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第二章 人として生きる
27 緋色 17
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「緋色さま。おかえりなさい。成人の顔色が悪いですね」
「生松。手間をかけたようだな。成人は足を撃たれている。麻酔無しで手術して帰って来た」
「なっ……」
「後を頼む。寝かせるのはいつもの部屋でよいか」
「はい」
和室に灯りが点いているので覗くと乙羽が料理を並べていた。
「今、帰った」
「……緋色さま。おかえりなさいませ。なるは?」
「足に怪我をした。また世話を頼む」
表の騒ぎが聞こえないように生松や吉野が奥の部屋で仕事をさせていたのだろう。本人も、現実逃避していたのかもしれない。二条家の来訪には気付いていないようだ。成人の顔を覗きこんで、ぽろぽろと涙が頬にこぼれた。
「良かった、なる。帰って来た」
ひくっと喉を鳴らして、泣き笑いになる。
「夕食までに帰るって言ったろ。常陸丸も帰ってるぞ」
廊下に出ると、ちょうど常陸丸が歩いてきた。泣いている乙羽を抱き上げて、部屋へと戻っていく。
成人をいつものベッドに寝かせると生松が診察をしてから、うつ伏せにして点滴を繋いだ。
「成人に守られました。……生きようとしてくれて、良かった。あまり、生きることに執着が無さそうだったので心配で。……いや、違いますね。満足していた、かな。もう、いつ死んでもいいような……。幸せそうに過ごしていたから。何かを守るためなら、自分の命をすぐに諦めてしまうのでは、と」
生松の声が震えて、目元に涙が滲んだ。
「幸せは、このベッドの上だけでは無いと知ってほしい。……この背中の打ち身だって、怒りましたけど、嬉しかったのですよ。自分のやりたいことをやったのだな、と思って」
色々と生松に言いたい言葉が浮かんでは消えて、俺はただ、わしわしと生松の頭を撫でた。びっくりして目を見開いた後、涙を数滴こぼしながら笑う。
「ずっとうつ伏せなのも呼吸が辛いと思いますので、時間があれば一緒に寝て、横向きに抱いてあげてください。点滴は栄養ですから、緋色さまが寝られる頃には外します」
「ああ」
成人は、簡単に死んでは駄目だ、生きることを諦めては駄目だという誓いを覚えていてくれたのだろうか。そうなら嬉しいな、と思いながら、少し体温の高い額にキスを一つ落とした。
「生松。手間をかけたようだな。成人は足を撃たれている。麻酔無しで手術して帰って来た」
「なっ……」
「後を頼む。寝かせるのはいつもの部屋でよいか」
「はい」
和室に灯りが点いているので覗くと乙羽が料理を並べていた。
「今、帰った」
「……緋色さま。おかえりなさいませ。なるは?」
「足に怪我をした。また世話を頼む」
表の騒ぎが聞こえないように生松や吉野が奥の部屋で仕事をさせていたのだろう。本人も、現実逃避していたのかもしれない。二条家の来訪には気付いていないようだ。成人の顔を覗きこんで、ぽろぽろと涙が頬にこぼれた。
「良かった、なる。帰って来た」
ひくっと喉を鳴らして、泣き笑いになる。
「夕食までに帰るって言ったろ。常陸丸も帰ってるぞ」
廊下に出ると、ちょうど常陸丸が歩いてきた。泣いている乙羽を抱き上げて、部屋へと戻っていく。
成人をいつものベッドに寝かせると生松が診察をしてから、うつ伏せにして点滴を繋いだ。
「成人に守られました。……生きようとしてくれて、良かった。あまり、生きることに執着が無さそうだったので心配で。……いや、違いますね。満足していた、かな。もう、いつ死んでもいいような……。幸せそうに過ごしていたから。何かを守るためなら、自分の命をすぐに諦めてしまうのでは、と」
生松の声が震えて、目元に涙が滲んだ。
「幸せは、このベッドの上だけでは無いと知ってほしい。……この背中の打ち身だって、怒りましたけど、嬉しかったのですよ。自分のやりたいことをやったのだな、と思って」
色々と生松に言いたい言葉が浮かんでは消えて、俺はただ、わしわしと生松の頭を撫でた。びっくりして目を見開いた後、涙を数滴こぼしながら笑う。
「ずっとうつ伏せなのも呼吸が辛いと思いますので、時間があれば一緒に寝て、横向きに抱いてあげてください。点滴は栄養ですから、緋色さまが寝られる頃には外します」
「ああ」
成人は、簡単に死んでは駄目だ、生きることを諦めては駄目だという誓いを覚えていてくれたのだろうか。そうなら嬉しいな、と思いながら、少し体温の高い額にキスを一つ落とした。
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