【完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

47 成人 28

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「まおうって何?」

 緋色ひいろに抱っこしてもらいながら聞く。ただいまって言いながら、ちゅっと頬にキスしてくれた。

緋色ひいろ殿下、この度は愚息がご迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません」

 青葉さんが膝をつこうとするのを緋色が止める。

「よい、青葉。構わん。成人なるひとの面倒を見てくれていたのだろう。有難い」

 優しい顔で言ってから、ベッドの方を向いた。
 ひぃ、と力丸の喉が鳴る。怪我で座っているのも精一杯だった力丸は、ベッドの上で後退りしようとして倒れた。

「いっ。いた……」

 背中をついてしまい、痛みのあまり息を詰めている。

「力丸」

 心配で緋色ひいろから降りようとするけど、離してくれない。緋色は悪い顔で笑って、俺を抱いたままベッドに近付いた。

「力丸。魔王って何だと成人なるひとが聞いてるぞ。俺も是非、知りたいもんだ」

 何とかうつ伏せになった力丸が涙目でこちらを見上げる。

「な、何でしょうね。成人なるひとの聞き間違いじゃないかな。俺は、緋色ひいろ殿下に心からの謝罪を届けようとしたのですが、い、今、起き上がれなくなりまして。その、えと、色々と申し訳ありませんでした」

 そこまで言ってから、ふー、ふー、と荒い息を吐く。

生松いくまつ、呼んでくる?」
「まあ、待て。大丈夫だ、成人なるひと。優しいな」

 緋色ひいろは俺を降ろして頭を撫でた。
 ベッド脇で屈んで、力丸に近付く。力丸のおでこの前で指を弾いた。ばちん、と大きな音がして、

「いっ、たっ……、痛いぃ」

 力丸のおでこに赤い跡が付いた。あーあ、怪我が増えた。力丸はひーひー泣いている。
 俺は、おでこをそっと撫でた。

成人なるひと、力丸といるのは楽しいか」

 うん。
 
りき、今回はこれで手打ちにしてやる」
「や、優しい。緋色ひいろ殿下が、優しい。逆に恐い……」
「もう一発いっとくか」

 だめー。
 俺は慌てて力丸のおでこを手で隠した。

「それはそれで妬けるね」

 緋色ひいろが俺の手を取ってちゅっとしながら、言った。あれ? 何かこれ、好きかも? 緋色にぺたっとくっつく。 

「やける?」
「気にするな」

 機嫌の良くなった緋色が、また俺を抱き上げる。ふふーん。
 そういえば。

「まおうって何?」
成人なるひと、しーっ」

 力丸が半泣きで俺を見上げた。
 

 

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