ロストソードの使い手

しぐれのりゅうじ

文字の大きさ
47 / 102
ホノカ編

四十七話 放課後訓練

しおりを挟む
 放課後になり僕たちはそのまま特訓のために西側の遊具がある場所に訪れた。
「さて、特訓つっても何をするかな」
「うーん。まずは軽くランニングとか?」
「そうだな。そんじゃ行くか」

 僕達は丸太の付近に荷物を立てかけて走ろうと軽くアップをする。

「ええ……コノもやらなきゃ駄目だよね」
「別に嫌ならそこで待っててもいいんだぞ」
「そ、それは駄目! コノは二人の傍から離れたくないからっ」

 コノは二つの事を天秤にかけて一緒にランニングすることを決めて、僕達の真似をして身体を温めた。

「じゃあオレに付いてきてくれ」

 ホノカが先導してくれて僕とコノは隣り合って彼女の背を追った。どうやら村の中を順に回っていくらしく、まずは神木の方から北側へと向かった。ペースはコノに合わせているのかゆっくりで、割と安定した呼吸のまま走り続けられて。

「ぜぇ……ぜぇ……も、もう少し遅くはできない?」
「流石にそれは早歩きになるだろ。体力作りのためだ、頑張れ」

 コノは一生懸命にホノカのペースについて行く。そんな彼女を横目に僕は前方のホノカと軽く雑談をした。

「ホノカはいつも走ってるの?」
「ああ。身体を動かさないと気が済まないんだよオレは。それに走ると気分も良くなるしな」
「それわかるな。頭がスッキリするよね」
「ぜぇ……はぁ……はぁ……ぜぇ」

 日本にいた時はそこまで運動はしていなかったけど、最近トレーニングを始めて気持ち良さや成長をしている感覚を知った。それが、凄くモチベーションになっている。
 神木から南の方に行き、またターンして真ん中へと戻り次は東側へと走った。その間に村の人とすれ違うと皆挨拶や声をかけてくれて。
「何か温かいよね、本当に」

「まぁたまに面倒だったりするけどな」
「はは、そうかもね。けど、この雰囲気って凄く良いよ」
「うぅ……無理ぃ……キツイよー……」

 僕の住む地域は割と都会に近いところだったから、周囲の人との繋がりは希薄だった。だからか、この村の距離の近さは羨ましく映った。それについ考えてしまう、もしこういう場所だったならアオがこの世界に来ることがなかったかもしれないと。
 それから再び学び舎のある北側に訪れるとすぐに引き返し、そして西側へと最後まで足を止めずに一周し終えた。

「ふぅ~まぁまぁ走ったな」
「そうだね、このペースでも疲れるね」
「はぁ……ちょっと……なんてもん……じゃないです……けど……」

 限界といった感じで地面に座り込んで酸素を全力で吸っていた。

「良く頑張ったなコノハ」
「ぜぇ……このくらいは……何とかできたよ、えへへ」
「後は適当に特訓するから、ゆっくりしててくれ」

 少し休憩を挟んでからそれぞれトレーニングを開始した。僕はロストソードを素振りしたり、戦闘のイメトレをしたり。ホノカは丸太の的に魔法を当てたり、空飛ぶ魔法で丸太の上を軽やかに飛び乗っていた。

「なぁヒカゲ。ちょっとしたゲームやらないか?」
「ゲーム?」

 互いに一段落ついた時にホノカが二本の細い棒を持ちながらそう提案をしてくる。

「ルールは先に棒を当てた方が勝ち。お前がギュララとやったみたいな感じだ」
「……何か棒とはいえ当てるのに気が引けるんだけど」
「オレは霊でしかも半分くらい亡霊だ。その程度大したことねぇよ」

 理屈ではそうだけど気持ち的にはやっぱり遠慮したくなってくる。でも、実践的ではあるからと思い、それを受けることにした。

「よしゃ、じゃいくぞ!」
「わ、わかった」

 距離を取り相対して棒を構えた。ホノカは常に身体を動かせるよう小さくジャンプしていて、僕は向かいうつためにじっと動きを見る。

「うららぁ!」

 小さなステップで距離を詰めてくると棒を斜め上に振り上げてきた。身体に当たる前に後ろに飛び退いて回避。すぐさま反撃の一撃を放つも同じようにひらりと躱されて、また最初の状況に。

「せいやぁぁぁ」

 今度はこちらから斬りかかる。棒を振りかぶると真っ向から棒をぶつけられつばぜり合いの形に。

「つ、強い……」
「負けねぇ!」

 ただホノカのパワーの方が上回ってて、ジリジリと押し込まれてきて。そしてさらなる力が加えられると弾かれてしまい、胴体はガラ空きになってしまい。

「ほい、オレの勝ち」

 軽く棒を当てられて勝負あり。僕は呆気なく負けた。

「もう一回やろうぜ」
「うん、次は勝つよ」
「へへっ次はもっとバチバチでやるからな」

 そうして僕達は何度も棒当てゲームを繰り返した。しかし、それは結果的にワンサイドで勝つことはできなくて。

 そのままリベンジを果たすことができず時間となってしまった。

「もうすぐ暗くなるな。終わりにするか?」
「うん。明日は勝つからね」
「おう」

 神木までは一緒で、そこからホノカとは別れてコノと家路を歩いた。

「少し幻滅させちゃったかな。あんまり強くなくて」

 ロストソードを用いていないとは言え、一度も勝てなかったのだからそう思われても仕方ないだろう。

「そんな事ありません。コノを救ってくれたあの時のことは勇者様のようだったのは変わらないです。それに、ヒカゲさんを知っていって強さだけじゃない魅力だってあるんです。何なら強くなろうと頑張ろうとしている姿が素敵でした」

 真正面からそう褒められると、とてもくすぐったかった。

「そっか……」
「えっへへ照れてるヒカゲさんも最高です!」
「も、もう止めて……」

 やはりまだ彼女の好意に対しての耐性はついていなかった。頬も熱くてそんな表情をあまり見られたくなく両手で隠す。

「ふふっ」
「……」

 家に戻るまで生暖かい視線を送られ続けて、それのせいで火照りに燃料を投下されたように冷めることはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...