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結局、離れることなんてできない
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しおりを挟む「…なんで、鍵を開けたんだよ」
「……」
悲痛な声と、その表情に絶句する。
濡れて肌に吸い付く髪なんか気にもせずに、俺をじっと見つめる。
くしゃりと泣きそうにゆがんだ彼の顔に…何も言葉を返せない。
「逃げたかった?俺が嫌で、俺から、――っ」
「……ごめん」
自分でも何を謝っているのかわからなかった。
鍵を開けたことを謝っているのか。
ただ、逃げたいと思う気持ちがある罪悪感からなのか。
わからない。
でも、ただ、謝りたくて。
…どうしようもなく、申し訳ない気持ちがあふれてきて。
言葉を遮るように、ぎゅっと抱きしめる。
驚いたように強張る蒼を抱き締めていると、その身体が震えているのが伝わってくる。
濡れた背中に回した腕に少し力を入れると、一瞬びくりと震えた蒼に、もう一度小さく謝った。
ここまで弱っている姿を見たのは初めてで。
どうしようもないほど、苦しいほどの庇護欲が湧き上がってくる。
「…まふゆ」
肩に顔を埋めてくる蒼に、「…うん」と小さく返す。
「――…俺から、離れていこうとしないで」
「……うん」
「俺以外を、視界に入れないで」
「…うん」
彼の髪を撫でながら、服越しに伝わる身体の震えを感じて、…静かに目を閉じた。
「…わかったから、蒼、…だから、」
だから、そんな顔しないで。
―――――――
(…絶対に、なんて約束はできない)
…でも。
それでも、蒼を悲しませたくはないから。
ただ、その小さな子どもみたいに震える身体を抱きしめながら頷く。
どんなことをされても、蒼を本気で嫌うことなんてできないのかもしれないと、ふと思った。
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