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4【就任披露パーティ】

4-3パーティ(2)

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 会場を彩るきらびやかな装飾
 
 和洋中並ぶ色とりどりの多国籍料理
 
 それに見合う程に着飾った招待客
 
 どこもかしこも華やかなこの空間は
 
 まるで非日常そのもの
 
 
 
 その中心で一番輝いているのが
 
 紛れもなく
 
 自慢の番で、伴侶で、最愛の人―――
 
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 とうとうやってきたパーティ当日。
 
 会場の至る所でインカムを付けた御門の社員たちはホストとして、大事な取引先である招待客を迎え入れるのに奔走していた。
 僕たち秘書課も二手に分かれ、待機室で待つ社長会長に付き従いつつ随時流れてくる最新情報をお二人に伝えて情報共有しながら、挨拶文や取引先名簿など最終確認に追われていた。
 
 
 そして―――
 
 式の開始時刻である18時を目前に、招待した全てのゲストが無事問題なく到着したと報告を受けたのは少し前のこと。
 
 
 現在、司会者の進行のもとつつがなく就任式は行われていた。
 
 
 優雅なクラシックが耳障りでない音量でBGMとしてかかる中、乾杯に備えたシャンパングラス片手に全員が壇上に注目を寄せている。
 
 
 会長の挨拶。
 
 会長から社長へのバトンタッチ。
 
 そして、社長の挨拶。
 
 
 壇上で凛々しく、頼もしく、堂々とスピーチをこなす彼に誰もが熱い眼差しを送っている。
 
 
 ―――もちろん、僕もその一人。
 
 
 一段下がったステージの端からしっかりその姿を見守っていた。
 
 
 楓真くんと出会って、早5年―――あるいは、まだ5年とも言える。
 いまでもあの、エレベーターホールでの衝撃的な初対面公開プロポーズを昨日の事のように思い出せる。
 
 スポットライトを浴び話す姿を見つめながら、瞬間瞬間、全ての思い出が走馬灯のように頭をよぎり自然と熱くなる目頭をそっと拭い、すっと短く深呼吸をすると、その立派な姿を一瞬たりとも見逃さない気持ちで再びじっと目に焼き付けた。
 
 
 
 
『――以上で、私からの挨拶とかえさせていただきます』
 
 
 
 瞬間、ドッと割れんばかりの拍手が沸いた。
 
 一歩下がり後ろに控える会長から労いの言葉を受ける様子に会場内はさらに拍手が大きくなる。
 止まない拍手に壇上の上から並んで応え四方に笑みを送る御門親子だが一方でさり気なく司会者に視線を寄越すことも忘れない。
 残すところは乾杯で締めくくるのみ。
 慌ててマイクを取る司会者の声にやっとおさまった拍手だが温まった会場内の温度そのままに次の乾杯へと繋ぐため、紹介された取締役員は手短にまとめた挨拶とともに「乾杯っ」と声を発すると再び会場内が大きく沸きだった。


 全ての大役を果たし、袖に捌けて来る彼に「お疲れ様、素敵だったよ」この言葉を早くかけたい気持ちでその時を今か今かと待ちながら拍手を送っていると、不意に後ろからとんとんと肩を叩かれた。
 見ずとも感じるいた様子に何か緊急の伝達事項か、と嫌な予感を覚えながら振り返ればそこには場違いにも不安そうな表情を浮かべる湖西くんが落ち着かない様子で佇んでいた。
 
 
「橘先輩……すみません、今、いいですか」
「ん、大丈夫だよ。どうかした?」
「実は……美樹さんが―――」
 
「え……」
 
 
 
 湖西くんから聞かされた報告に耳を疑うと同時にすぐさまその場を離れた僕は結局、楓真くんへ「お疲れ様」と言えることはなかった。
 
 
 
 
 
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