大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ

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6.幼女が誘拐されたけどどうしましょう?

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「っ! エミっ!?」

 それは当然だろう。
 彼らの目的は初めからバッグなどではなく、エミだったのだから。
 囮の男が目立つようにひったくりを行い、周囲の視線を引き付ける。
 その隙に、もう一人の男がエミを抱え連れ去ったのだ。

 豪胆な誘拐方法だが、その手際は中々のものであった。
 実際、母親はエミのことを見失っているし、周囲にもエミが連れ去られた事実に気がついている者はいない。

 子供の誘拐。
 目的は奴隷として売るのか、それとも素材として使うのか。
 どちらにせよ、エミにとって楽しい未来は待っていないだろう。

「さて、これで娘は退場したわけだけど……」

 誘拐された瞬間を私以外誰も見ていなかった以上、エミが見つかる可能性は低いだろう。
 となると、あとは母親だけなのだが……。

 そこまで考えたところで、私は気がついてしまった。

(違う! 私の他にもエミの誘拐を把握している人がいる!)

 彼だ。
 いくら店内にいるとはいえ、彼が娘として接しているエミの誘拐に気がつかないわけがない。
 それなのに拐われるエミを助けに現れなかった。
 いったいなぜか。

(はっ!? まさか私が試されている!?
 私が自分の隣に立つに相応しい女に成長したか確かめようとしてるんだわ!)

 俺と結婚するなら、誘拐犯くらい一人で対処して見せろと。
 だというのに、私としたことが目の前でエミを連れ去られてしまった。

(失態だわ!
 目の前で女の子が誘拐されようとしていたら、彼なら真っ先に助けるはずよ。
 それなのに私は犯行に気がつきながら何もしないだなんて!)

 こんな有り様では、優しい彼には相応しくない。

 私はぎゅっと拳を握りしめる。
 犯してしまった過ちは戻らない。
 今の私にできることは、一刻もはやくエミを助けて、失態を最小限にとどめることだけだ。

 私は彼のついでに覚えておいたエミの魔力波長をたどって、転移魔法を発動させた。

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