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ギュララ編
十九話 二人の関係
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それから僕達は一旦休憩に加えて荷物を置くために、クママさんの家に足を運んだ。桃奈さんだけはギュララさんが以前住んでいたという家に戻った。しばらくそこで過ごしながら、解決のために奔走していたらしい。
「ここが僕の家です。一人で暮らしているので、気楽にいてください。最近はハヤシバラさんと二人になっていますが」
「ありがとうございます、お世話になります」
彼の家は木造の平屋だった。しっかりとした作りで、一人では住むには少し大きさがあり、屋根に重なる形で葉っぱがピッタリと覆われていている。家の近くには栽培された植物何かが沢山あり、一部は実がなっていた。その中にマッスルポーズのような形をしたイチゴみたいな果物があって。
「あれはストロングベリーです。食べると力がつくんですよ」
「見た目通りなんですね……」
「家にいくつかあるので出しますよ。では入ってください」
入口クママさんの背丈に合わせられていて高かく、当然中も天井もそれに比例している。
僕は部屋を案内されながら踏み入れた。まずちょっとした通路から居間に行くのだけど、左手に台所と冷蔵庫のようなマギアがあり、反対側にはユニットバスがある。居間には丈の高い机に椅子が三つあり、天井には簡素な照明が黄色の光を放っていた。他にも、食器類などが入った棚や小物が飾られている棚、大きめな観葉植物がある。
居間から三つの部屋に繋がっていて、僕は林原さんが使っているという奥の部屋に。
「この部屋は、昔両親が使っていたのです」
そこはクママさんほど大きな人が二人快適に過ごせそうな広さがあり、右手には化粧台が設置されて、左手には高いクローゼットや本棚、カウンターデスクがある。奥にダブルベッドがあり、人間二人なら余裕で寝られそうだった。
デスクの上には色々な入ってそうな林原さんのリュックがあり、僕はそれの隣に置く。
「林原さん、これからどうしましょう?」
「今の俺達にはどうしようも無いだろう。ミズアの帰りを待つ」
「……あ」
ふと僕のお腹が空腹を訴えかけるように音が鳴ってしまう。一気に飢餓感と羞恥心が溢れてきた。
「そういえばそろそろ昼時だな」
「……何か食べたいです」
今日は朝から色々と身体を動かしたせいで、エネルギーが凄く欲しい。
「なら俺が作る。何かリクエストはあるか?」
「えっ、良いんですか?」
「ああ。一応あの家では俺とアヤメさんが食事を作っていたからな。外に出た時も同じく俺の担当だ。そのために、色々持ってきている」
彼のリュックには何が入っているのかと思っていたけど料理用の物だったようで、意外過ぎた。
「しばらくこちらいらっしゃるのですけど、毎日作って貰っていてありがたい限りです」
「ということだ。気に病む必要はない。遠慮なく言え」
何だか佇まいからしてすごい頼りになる。桃奈さんが好きになるのも理解できた。
「じゃあ……えーとシチューみたいなのってできますかね?」
アヤメさんが作っていたヤバい色をしたスープを思い出してしまい、それを塗り替えて欲しくてそう頼んだ。
「わかった。食材何かも持ってきているから問題無い。二人はゆっくりしていてくれ」
林原さんはクローゼットからグレーのエプロンを付けると颯爽と台所へと足を向けた。
「僕は居間で待つことにするのです。良い香りが来るんですよ」
「じゃあ僕もそうします」
共に居間へと行って、クママさんが座る隣の椅子へと腰をおろす。ギリギリ足が着く高さで、子どもの頃のような感覚を抱いた。
身体を斜めに傾けて通路の方を見ると、林原さんが真剣な顔つきで料理をしている。
