手足を鎖で縛られる

和泉奏

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”シアワセ”の定義

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下着をおろして、相変わらず顔を背けたくなるぐらい立派な蒼の性器に手で触れる。
ローションを亀頭の先端に垂らして、いつも彼が俺にするような感じで、震える手を動かしながら上下に擦った。


「…っ、(ああ、もう…)」


若干濡れてはきても、イくというには程遠い気がする。

ゴリゴリとした硬い柱の芯。その周りの皮を弱々しく握って扱く。圧倒的な存在感のある形の良い逞しい性器に、同じ男として自分のと比較して落ち込む。

…と同時に思い出して無性に肚の奥が疼いた。

……こんなに長くて大きいのが、いつも自分のナカに押し込まれて、グチャグチャして、…考えちゃだめだとわかっていても身体がその感覚を焼き付けていて離してくれない。

嫌なのに、それでもこうして思い出して勝手に熱くなる自分の身体を心底嫌悪する。

……それに、どれだけやっても俺が下手なせいか気持ちよくなさそうで。表情を全く変えない蒼になんだか気分が沈んできた。


「本当に下手」


ふ、と頬を緩めてそう笑う蒼に反発するように頑張って、両手で思いつく限りのやり方で扱いてみても、何も変わらない。
そもそも蒼にここに閉じ込められる前の生活で、自慰行為さえほとんどしたことなかった。

…それもあって、どうすればいいのかわからなくて俯く。


「……ごめん」


…多分、本当に俺のやり方だと気持ちよくないんだと思う。
自分の意思じゃないとはいえ、言うことを聞くって言ったのは俺だから。
別にそんなに落ち込まなくてもいいのかもしれないけど、うまくできないことに多少の罪悪感が湧き上がってくる。


「ごめん、やっぱり、俺、…っ」


呆れられたかな。
でも、それでもいいやなんて考えたその時、

――浴衣の襟元を引っ張られ、唇を奪われた。

歯列をなぞられ、蒼の胸に手をついて離れようとすれば頭の後ろに手を回されて逃げれないように固定された。
舌の裏側まで舐められて、唾液が口端から溢れる。


「んん…っ、ふ…っ…はぁ、んぅっ…」


むさぼるように粘膜を嬲られ、一体こんなのどこで知ったんだと思うほど濃厚で大人なキスをされる。
手足の力が抜け、腰が砕けるような激しい口づけの後ゆっくりと唇が離れると、蒼は俺をぎゅうと抱きしめて笑った。


「まぁ、もしまーくんが誰かにこんなことしようとしてたら…その相手はきっと今頃死んでただろうけど」


そう低く呟いて「誰にも、そういうことやったことないよな?」と何を考えているのかわからないような顔でそう聞いてくる蒼に、一瞬思考が停止する。


(……”死んでた”って、)


本気で言ってるのか、冗談で言ってるのか。
そんなこと、今更考えなくてもわかる。

…きっと、蒼なら躊躇いなく本当に殺すんだろう。

青ざめてこくこくと勢いよく頷いた。

よかった、と嬉しそうに微笑むその綺麗な顔に若干顔が引きつるのを感じる。


「舌、出して」


腰を抱き寄せられ、吐息が触れるほど近い距離。

拒否権のない命令のような響きをもつ囁きに、震えながらも素直に従ってしまう。

恐る恐る口を開いてそれを出せば、俺と同じように舌を出し、綺麗な顔に息を呑むほどの色気を滲ませた蒼に先端を舐められ、舌同士を擦り合わされる。

「…っ、へ、ぁ、」慣れない感触にとっさに舌を引っ込めると、有無を言わさずに重ねられる唇。浴衣をかき分けていきなり腰に触れたその冷たい手にびくりと身体が震えた。


(な、なに…っ)


唇を離そうとすると、それを許さないというように強く押し付けられて音を立てて舌をしゃぶられる。
また、いつもみたいに全部の思考を奪い、脳を蕩けさせるようなやり方で。


「ん…ッ、ぅ…っ、ふ…っ」


…と、「もっと前」と指示され、意味を考える思考力もないまま移動する。そうすれば下着をおろされ、冷たい手の感触が下腹部に触れた。「…っ、ぅ、ぁ…っ」そこをなぞり、肌を伝っておりていく。

ゆっくりと尻の割れ目を探り当てられ、入口を軽くなぞったあとに濡れた指を差し込まれる。
驚いて身を引こうとすると、尻をがっしり掴まれて元の位置に戻された。

湿った柔肉を掻き分けてするすると入ってくる指の感触に小さく声を上げながら、性器の付け根の裏をこりこりされ、奥がむずむずしてくる。次第に敏感になったその場所を、もっと指の腹で擦り続けられれば強すぎる刺激に泣きそうになって腰を動かした。

飽きないのかと思うほど、もうばれきってる弱いとこをぐりぐり捏ねられまくって涙声で唸った。クチュクチュ抜き差しされたその指が曲がってさっきよりも強く膨らんだ内壁に押し付けられ、細かく振動して蕩けてうねる襞を擦り上げてくる。


「ぁ、ぅ、ゔ、ん゛、ぐ…っ」


目の前が一瞬チカチカと点滅して、真っ白になる。
それでも、蒼の上に倒れこまないようにと床についた手で身体を支えると、そんな俺を見て蒼が笑った。

容赦なく掻き混ぜようとする何本もの指に、声が抑えられない。



「っぅゔ、ん、や゛、うあ、ぁ…ッ」

「その顔、ゾクゾクする」

「や、…っめ、…ゔ、ぅうっ、ん、ぐっ」


そんな俺を見て笑う蒼に悔しくて情けなくて、もうどうにでもなれと心の中で叫んでせめて見ないようにと目をつぶった。

グチャグチャグチャ……!指の動きが激しくなると振動に合わせて何度も手のひらの下あたりで会陰部を圧迫され、奥の前立腺が予想外のところから二重にごりゅごりゅされる。

中からも外からも敏感な前立腺を刺激されて腰全体が快感で更に悲鳴を上げ続ける。汁が股間に滲み、あっという間にとろとろになった。


「ゔ、あぁ…っ、…っ」


呆気なく果て、白い膜で覆われた視界でガクガクと余韻に浸る。
汗にぐっしょり濡れながら絶え絶えになった息を整えていると、絶頂後の中の動きを堪能するようにまだ小さく動かされていた指が、ぐちょ…と抜かれる。「まーくんには次頑張ってもらうから、今日は入れるだけでいいよ」なんて言われて、熱くなる瞼の裏にぐ、と唇を噛んだ。

次があるのかと絶望しつつ、さっきまであんなに頑張っても変わらなかったのに何故か大きくなっている蒼のソレを見る。


自分から入れるのは初めてだけど…もう何回も蒼にヤられてるんだし。
気にすることない、と逃げたくなる気持ちを何度も抑える。

…気にすることない。気にすることなんかないんだ。


「……」


それでもやっぱり自分から進んでその行為をするということができなくて、身体が動かない。
俯いて震える手をもう片方の手でおさえる。


「…(なんで、)」


なんでこんなことになったんだろう。

いつも思う。

自分たちはどうしてこんな関係になってしまったんだろうって。
蒼の欲望の対象に男の俺なんかがなれるはずもなくて。
俺だって、蒼のことを性的な対象として見れるはずもなくて。

震える手でぎゅっと拳を握る。

眼球が熱くなってきて、思わず目を瞑った。


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