64 / 1,325
第二章 人として生きる
46 成人 27
しおりを挟む
青葉さんは次の日もやって来た。
「母上という呼び名は、主に自分を生んでくれた女の人に使う呼び名です」
机の前に座らされて、説明が始まる。
「生んでくれた?」
「赤ちゃんが生まれるのは、知ってる?」
知ってる。昨日読んだ絵本にあったよ。
俺は喜んでそれを見せる。桃から赤ちゃんが出てくるのだ。
「母上!」
桃を指差して言うと、起き上がれるようになってベッドから覗きこんでいた力丸も青葉さんも頭を抱えた。
「赤ちゃん生まれとる……」
「いや、女の人って言ったはず……」
このお話に出てくる団子が食べたくて広末にお願いに行ったんだよねー。だって、見ただけで食べたくなって、くださいってお願いしちゃうくらい美味しいものなんでしょ? 食べたら仲間になっちゃうくらい美味しいものなんでしょ? もう、物語はどうでも良くなって、団子しか頭に残らなかった。
「団子なあ、作れるよ、作れるんだけど……」
おおー、さすが広末。絵本に出てくるような美味しいものも作れるのか。わくわくしてたら、
「なる坊、食えねえだろ……」
って言われた。え? 硬いの?
「この前、大福を喉に詰まらせたって聞いたぞ。団子はあれに似てる」
もちもちしてるやつね。あれね。あれか……。
すごく落ち込んだけど、広末は食べられるように考えてみるって約束してくれた。
その団子の話に赤ちゃんが出てきてたのを覚えていたのだ。桃が母上ね。
「桃は母上とは呼ばないです。この場合は、育ててくれたおばあさんが母上」
おばあさんが母上。
「ん? それもおかしいな。そうなるとおばあさんの説明が難しくなるのか。力丸、何か他に赤ちゃんの生まれる絵本は無いかい?」
「駄目だ、母上。こっちは竹から生まれてる」
「桃と竹とわたしが母上……」
二人はうんうん唸った後、この話はまた今度にしよう、と言った。俺は、いつでもいいです。
じゃあ、字の練習でもしようか、と青葉さんが鉛筆を出す。俺は、読めるけど書けない。指令書が読めないと困るから読み方は習うんだよね。書く必要はないので、書いたこと無かったなあ。まずは名前から、と教えてもらっていると、ノックもなく扉が開いた。
「よお、力丸。俺が留守の間に成人を危険な目に合わせたらしいな?」
「緋色、おかえり」
嬉しくて立ち上がった俺とは逆に力丸が真っ青になった。
「そういえば魔王にまだ怒られてなかった……」
「母上という呼び名は、主に自分を生んでくれた女の人に使う呼び名です」
机の前に座らされて、説明が始まる。
「生んでくれた?」
「赤ちゃんが生まれるのは、知ってる?」
知ってる。昨日読んだ絵本にあったよ。
俺は喜んでそれを見せる。桃から赤ちゃんが出てくるのだ。
「母上!」
桃を指差して言うと、起き上がれるようになってベッドから覗きこんでいた力丸も青葉さんも頭を抱えた。
「赤ちゃん生まれとる……」
「いや、女の人って言ったはず……」
このお話に出てくる団子が食べたくて広末にお願いに行ったんだよねー。だって、見ただけで食べたくなって、くださいってお願いしちゃうくらい美味しいものなんでしょ? 食べたら仲間になっちゃうくらい美味しいものなんでしょ? もう、物語はどうでも良くなって、団子しか頭に残らなかった。
「団子なあ、作れるよ、作れるんだけど……」
おおー、さすが広末。絵本に出てくるような美味しいものも作れるのか。わくわくしてたら、
「なる坊、食えねえだろ……」
って言われた。え? 硬いの?
「この前、大福を喉に詰まらせたって聞いたぞ。団子はあれに似てる」
もちもちしてるやつね。あれね。あれか……。
すごく落ち込んだけど、広末は食べられるように考えてみるって約束してくれた。
その団子の話に赤ちゃんが出てきてたのを覚えていたのだ。桃が母上ね。
「桃は母上とは呼ばないです。この場合は、育ててくれたおばあさんが母上」
おばあさんが母上。
「ん? それもおかしいな。そうなるとおばあさんの説明が難しくなるのか。力丸、何か他に赤ちゃんの生まれる絵本は無いかい?」
「駄目だ、母上。こっちは竹から生まれてる」
「桃と竹とわたしが母上……」
二人はうんうん唸った後、この話はまた今度にしよう、と言った。俺は、いつでもいいです。
じゃあ、字の練習でもしようか、と青葉さんが鉛筆を出す。俺は、読めるけど書けない。指令書が読めないと困るから読み方は習うんだよね。書く必要はないので、書いたこと無かったなあ。まずは名前から、と教えてもらっていると、ノックもなく扉が開いた。
「よお、力丸。俺が留守の間に成人を危険な目に合わせたらしいな?」
「緋色、おかえり」
嬉しくて立ち上がった俺とは逆に力丸が真っ青になった。
「そういえば魔王にまだ怒られてなかった……」
2,177
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる