになる本を読んでおこうかと思て」

 落ちた紙を一緒に拾いながら聞いてみる。うん、忙しくない。

「お願いあるから一緒に来てー」

 お品書きを広末ひろすえの休憩のお部屋に置いてきたから、そちらへ移動した。

三郎さぶろう、休みの時に呼び出して悪いな」
「いえ。何の予定もありませんので」
「そういや、力丸りきまるさまと村次むらつぐと一緒じゃ無かったのか?」
「あ、いえ、えーと、誘ってはもろたんですけど……」

 二人の休みが揃ったから、何か評判の店屋に食べに行くって言ってたな。暇なら一緒に行ったら良かったのに。

「今度、一緒に行こ?」
「あ、でも、私なんておったらお邪魔でしょうし……」
「なんで?」
「あの、だって、折角お友達同士で出掛けるのに」

 んん?俺は首を傾げる。

三郎さぶろうもお友達同士じゃないの?」

 俺、またよく分かってないのかなあ。友達じゃなかった?

三郎さぶろうが行きたくないなら断ったらいいと思うが、誘ってる時点であの二人もなる坊も、邪魔とかそんなことは思っていないぞ」

 広末ひろすえが、俺と三郎さぶろうを順番に見ながらそうやって言ってくれたから、俺はうんうんと頷いた。

「友達じゃなかった?」
「あ……」

 ふるふると頭を横に振る三郎さぶろうの顔色は悪い。表情があんまり変わらないから、分かりにくいんだよね。

「友達?」
「あの、成人なるひとさまが良ければ……」

 んー?俺は友達と思ってるから、後は三郎さぶろうが友達と思ってくれるかどうかだよね?
 ま、いいや。

「友達にお願いしてもいい?」
 
 お品書きを見せながら言うと、はい、と頷いてくれたから、やっぱり友達でいいよね。

「これ、読める?」
「ああ、はい」
「おお、流石。こんなのよく読めるなあ」
 
 広末ひろすえが喜んで紙とペンを渡した。

「俺たち読めなくてよ。ここに、読める字で書いてくれ」
「あ、はい」

 すぐに、さらさらと書き始めた手元を覗き込んで喜んでいると、ふ、と三郎さぶろうが顔を上げた。

「あの。殿下や常陸丸ひたちまるさまも読めるのに、何で私に?」

 え?あ、そうなの?
 え?読めるの?

「そ、そうか……。そうだよな。なんでか、気付いてなかった」
乙羽おとわさまも、たぶん読めるかと。三人で高等学校までずっと同じだと仰ってましたから」

 仲良しだなあ。

「三人で?常陸丸ひたちまるさまも?」

 広末ひろすえが驚いている。

「え、ええ。常陸丸ひたちまるさまは殿下の仕事の補佐をしてらっしゃいますんで……」

 三郎さぶろう、知らなかったっけ?

常陸丸ひたちまる、護衛だよ」
「あ、そうですよね。あれ?」

 あれ?
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...