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4【就任披露パーティ】
4-2パーティ(1)
しおりを挟む『皆さん遅くまでお疲れ様でした。明日の本番もよろしくお願いします』
都内某所の観光ホテルが持つパーティ会場に集まる御門の社員たち。
一段上がった壇上ではマイクを持った総務の男性社員が汗を垂らしながら熱心に指揮をとっていた。
前日設営から会場を借りて行われる就任披露パーティは、いままで御門ホールディングスが行ってきた数ある行事の中でも群を抜いて大規模なものだった。
それは、会長である楓珠さんの意向。
これからの御門を背負っていく楓真くんの存在を大々的にアピールする目的と、親としての祝福。
それに社員一丸となって賛同し、こうして各部署から準備で派遣された社員たち、雇われた業者、数多くの人の協力で明日に向け準備してきた。
もちろん僕たち秘書課も総動員で準備に携わってきた。
主に招待客の確認や関係性のリストアップから挨拶原稿の校閲など、楓真社長、楓珠会長のフォローに回れるようあらゆる場合を想定しながら準備し、当日もピッタリ後ろにつきサポートをする予定だ。
その準備も今夜いよいよ大詰め。
主役である社長――楓真くんの一番近くでその日を心から待ち望んできた。
各々の役割を終え、装飾が完了したパーティ会場に集まってきた社員に壇上に立つ男性社員から頃合いを見て解散が告げられると、残業からの解放に晴れ晴れとした表情で散っていく社員たち。
そんな光景を会場の端から眺めながら、時たまかけられる「お疲れ様です」の声に返事を返しつつ自分はその場に留まった。
もう何度それを見上げたことか。
壇上の上に掲げられた【御門楓真社長就任披露パーティ】そう書かれた横長のパネルを感慨深く眺めていると背後から不意に自分を呼ぶ優しい声。
「つかささん」
呼び掛けに反応し振り返れば件の主役がその声に似つかわしい優しい表情で僕を見つめていた。
「楓真くん―――お疲れ様」
「お疲れ様です」
気付けば周りに殆ど人が残っていないことをいいことに業務中とはいえ口調を崩してそう言えば、ふわりと微笑んだ楓真くんは隣までやってくる。
そのまま二人並んで壇上を見上げた。
「いよいよ明日だね。最終チェックは完璧?」
「絶賛必死に頭に叩き込んでます」
「ふふ、無理せず今日は早目に寝ようね。さすがに緊張する?」
「……さすがに、ちょっと」
普段涼しい顔をしてそつなくこなす楓真くんの素直な吐き出しに、おや珍しい、と眉をあげる。
「ここでヘマしたら今後に響くと思うと……舐められないようにするのに必死です」
「そっか……でも大丈夫だよ、僕たち秘書チームが全力でサポートするから楓真くんはのびのびと人脈を広げてくれればそれでいい」
「優秀な秘書がいて俺は心強いなぁ」
こてんと肩にかかる優しい重みに、ふふ、と笑いながらもう一度壇上を見上げる。
不思議といつまでも見ていられるが、それではキリがない。「帰りましょうか」と静かに呟かれる声にこくりと頷き、明日また来る会場を後にした。
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