【完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

39 成人 56

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 夜、俺はひどくうなされていたらしい。目を開けたらベッドじゃなく絨毯の上で、上掛けもなく寝転がっていた。緋色ひいろは、枕を持ってきて上掛けを掛けて隣にいたけれど、いつものように抱いてくれてはいなくて、少しだけ離れて、俺を見ていた。

「調子はどうだ?」

 少し離れたまま、緋色ひいろが言う。俺は寂しくてすり寄った。珍しく汗をかいたのか、体がべたべたする気がした。
 緋色ひいろの腕が背中に回って、ぽんぽんと叩いてくれる。何故か鼻の奥がつんとした。

「落ち着いたか。」

 何のこと?
 くっついてまた、うとうとする。

「布団に戻れるかな。戻っていいか。」

 どこでも、いいけど。
 緋色ひいろの服を必死で掴んで、これだけは離さないって思った。

 次に目を覚ましたら緋色ひいろはいなくて、ベッドに一人だった。ベッド横の机に水が置いてあったので、飲む。
 起きたのが見えていたかのように、生松いくまつが部屋に入ってきた。

「おはよう、成人なるひと。」
「おはよう……。」

 生松いくまつは俺の額に手を当てて、ふむ、と頷いた。

「辛いところはないですか?」
「ない。」
「少し体温が高いかな。汗をかいたみたいだから、下がってきてる。拭いておきましょうね。冷えるとまた、体温が上がるから。」

 そう言って、絞った温かいタオルで頭と顔と体をゆっくりと拭いてくれた。気持ち良くて、また寝そうになったら、広末ひろすえが雑炊を持って入ってきた。ミックスジュースもある!

「食い終わるまで、寝るなよー。」

 半分飲んだところでミックスジュースを取り上げられて、雑炊を口に入れられる。俺は、ぼうっとして、されるがままだ。全部、食べれた。よし、と広末ひろすえが頭を撫でてくれて、ミックスジュースを貰う。それだけは、自分で持って必死でストローを吸った。
 ははっと広末ひろすえが笑っている。

「冷たいものが旨えんだろ?体がぬくいからな。後でまた、持ってきてやるよ。」

 うん。
 寝直そうとして、気付いた。トイレ。
 ずりずりとベッドから下りようとすると、おう、どうした、と広末ひろすえが驚いている。

「トイレ。」
「え?行けるのか?ちょっと待ってろ。」

 ずり落ちる寸前に、じいやが抱き上げてくれた。
 広末ひろすえが受け止めようと手を差し出したまま固まっている。

広末ひろすえ、後はお任せあれ。」
「あ、は、そうっすか。じゃ、じゃあ、よろしくお願いします。」

 トイレ行って、じいやの腕の中で寝た。何もしてないのに、疲れてた。
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