つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~

ハリエンジュ

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第一話『お友達から始めましょう』

その2 偶然目にしたそのノートには

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★つぐむく。~中二病と不思議ちゃん~ 第一話『お友達から始めましょう』その2 偶然目にしたそのノートには

 南雲なぐもむく
 俺の隣の席の女の子は、そんな名前だった。
 桜色の綺麗な長い髪を二つ結びのおさげに緩く結って、白のカチューシャを付けたひどく小柄な女の子。
 髪はどこか寝癖が多く、ちょっとぼんやりした雰囲気を醸し出していた。
 実際、アンダーリムの眼鏡越しの目はいつも眠たげだ。
 身長が小さいからか、カーディガンがだぼだぼで。
俺はそんな彼女を、何となく、ふわふわと、漠然と、前々から可愛い子だな、とは思っていた。
 だけど、それだけだ。
 俺と南雲に、隣の席であること以外に接点なんてない。
 会話なんて交わしたことはないし、俺は中二病全開で孤立していたし。
 南雲も南雲で、交友関係は狭そうだったけれど、多分俺程じゃない。
 俺達は、ただのクラスメイトとして、そして俺は孤独な存在として高校生活を終えるものだとばかり思っていた。
 そんなある日のことだった。
 放課後、掃除当番でたまたま帰るのが遅くなって。
 ゴミ捨てに行った後、鞄を取りに教室に戻った時。
 南雲の机に、一冊のノートが置かれていたことに気付いた。
 桜色の、南雲の髪と同じ色の可愛らしいノート。
 忘れ物かな。
 勝手に見るのもまずいだろうし、忘れ物に気付いたら自分で取りに来るだろうし。
 だから、自分の鞄を背負ってノートは無視してとっとと帰ろうとした。
 窓辺からふわりと風が吹いたのは、丁度その時だった。
 風でノートが捲れる。
 吸い寄せられるように、俺の視線がノートの紙面に向く。
 そして俺はフリーズした。
 だって、そのノートには、俄かには信じ難い文字列が並んでいたのだから。

『神室くんとしたいこと』

 ノートの最初の1ページは、そんな言葉から始まっていた。
 俺の、名前だ。
 そこから続く箇条書きの文字に、俺は呼吸すら忘れる。

『下の名前で呼び合いたい』

『神室くんと毎日お喋りがしたい』

『一緒にお弁当を食べたい』

『神室くんの好きな物、嫌いな物を知りたい』

『神室くんとどこかに遊びに行きたい』

 ……何で?
 何で、南雲がこんなことを?
 完全に俺が混乱状態に陥っていると、ガラリと教室の戸が開いた。
 心臓が跳ね上がり、恐る恐る振り返るとそこには南雲が、南雲椋が立っていて。
 いつもの眠たげな目が、俺とノートを交互に移した瞬間軽く見開かれる。
 やがて、南雲は覚悟を決めたような顔をして。
 俺に、一歩一歩近づいて来た。

「前から、言おう言おうと思っていたのです」

 南雲が、俺に語り掛ける。
 俺の心臓の鼓動があまりにもばくばくとうるさすぎて、集中していないと聞き取れそうになかった。
 でも、次の言葉ははっきりと俺の心に響いた。

「椋は、神室くんとお友達になりたいのです」

 …………え?
 信じられなかったけど、理由も何もわからなかったけど。
 俺の狭い世界が変わる予感が、確かにしたんだ。
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