「……あの、クママさんとギュララさんって友達だったんですよね。二人の関係とか訊きたいです。最近ロストソードの使い手になったので、まだ詳しい話を聞いていなかったので」
待つ時間を潰すのと同時に、何か役に立てないかと思い二人の関係性について尋ねてみる。
「いいですよ。そうですね、彼と仲良くなったのは、近い境遇があったらなのです」
クママさんは懐かしげに柔和な表情で、過去について語ってくれた。
「お互い幼くして両親を失っていました。だからか、他人のような気がしなくて自然に心を通わせていって。けれど、彼は僕と違って強かったのです」
そう言うと、自身の掌を見下ろし自嘲気味に微笑む。
「僕は心も強さも無いから良く馬鹿にされたりいじめられたりしてました。そんな時にいつものギュララは助けてくれたのです。そしていつも言うんです、僕には強くなるポテンシャルがあるって。確かに背丈はありますけど、それだけなので」
肩をすくめて微笑するとまた僕に目線を合わせてくる。
「クママさん、ギュララさんが亡くなった理由に訊いても?」
「ええ。僕達の関係は今の年齢になるまでずっと続いていました。変わった事とすれば、もっと強さを持つよう言ってくるようになったぐらいですね。そんな中である日、泉に行き祈るために森に入った時、凶暴な魔獣に襲われたのです」
目を閉じてネックレスを左手でぎゅっと握りしめる。
「変身し戦えば良かったのです。けど、足が竦んで動けなかった。そんな時に偶然通りかかったギュララが守ってくれて、逃がしてくれたのです。ですがそれが精一杯で、彼は殺されてしまった。僕のせいで、彼は死んだのです」
「そう……だったんですね」
彼が持っているあろう罪悪感は痛いほど理解できた。どんな思いで行き続けていたのかも。
「ギュララは僕に強さを見せて欲しいんだと思います。でも、そんな強さは僕には無いだろうし、友人に手は上げられません。どうにか話したいのですが……さっきの感じのままで。きっと恨みもあるのでしょうね」
それでクママさんは全てを語り終えたように、一度息を大きく吐いた。
「話してくれてありがとうございます。それで、何ですけど」
僕は一度言葉を切って、言いたくなったことを頭の中で少し整理してからまた続けた。
「実は、僕のせいで大切な人を酷く苦しませてしまった事があるんです。僕が良かれと思った事が悪い方向に働いてしまって」
この過ちはずっと誰にも言えなかった。それに言葉にすると痛み伴ってきて苦しい。でも、それが何か彼の助けになると思って口を動かした。
「それでその人は近くにいるんですけど、謝罪や話合いも受け入れてくれないというか、そのことを聞き入れてくれない状態なんです」
「同じ……ですね」
「だからその、一人じゃないし、一緒に頑張りましょうって言いたくて。すみません、急にこんなこと」
誰かに話したかったのかもしれない。クママさんのためと理由をつけたけど、本当はただのエゴなんだと気づいてしまい、申し訳なくなる。
「いいえ嬉しいです。わかってくれる人がいると思うと心が楽になります」
クママさんの穏やかな微笑みに罪悪感が少し薄れた。
「そうだ、ヒカゲさんは……」
「そうですね……それは……」
それから僕達は互いの好みや趣味、思い出話などをした。彼とは結構波長が合って、テンポよく話が進んだ。
「できたぞ」
「あ、ありがとうございます」
話し込んでいると林原さんが木の皿に入ったシチューを持ってきてくれる。それから、クママさんが棚から木製のスプーンを出してくれた。
「美味しそう」
シチューはクリーミーな白色で、中には肉や色とりどりの野菜が熱々の中に浸かっている。香りも感じると食欲が刺激されて唾液が出てきた。
僕達に食事を出した後、エプロンを取ってからもう一皿持って外に出ようとする。
「どこに?」
「愛理の分を渡してくる」
彼はそう言うと彼女の元に行ってしまう。とても幸せそうに食べる桃奈さんの姿は容易に想像できる。
