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5【SS集】
バレンタイン準備編side.つかさ
しおりを挟むside.つかさ
「せっんっぱぁい!」
「――!びっくりした…どうしたの花野井くん」
印刷機の前で出力される資料を整えていると突然、いつの間に忍び寄ってきたのか元気な後輩、花野井くんに声をかけられた。
あからさまに肩をビクッと震わせてしまったことを少し恥ずかしく思いながら顔だけで振り返るとにまにました表情の彼は「うふふふ…」と不気味に笑いながらさらに近づき、しまいには背後から腰に腕を巻き付け抱き着いてくる。
普段からパーソナルスペースが狭くスキンシップの多い彼特有の行動に長年の付き合いから慣れきってしまい、特に驚くことなく「なぁに?」と笑いながら作業を続ける。
僕より背の低い花野井くんは丁度肩に顎があたるくらいで、かわいいほっぺたをぶにっと潰しながら見上げてくる。それはどうやら内緒話をするためのようで大人しく耳を傾ける。
「先輩、もうすぐバレンタインですよ!楓真くんに何か準備してるんですかぁ?」
「あ…あー…そっか…バレンタイン…」
どうりで最近街でよくチョコの特設コーナーを見かけると思った。
正直、生まれてこの方一度もバレンタインというイベントを意識したことがなかった。恋人…ましてや好きな人などできたことの無い僕にとって無縁な事だったから。
だけど、今年からは違う。
楓真くんという、恋人で番で唯一無二の存在ができた。
何かあげたら楓真くんは喜んでくれるかな……
いままでの僕だったら考えられない、こんな感情を抱くことすら新鮮で楽しい。
ふふ、と一人笑う僕をきょとんと見上げる花野井くん。そんな彼に、にこ、と目配せをし、とあるお願いをすることにした。
「ねぇ花野井くん……相談乗ってもらってもいい?」
「!!もちろんです!!」
こうして印刷機が集まった秘書課奥の一角で僕と花野井くん二人だけの秘密の会議が開催された。
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