48 / 92
ホノカ編
四十八話 襲来
しおりを挟む
村での生活三日目、四日目そして五日目と僕は学び舎へとコノに付き添って、放課後にはホノカと共にトレーニングをするという日常を繰り返した。その間にはアクシデントは何一つなく、単調な時間が流れた。
それから六日目となり、僕はいつものと言ってもしっくりくるようになった学び舎からの放課後とトレーニングのサイクルをこなしていた。
「初めて勝てた……」
「まっ、他は全部オレの勝ちだけどな」
今日も行った対決で、最後の戦いでようやく白星を飾った。何度もやっているとホノカの攻撃の予備動作や足の運びを覚えていて、それに合わせて行動を選択できるようになってきていて。次も勝てるようなそんな活路が見いだせていた。
ホノカは一回だけの敗北でも凄く悔しそうにしていて、それを隠すように勝ち誇っている。
「ホノカがそんなに悔しそうにしてるの久しぶりに見たなー。もう村の中じゃ上の方だもんね」
「……確かにそうだな。それに何か死んじまってもこんな気持ちになるんだって、ちょっと変な気持ちする」
二人の会話を聞きつつ、その気持ちが何か未練に繋がっていないだろうかと考えた。例えば、あのウルフェンにリベンジしたいみたいな想いがある可能性も無くはないだろう。
この数日間で二人とは仲良くなれたと思うけど、本当の未練についてはまだわかっていなかった。正直、半亡霊状態だから早めに解決したいのだけど、問い詰めることもできなくて、話してくれるのを待つしかないため歯がゆさもあって。しかも、二人と長く過ごすほど、ロストソードで断ち切って別れさせづらくなってもいた。
「ヒカゲさん、難しい顔をしてどうしたんですか?」
「あ、いや。何でもないよ。ちょっと疲れちゃっただけ……ってうぉ」
思考の沼にはまっていたせいで、いつの間にか至近距離にコノがいたのに気づかず心臓が跳ねた。
「結構お疲れみたいですね。明日はお休みの日で学び舎もないので、ゆっくりしましょうね」
「そうするよ。ホノカもそれでいいかな」
「いいぜ。つぅかそのつもりだったしな」
コノの回復魔法のおかげで身体の疲労は大したことはないものの、実際精神的な疲弊は少なからずあったので助かる。
一旦それで話を終わらせ、僕達は荷物を持って家路につくことにした。
もうそろそろ夕暮れになるので家に戻る村人と多くすれ違う。神木がある広場にはもう人はいなく、僕たちだけだった。
「じゃオレはここで……」
神木前でホノカが立ち止まる。そして別れの言葉口にしようとした、その時に。
「奴らが来たぞー!」
南の方からそんな叫び声が聞こえた。緩やかな日常は一変して危険な非日常へと。
「いやぁ……」
「早くコノ家に……」
「待て、囲まれるぞ」
東側から二人のウルフェンが姿を現した。さらに後ろの西側からも同じくもう二人がいて。それを見たコノは僕とホノカの間で身体を震わせて顔を青くさせていた。
「さっきまでいなかったのに」
「多分、周囲の森から柵を越えて来たんだろ。だが森には凶暴な魔獣が大量にいて、無事にいられないはずなんだが……」
彼らを観察するも、大した傷も見受けられなかった。違和感としたら何だか少し儚げな感じはするくらいだろうか。
「そこをどけロストソードの使い手」
「悪いけど、彼女は殺させない」
僕はロストソードを手にして、剣先を二人に向けた。
「赤の祈り手……死してなお邪魔するか」
「当たり前だろ。悪いが負けたままあの世にいってたまるかよ」
反対側ではホノカが相手と向き合っている。やはり未練は復讐なのか、そんな事を思っていると南側からまた一人のウルフェンがやってきて。
「全く面倒だな。あの日に殺しておくべきだったぜ」
「……まさか」
「よぉロストソードの使い手。あの時は世話になったなぁ」
その姿と声はしっかりと覚えていた。現れたかウルフェンは僕よりも一回り大きく、黄色い鋭瞳を持ち虹色の鉢巻を巻いている。
そう、その正体は初めてこの島に来て戦い、グリフォドールに連れ去られた人だった。
それから六日目となり、僕はいつものと言ってもしっくりくるようになった学び舎からの放課後とトレーニングのサイクルをこなしていた。
「初めて勝てた……」
「まっ、他は全部オレの勝ちだけどな」
今日も行った対決で、最後の戦いでようやく白星を飾った。何度もやっているとホノカの攻撃の予備動作や足の運びを覚えていて、それに合わせて行動を選択できるようになってきていて。次も勝てるようなそんな活路が見いだせていた。