残された僕達は早速食べようとスプーンを持つ。
「おおっ、この肉ってボアホーンとキユラシカですよね。これすごくジューシーで最高なのです」
「……マジか」
この美味しそうな肉は僕を襲撃してきたあの魔獣達なのか。
何だか変な気分になりながらシチューを口に運んだ。それは凄く甘くて頬がとろけそうな美味しさだった。
「ここが僕の家です。一人で暮らしているので、気楽にいてください。最近はハヤシバラさんと二人になっていますが」
「ありがとうございます、お世話になります」
彼の家は木造の平屋だった。しっかりとした作りで、一人では住むには少し大きさがあり、屋根に重なる形で葉っぱがピッタリと覆われていている。家の近くには栽培された植物何かが沢山あり、一部は実がなっていた。その中にマッスルポーズのような形をしたイチゴみたいな果物があって。
「あれはストロングベリーです。食べると力がつくんですよ」
「見た目通りなんですね……」
「家にいくつかあるので出しますよ。では入ってください」
入口クママさんの背丈に合わせられていて高かく、当然中も天井もそれに比例している。
僕は部屋を案内されながら踏み入れた。まずちょっとした通路から居間に行くのだけど、左手に台所と冷蔵庫のようなマギアがあり、反対側にはユニットバスがある。居間には丈の高い机に椅子が三つあり、天井には簡素な照明が黄色の光を放っていた。他にも、食器類などが入った棚や小物が飾られている棚、大きめな観葉植物がある。
居間から三つの部屋に繋がっていて、僕は林原さんが使っているという奥の部屋に。
「この部屋は、昔両親が使っていたのです」
そこはクママさんほど大きな人が二人快適に過ごせそうな広さがあり、右手には化粧台が設置されて、左手には高いクローゼットや本棚、カウンターデスクがある。奥にダブルベッドがあり、人間二人なら余裕で寝られそうだった。
デスクの上には色々な入ってそうな林原さんのリュックがあり、僕はそれの隣に置く。
「林原さん、これからどうしましょう?」
「今の俺達にはどうしようも無いだろう。ミズアの帰りを待つ」
「……あ」
ふと僕のお腹が空腹を訴えかけるように音が鳴ってしまう。一気に飢餓感と羞恥心が溢れてきた。
「そういえばそろそろ昼時だな」
「……何か食べたいです」
今日は朝から色々と身体を動かしたせいで、エネルギーが凄く欲しい。
「なら俺が作る。何かリクエストはあるか?」
「えっ、良いんですか?」
「ああ。一応あの家では俺とアヤメさんが食事を作っていたからな。外に出た時も同じく俺の担当だ。そのために、色々持ってきている」
彼のリュックには何が入っているのかと思っていたけど料理用の物だったようで、意外過ぎた。
「しばらくこちらいらっしゃるのですけど、毎日作って貰っていてありがたい限りです」
「ということだ。気に病む必要はない。遠慮なく言え」
何だか佇まいからしてすごい頼りになる。桃奈さんが好きになるのも理解できた。
「じゃあ……えーとシチューみたいなのってできますかね?」
アヤメさんが作っていたヤバい色をしたスープを思い出してしまい、それを塗り替えて欲しくてそう頼んだ。
「わかった。食材何かも持ってきているから問題無い。二人はゆっくりしていてくれ」
林原さんはクローゼットからグレーのエプロンを付けると颯爽と台所へと足を向けた。
「僕は居間で待つことにするのです。良い香りが来るんですよ」
「じゃあ僕もそうします」
共に居間へと行って、クママさんが座る隣の椅子へと腰をおろす。ギリギリ足が着く高さで、子どもの頃のような感覚を抱いた。
身体を斜めに傾けて通路の方を見ると、林原さんが真剣な顔つきで料理をしている。
「……あの、クママさんとギュララさんって友達だったんですよね。二人の関係とか訊きたいです。最近ロストソードの使い手になったので、まだ詳しい話を聞いていなかったので」
