【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
316 / 1,325
第四章 西からの迷い人

103 うたかたの夢 1  綾女

しおりを挟む
 最初から、私は特別やった。領主の子どもと同級で、違う性別で八朔はっさく家に生まれたことを褒められて育った。

「お前たちは、次の領主のお嫁さんになるんや。」

 同級の姉妹は他にも三人いたけれど、成長するにつれて一番可愛がられていることに気付く。鏡を見たら分かる。私が一番、綺麗やからや。お嫁さんになれるのが一人やとしたら、それは私。皆もそう思ってるから、私をぴかぴかに綺麗にしてくれる。そして私は、ますます特別になっていく。
 小学校へ入学した頃には、綺麗やね、と言われることは当たり前になっていて、自分の家が偉いんやということにも気付いていた。子どもも大人も、私に見惚れるのは当たり前。お父さまも、

「お前が、次の領主の子を生んで、ゆくゆくは領主の母になるんや。お前がこの国の母になるんやで。」

 と言うようになっていた。同級の姉妹にかけるお金は少なくなって、私が欲しいと言うものは何だって買ってくれる。綺麗でいさえすれば、私は好きなように生きられる。

「なんて綺麗な子やろ。」
「ほんまやなあ。」
八朔はっさくさまのお嬢様らしいで。」
 
 入学式での大人のそんな声も、当たり前のことと聞き流し教室へ入った。国の偉い人たちの子弟が通う小学校は、躾の行き届いた子ばかりで、私が教室へ入っても静かに席についていた。
 注目が薄いことに首を傾げつつ指定の席に着こうとしていると、二人の男の子が入室してくるのが見えた。
 それまで静かに座っていた子ども達が立ち上がり、二人の元へ向かう。

壱鷹いちたかさま、弐藤にふじさま、おはようございます。」

 口々に挨拶をしている。
 ああ、あれが領主の子ども。一歳違いで学年が同じ兄弟やけど、間違えたらあかんって言われた。領主になるのは壱鷹いちたかさま。二人ともに気に入られるのは構わんが、お前は壱鷹いちたかさまを選ぶんや。
 二人はとても似通っていて、すっと涼しい切れ長の目元としゅっとした頬、細い顎、薄めの唇は、整っているけど何とのう冷たく見えて、好みでは無かった。
 でも、仕方無い。あれが私の相手なんは生まれた時から決まっとるんやから。
 自分から挨拶に行くなど、生まれてこのかたしたことはなかったけど、取り囲まれた二人が私の方へ来るのは難しそうだったので、足を向けてみた。同級の姉妹たちもその輪の中にいるので、同じようにするのは業腹だったけど、あちらとしても私と挨拶をできないのは困るだろう。
 人だかりへ向かうのも初めてでどうすれば良いか分からなかったが、私が近寄ると姉妹以外は皆、何となく避けてくれたので直ぐに二人の前に出られた。
 背の高さもあまり変わらない二人はよく似ていて、どちらが壱鷹いちたかさまかよく分からない。とりあえず、挨拶をした。

「はじめまして。八朔はっさく綾女あやめです。」
「ああ、よろしく。」
「はじめまして。よろしく。」

 二人から、淡々とした返事が返ってきて戸惑った。
 え?なんで?
 私が挨拶して微笑んだのに、何の動揺も感じられない。皆へ対するのと同じ返事。二人の顔を見ても、見惚れていたり、赤くなっていたりということはなく、他の者への態度と何も変わらなかった。

「挨拶がすんだなら、避けてくれるか?席に着きたいんや。」

 立ち竦んでいると言われた言葉に、私はどうしたらいいのか分からんくらい混乱していた。

 

 
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

処理中です...