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5【SS集】
番との初めての年越し
しおりを挟むもうすぐ年が明ける。
楓真くんと番になって初めての年越し。
今年は本当に色々な事があった怒涛の一年。
嬉しかったことも、辛かったことも、すべて隣に楓真くんが居てくれたことで乗り越えられた。
楓真くんと出会えて、番になれて―――…
今も隣で並んでコタツに入りながらぬくぬくとみかんを剥きながら年末番組を眺める楓真くんを眺める。
楓珠さんの所へは年始にお邪魔する予定で、年末は楓真くんと二人ですき焼きを囲みながら静かに過ごした。
こんなにも穏やかな年越しは初めてかもしれない。
「つかささんは初詣とか行きます?」
「んー…僕はあまりそういうの行ったことないかも」
不意に問われ、思い返してみたが残念ながらちゃんと行った記憶は無い。
施設に居た頃は当然ながら、楓珠さんにお世話になっていた頃も人混みは避け三賀日は家から出ずゆっくり過ごしていたし、一人暮らしを始めたら余計そんな機会は遠のいた。
「じゃあ年明けたら一緒に行きましょうね」
「いいね、すぐ行く?」
「んー…なんか、一説にも寄るみたいですけど初詣って、日が昇ってからが神様のパワーが満ちてすっごいらしく、年明けてすぐはまだ厳かに過ごしていなさいって言われてるらしいんですよ、知ってました?」
「へぇ…日付変わってすぐ行くイメージだったかも」
「ね。海外の友達が日本のそういう文化にドハマりしてて留学中すっごい聞かされてて、それをふと思い出しました。俗説は色々あると思うんですけど、つかささんの健康と幸せを全力で神頼みしようと思ってるのでそういうあやかり大事です」
「ねぇ…自分のことをお願いしな?」
ここに来てまで僕の事を優先しようとする楓真くんに苦笑しながら無意識で手を伸ばし頭を撫でてしまう。楓真くんも嬉しそうにされるがまま、こてんと頭を肩に寄せてくる。
あぁ…本当に、穏やかで、幸せだ。
「……楓真くん」
「はい?」
静かに名前を呼べば、肩に頭を預けたまま上目遣いで見上げてくるカッコよくてかわいい僕の番。
不意に見せてくる年下具合に、年上心を燻られて仕方ない。お兄さんしたくなってしまう。
「今年は本当に、出会ってくれて、僕を見つけてくれて、ありがとう」
「えぇー!なに急に」
「ふふ、言いたくなっただけ。来年もよろしくね」
「来年と言わず、再来年もその先も、ずっとずっと、つかささんと一緒にいたいです」
「うん……僕も」
ふふ、と笑いながらどちらともなく優しくちゅ、と合わさる唇。一瞬触れた唇はすぐに離れ、至近距離で見つめ合う。
じっと向けられる熱い楓真くんの視線に、日が昇るまでは厳かに、なんでしょ?と含み笑いで語りかけながらも、勝手に動く自分の体はふかふかのカーペットに背中を預け、覆い被さる楓真くんの首に嬉々として腕を回していた―――
来年も、
その先も、
何度もこうして楓真くんと無事年を越す回数を積み重ね、過ごしていけるよう、
どうか神様、温かく見守り下さい―――
《番との初めての年越し》-END-
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