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43 暖かく優しい
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二十代に見える背の高い細身の男が、痩せた男の子を抱き上げて、すたすたと別室に消えた。
え?と戸惑う間に、いなくなった。
流石のリンドウも、呆然としていた。その部屋に残されたのは、五十代と見える女とリンドウ、ソハヤのみ。
「な、なんだ?どういうことだ?」
リンドウには、訳が分からなかった。塔には、イズモ様と花嫁しか住めぬのでは無かったのか?イズモ様しかおらぬだろうと訪ねた先に、三人もの人間がいて、普通に夕食を作っていた。
そして、迷惑そうに対応されている。
これではまるで、他家に勝手に入り込んだようではないか?
そんな馬鹿な……。
「人がこちらに向かっていたが、大丈夫か?」
入り口から、二十代の男が一人駆け込んできた。荒い息のまま塔の中を見渡して、入り口付近にいたソハヤに目を止める。ソハヤは、眉をしかめてそこに立っていた。
「ヒカゲ、とりあえずその騎士を出しておくれ。」
料理をしていた女の言葉に、ヒカゲと呼ばれた男は、ソハヤの体に腕を回して引き摺り、そのまま塔から出る。あっという間だった。
「やめろ。離せ!」
ソハヤの声が聞こえる。
「死ぬ気か。あの中にいると、寿命が削られるんだぞ。何分いた?体調に変化はないか?」
いっそ気遣うような言葉に戸惑う。
「寿命が削られる?」
「リンドウ様、と申されましたね。私はカナメヅカ・ヌイです。」
料理をしていた女、ヌイが丁寧に頭を下げる。
「こちらへ来られる前に、せめて、塔の管理人であるカナメヅカに、ご連絡頂ければよろしかったかと思われます。お話は、カナメヅカの家でお聞き致しましょう。今は、お引き取りください。」
「な、何を言っている?」
「イズモ様と伴侶様の夕食を作っております。このままでは、時間通りにお作りすることができません。とりあえずお引き取り頂き、また明日、カナメヅカの家へお訪ね頂ければと思います。」
「私こそが伴侶だ。イズモ様を呼んでくれ。」
「今、伴侶がいらっしゃり、イズモ様はその方と睦まじくお暮らしです。」
「そんな、馬鹿な……。」
その時、ふわりと気持ちの良い神力が立ち昇るのを感じた。ふわふわと暖かい優しい力。
「イズモ様!」
リンドウは、神力の出所へと走る。間違いない。この扉の向こうにいらっしゃる。
「リンドウ様。お止めください!」
ヌイの制止も聞かずに、神力を感じた部屋の扉を開けた。
そこには。
先ほど、その部屋へと入った二人が、ベッドの上で抱き合ってキスをする姿があった。
幸せそうに、気持ち良さそうにくっついている二人から、ふわふわと暖かい神力が溢れて塔に満ちていく。
なんだ?
これは、一体、どういう……。
立ち尽くしていると、体をぐいっと後ろに引かれて扉が閉められた。
「よそのお宅の寝室を、ノックもなく開けるとは……。」
ヌイが、わなわなと震えている。
「姫君だか何だか知らないけれど、許せるものではありません!出ていってください!」
ぐいぐいと背中を押されるままに、塔から出る。外には、疲れたように座り込むソハヤと、扉前で、仁王立ちとなったヒカゲがいた。
え?と戸惑う間に、いなくなった。
流石のリンドウも、呆然としていた。その部屋に残されたのは、五十代と見える女とリンドウ、ソハヤのみ。
「な、なんだ?どういうことだ?」
リンドウには、訳が分からなかった。塔には、イズモ様と花嫁しか住めぬのでは無かったのか?イズモ様しかおらぬだろうと訪ねた先に、三人もの人間がいて、普通に夕食を作っていた。
そして、迷惑そうに対応されている。
これではまるで、他家に勝手に入り込んだようではないか?
そんな馬鹿な……。
「人がこちらに向かっていたが、大丈夫か?」
入り口から、二十代の男が一人駆け込んできた。荒い息のまま塔の中を見渡して、入り口付近にいたソハヤに目を止める。ソハヤは、眉をしかめてそこに立っていた。
「ヒカゲ、とりあえずその騎士を出しておくれ。」
料理をしていた女の言葉に、ヒカゲと呼ばれた男は、ソハヤの体に腕を回して引き摺り、そのまま塔から出る。あっという間だった。
「やめろ。離せ!」
ソハヤの声が聞こえる。
「死ぬ気か。あの中にいると、寿命が削られるんだぞ。何分いた?体調に変化はないか?」
いっそ気遣うような言葉に戸惑う。
「寿命が削られる?」
「リンドウ様、と申されましたね。私はカナメヅカ・ヌイです。」
料理をしていた女、ヌイが丁寧に頭を下げる。
「こちらへ来られる前に、せめて、塔の管理人であるカナメヅカに、ご連絡頂ければよろしかったかと思われます。お話は、カナメヅカの家でお聞き致しましょう。今は、お引き取りください。」
「な、何を言っている?」
「イズモ様と伴侶様の夕食を作っております。このままでは、時間通りにお作りすることができません。とりあえずお引き取り頂き、また明日、カナメヅカの家へお訪ね頂ければと思います。」
「私こそが伴侶だ。イズモ様を呼んでくれ。」
「今、伴侶がいらっしゃり、イズモ様はその方と睦まじくお暮らしです。」
「そんな、馬鹿な……。」
その時、ふわりと気持ちの良い神力が立ち昇るのを感じた。ふわふわと暖かい優しい力。
「イズモ様!」
リンドウは、神力の出所へと走る。間違いない。この扉の向こうにいらっしゃる。
「リンドウ様。お止めください!」
ヌイの制止も聞かずに、神力を感じた部屋の扉を開けた。
そこには。
先ほど、その部屋へと入った二人が、ベッドの上で抱き合ってキスをする姿があった。
幸せそうに、気持ち良さそうにくっついている二人から、ふわふわと暖かい神力が溢れて塔に満ちていく。
なんだ?
これは、一体、どういう……。
立ち尽くしていると、体をぐいっと後ろに引かれて扉が閉められた。
「よそのお宅の寝室を、ノックもなく開けるとは……。」
ヌイが、わなわなと震えている。
「姫君だか何だか知らないけれど、許せるものではありません!出ていってください!」
ぐいぐいと背中を押されるままに、塔から出る。外には、疲れたように座り込むソハヤと、扉前で、仁王立ちとなったヒカゲがいた。
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