ホノカは一回だけの敗北でも凄く悔しそうにしていて、それを隠すように勝ち誇っている。
「ホノカがそんなに悔しそうにしてるの久しぶりに見たなー。もう村の中じゃ上の方だもんね」
「……確かにそうだな。それに何か死んじまってもこんな気持ちになるんだって、ちょっと変な気持ちする」
二人の会話を聞きつつ、その気持ちが何か未練に繋がっていないだろうかと考えた。例えば、あのウルフェンにリベンジしたいみたいな想いがある可能性も無くはないだろう。
この数日間で二人とは仲良くなれたと思うけど、本当の未練についてはまだわかっていなかった。正直、半亡霊状態だから早めに解決したいのだけど、問い詰めることもできなくて、話してくれるのを待つしかないため歯がゆさもあって。しかも、二人と長く過ごすほど、ロストソードで断ち切って別れさせづらくなってもいた。
「ヒカゲさん、難しい顔をしてどうしたんですか?」
「あ、いや。何でもないよ。ちょっと疲れちゃっただけ……ってうぉ」
思考の沼にはまっていたせいで、いつの間にか至近距離にコノがいたのに気づかず心臓が跳ねた。
「結構お疲れみたいですね。明日はお休みの日で学び舎もないので、ゆっくりしましょうね」
「そうするよ。ホノカもそれでいいかな」
「いいぜ。つぅかそのつもりだったしな」
コノの回復魔法のおかげで身体の疲労は大したことはないものの、実際精神的な疲弊は少なからずあったので助かる。
一旦それで話を終わらせ、僕達は荷物を持って家路につくことにした。
もうそろそろ夕暮れになるので家に戻る村人と多くすれ違う。神木がある広場にはもう人はいなく、僕たちだけだった。
「じゃオレはここで……」
神木前でホノカが立ち止まる。そして別れの言葉口にしようとした、その時に。
「奴らが来たぞー!」
南の方からそんな叫び声が聞こえた。緩やかな日常は一変して危険な非日常へと。
「いやぁ……」
「早くコノ家に……」
「待て、囲まれるぞ」
東側から二人のウルフェンが姿を現した。さらに後ろの西側からも同じくもう二人がいて。それを見たコノは僕とホノカの間で身体を震わせて顔を青くさせていた。
「さっきまでいなかったのに」
「多分、周囲の森から柵を越えて来たんだろ。だが森には凶暴な魔獣が大量にいて、無事にいられないはずなんだが……」
彼らを観察するも、大した傷も見受けられなかった。違和感としたら何だか少し儚げな感じはするくらいだろうか。
「そこをどけロストソードの使い手」
「悪いけど、彼女は殺させない」
僕はロストソードを手にして、剣先を二人に向けた。
「赤の祈り手……死してなお邪魔するか」
「当たり前だろ。悪いが負けたままあの世にいってたまるかよ」
反対側ではホノカが相手と向き合っている。やはり未練は復讐なのか、そんな事を思っていると南側からまた一人のウルフェンがやってきて。
「全く面倒だな。あの日に殺しておくべきだったぜ」
「……まさか」
「よぉロストソードの使い手。あの時は世話になったなぁ」
その姿と声はしっかりと覚えていた。現れたかウルフェンは僕よりも一回り大きく、黄色い鋭瞳を持ち虹色の鉢巻を巻いている。
そう、その正体は初めてこの島に来て戦い、グリフォドールに連れ去られた人だった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
スライムから人間への転生〜前世の力を受け継いで最強です
モモンガ
ファンタジー
5/14HOT(13)人気ランキング84位に載りました(=´∀`)
かつて勇者と共に魔王を討伐したスライムが世界から消えた…。
それから300年の月日が経ち、人間へと転生する。
スライムだった頃の力【勇者】【暴食】を受け継ぎいろんな場所を巡る旅をする
そんな彼の旅への目的はただ1つ!世界中の美味しいご飯を食べる事!
そんな食いしん坊の主人公が何事もないように強敵を倒し周りを巻き込んで行く!
そんな主人公の周りにはいつのまにか仲間ができ一緒に色々なご飯を食べて行く!
*去年の9月まで小説家になろう。で連載を辞めた作品です。
続きを書こうと気持ちになりまして、こちらで再開しようもおもった次第です。
修正を加えてます。
大きいのは主人公の名前を変えました。(ヒロインと最初の一文字が被っている為)
レアル→リューク
ラノベ専用アカウント作りましたー( ̄∀ ̄)
Twitter→@5XvH1GPFqn1ZEDH
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる