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第五章 それは日々の話
80 おかえり、ただいま 成人
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「うーん。俺の住んでた辺りに高等学校に通うようなのはそうそう居なかったから、高等学校のことは全然分からねえなあ。武門の者は武門の専門高等学校があるんじゃなかったっけ?」
俺は、学校が分からないよ、広末。
「皇都の学校事情は分かりませんけど、私の住んでいた辺りでは、文官などの仕事を学ぶ高等学校と医者や研究者、機械の技術者の高等学校、身分の高い者が通う高等学校がありました」
「多分、そんな感じだな。」
「なら、常陸丸さまは武門の方やなく、緋色殿下の通った高等学校に行ってらしたんですね。すごいですね」
すごいのか。
突然、こんこん、と扉を叩く音がした。
「広末さん、入ってもいいですか?」
「成人、帰って来たのかー?お土産買ってきたぞ」
村次と力丸がお出かけから帰ってきた。中に俺たちがいることは、気配で分かっているんだろう。おう、おかえり、と広末が返事をした瞬間に、扉が開く。
「おかえり」
「ただいま。ってか、成人もおかえり」
「ただいま。おかえり」
「ただいま」
そうだった。俺も旅行から帰ってきたんだった。力丸が俺をぎゅって抱っこしてくれて、村次が、こら、くっつきすぎたらまた、殿下に怒られるよ、って力丸を引っ張る。ふふ。いつも通りだ。
おかえりとただいまを言うと、ほっとする。それを言う場所があって、言い合う人がいるってすごく好き。
「評判の菓子店の菓子を買ってきたから一緒に食べましょう」
休みの曜日は、おやつまで作らなくていいぞって緋色が言ってるから、広末もまだのんびりしてるし、おやつも食べられてばっちりだ。
「嬉しいね。茶を淹れるか」
「お願いします。俺、皿を持ってきます」
「俺も、お土産持ってくる」
「お、いいな」
広末と村次と俺が部屋を出ようとしてると、不意に三郎が、お品書きと紙とペンを持って立ち上がった。
座って待つ姿勢の力丸がびっくりして尋ねる。
「ん?どうした?」
「あの。邪魔にならんように、部屋で書いてきます」
「え?邪魔じゃねえよ?邪魔したの、俺らじゃん。お前の分も買ってきたから、一緒に食べようぜ。ってか、それ何?」
三郎、また邪魔って言ってる。気にせず三郎の手元を覗き込んだ力丸が、うわ、と声を上げた。
「崩し文字だ。俺、読めねえ。読めるの、すごいなあ」
「あ、いえ。その、文系の高等学校に通っていれば習うもんやとさっきも話してて」
「へええ。とりあえず、俺らは座って待ってようぜ」
力丸に引っ張られた三郎が座り直したから、安心して部屋を出た。
俺は、学校が分からないよ、広末。
「皇都の学校事情は分かりませんけど、私の住んでいた辺りでは、文官などの仕事を学ぶ高等学校と医者や研究者、機械の技術者の高等学校、身分の高い者が通う高等学校がありました」
「多分、そんな感じだな。」
「なら、常陸丸さまは武門の方やなく、緋色殿下の通った高等学校に行ってらしたんですね。すごいですね」
すごいのか。
突然、こんこん、と扉を叩く音がした。
「広末さん、入ってもいいですか?」
「成人、帰って来たのかー?お土産買ってきたぞ」
村次と力丸がお出かけから帰ってきた。中に俺たちがいることは、気配で分かっているんだろう。おう、おかえり、と広末が返事をした瞬間に、扉が開く。
「おかえり」
「ただいま。ってか、成人もおかえり」
「ただいま。おかえり」
「ただいま」
そうだった。俺も旅行から帰ってきたんだった。力丸が俺をぎゅって抱っこしてくれて、村次が、こら、くっつきすぎたらまた、殿下に怒られるよ、って力丸を引っ張る。ふふ。いつも通りだ。
おかえりとただいまを言うと、ほっとする。それを言う場所があって、言い合う人がいるってすごく好き。
「評判の菓子店の菓子を買ってきたから一緒に食べましょう」
休みの曜日は、おやつまで作らなくていいぞって緋色が言ってるから、広末もまだのんびりしてるし、おやつも食べられてばっちりだ。
「嬉しいね。茶を淹れるか」
「お願いします。俺、皿を持ってきます」
「俺も、お土産持ってくる」
「お、いいな」
広末と村次と俺が部屋を出ようとしてると、不意に三郎が、お品書きと紙とペンを持って立ち上がった。
座って待つ姿勢の力丸がびっくりして尋ねる。
「ん?どうした?」
「あの。邪魔にならんように、部屋で書いてきます」
「え?邪魔じゃねえよ?邪魔したの、俺らじゃん。お前の分も買ってきたから、一緒に食べようぜ。ってか、それ何?」
三郎、また邪魔って言ってる。気にせず三郎の手元を覗き込んだ力丸が、うわ、と声を上げた。
「崩し文字だ。俺、読めねえ。読めるの、すごいなあ」
「あ、いえ。その、文系の高等学校に通っていれば習うもんやとさっきも話してて」
「へええ。とりあえず、俺らは座って待ってようぜ」
力丸に引っ張られた三郎が座り直したから、安心して部屋を出た。
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