待つ時間を潰すのと同時に、何か役に立てないかと思い二人の関係性について尋ねてみる。
「いいですよ。そうですね、彼と仲良くなったのは、近い境遇があったらなのです」
クママさんは懐かしげに柔和な表情で、過去について語ってくれた。
「お互い幼くして両親を失っていました。だからか、他人のような気がしなくて自然に心を通わせていって。けれど、彼は僕と違って強かったのです」
そう言うと、自身の掌を見下ろし自嘲気味に微笑む。
「僕は心も強さも無いから良く馬鹿にされたりいじめられたりしてました。そんな時にいつものギュララは助けてくれたのです。そしていつも言うんです、僕には強くなるポテンシャルがあるって。確かに背丈はありますけど、それだけなので」
肩をすくめて微笑するとまた僕に目線を合わせてくる。
「クママさん、ギュララさんが亡くなった理由に訊いても?」
「ええ。僕達の関係は今の年齢になるまでずっと続いていました。変わった事とすれば、もっと強さを持つよう言ってくるようになったぐらいですね。そんな中である日、泉に行き祈るために森に入った時、凶暴な魔獣に襲われたのです」
目を閉じてネックレスを左手でぎゅっと握りしめる。
「変身し戦えば良かったのです。けど、足が竦んで動けなかった。そんな時に偶然通りかかったギュララが守ってくれて、逃がしてくれたのです。ですがそれが精一杯で、彼は殺されてしまった。僕のせいで、彼は死んだのです」
「そう……だったんですね」
彼が持っているあろう罪悪感は痛いほど理解できた。どんな思いで行き続けていたのかも。
「ギュララは僕に強さを見せて欲しいんだと思います。でも、そんな強さは僕には無いだろうし、友人に手は上げられません。どうにか話したいのですが……さっきの感じのままで。きっと恨みもあるのでしょうね」
それでクママさんは全てを語り終えたように、一度息を大きく吐いた。
「話してくれてありがとうございます。それで、何ですけど」
僕は一度言葉を切って、言いたくなったことを頭の中で少し整理してからまた続けた。
「実は、僕のせいで大切な人を酷く苦しませてしまった事があるんです。僕が良かれと思った事が悪い方向に働いてしまって」
この過ちはずっと誰にも言えなかった。それに言葉にすると痛み伴ってきて苦しい。でも、それが何か彼の助けになると思って口を動かした。
「それでその人は近くにいるんですけど、謝罪や話合いも受け入れてくれないというか、そのことを聞き入れてくれない状態なんです」
「同じ……ですね」
「だからその、一人じゃないし、一緒に頑張りましょうって言いたくて。すみません、急にこんなこと」
誰かに話したかったのかもしれない。クママさんのためと理由をつけたけど、本当はただのエゴなんだと気づいてしまい、申し訳なくなる。
「いいえ嬉しいです。わかってくれる人がいると思うと心が楽になります」
クママさんの穏やかな微笑みに罪悪感が少し薄れた。
「そうだ、ヒカゲさんは……」
「そうですね……それは……」
それから僕達は互いの好みや趣味、思い出話などをした。彼とは結構波長が合って、テンポよく話が進んだ。
「できたぞ」
「あ、ありがとうございます」
話し込んでいると林原さんが木の皿に入ったシチューを持ってきてくれる。それから、クママさんが棚から木製のスプーンを出してくれた。
「美味しそう」
シチューはクリーミーな白色で、中には肉や色とりどりの野菜が熱々の中に浸かっている。香りも感じると食欲が刺激されて唾液が出てきた。
僕達に食事を出した後、エプロンを取ってからもう一皿持って外に出ようとする。
「どこに?」
「愛理の分を渡してくる」
彼はそう言うと彼女の元に行ってしまう。とても幸せそうに食べる桃奈さんの姿は容易に想像できる。
残された僕達は早速食べようとスプーンを持つ。
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