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第一章:いざ、王都!
24. ネロはヒロインじゃない
しおりを挟む…突如言われた、アルジェントの「婚約者はいない」発言にネロは驚愕どころか思考が一旦停止する。
(熱で幻聴を聞いてしまったのだろうか…?薬も飲んだしそこまで熱は高くないはずなんだけど…)
…一旦整理しよう。
突然現れたアルジェントの婚約者(仮)に”不釣り合い”、”目障り”発言をされ、
バレッタを捨てられ、悲しみに暮れながらバレッタを探した結果、風邪&怪我。
色々自分の中で落ち着きアルジェントの幸せを願おうとしたところの「婚約者はいない」発言。
(どうしよう、整理しても全然分からない…!)
いや、確かにアルジェントの婚約者にしては性格が歪んでるというか…勇ましいというか…気が強いというか…。
しかし家同士の繋がりや、もしかするとアルジェントの好みが気の強い女性の可能性もある。
けれどもアルジェント本人が婚約者ではないと言っている…。
ーーつまりあの人……誰?
「ネロ、昨日ヴォル…キツネ獣人に会っただろ?」
「え…はい…」
「…アイツは婚約者ではなく、ただの幼馴染みだ」
「お、おさな、なじみ?」
ーーおさななじみ…?OSANANAJIMI…?幼馴染み…!?
「あぁ、さっき俺の情報網を使って、彼女がネロに接触したことを知ったんだ。…俺の幼馴染みがすまない」
「あ…いえ…?」
婚約者だと思った人、というか婚約者と名乗った人が婚約者ではなく幼馴染み…?
それに情報網とは何だろう…昨日のことはどこまで知られているのだろうか。
…とりあえず彼女が幼馴染みということが分かったとして、ではなぜ婚約者ではない人がネロにあのような言動を取ったのだろう。婚約者なら百歩譲って分からないでも…ない?いや分からないけど。
「前々から、俺のことを好いてくれていたのは知っていたんだが。まさかこのようなことをするとは…」
「は、はぁ…」
なるほど理解、なーんだ!あのキツネはアルジェントのことを好いていたのか!
…とはならない。ネロは未だ意味が分かっていない。
彼女がアルジェントのことを好いているからといって、ネロを攻撃する必要性はあるだろうか。ネロがアルジェントのことを好いているからだろうか?
それなら王都中の女性達が標的になるのではないか…?
「先ほどヴォルの家に言って話をして来た。…ネロに嫉妬してあのようなことをしたと言っていた」
「しっと…?」
…”しっと”とは”嫉妬”のことだろうか。
前に図書館で見た本に”嫉妬は、他人が自分より優れていて羨ましく思うこと”と書かれていたが、その嫉妬だろうか。全てにおいてネロよりも優れてそうな人がなぜ。
「なぜ…私に嫉妬する必要があるんですか…?あ、あんな綺麗な人が…」
ネロに嫉妬するようなところは何処にもないはずで。
平民で、ただのアルジェントの使用人、美人でもお金持ちでもない。
羨むところなどないはずなのに、どうして…。
困惑していると目の前のアルジェントがなぜか柔らかく微笑み、そっとネロの両手を取る。アルジェントの温かい大きな両手で優しく包まれる、少し荒れた小さな手。
突然のその行動に訳が分からず、アルジェントを見つめる。
握られた手に軽く力が込められる。そして。
「…それは俺がネロを、心底…好いているからだろうな」
「…っ」
ネロは知らなかった。
嫉妬には”愛する人の愛情が他に向くことを憎む”という意味もあるということを。
“アルジェントがネロのことを好いているから嫉妬した”という事実にネロは吃驚し、信じられないという目でアルジェントを見るも、
ネロを見つめるアルジェント目が、愛おしいものを見ているような、そんな甘い熱を宿していて。
手を握るその両手がまるで好意を伝えるかのように熱くて。
そしてアルジェントの纏う雰囲気が、
「ネロ、好きだ」
その雰囲気が、まるでネロを愛してると言っているようで。
嘘偽りのないアルジェントの眼差しに、ネロは気づかない内に涙が溢れてしまう。
「う、うそ、だってっ…」
嘘ではないことなどアルジェントの目、表情、声、雰囲気、全てで分かるはずなのに。
それでもネロは信じられなかった。同じ気持ちになるはずないのだと。
釣り合わない、身分不相応だから心にしまって決して口にしてはいけないのだと、そう思っていた。
「ネロは…。俺の好意は…迷惑か?」
「…っ」
眉を下げ、悲しげに揺れる琥珀色の瞳にネロは動揺する。
好きな人を悲しませてしまっている。そんなの良くない。ではどうすればいい、この気持ちを言えば…
「…っすきです、アルジェントさん…、」
ネロには綺麗な告白なんてできない。
恋愛小説のようなキラキラとした、花が舞うようなそんな告白はできない。
緊張で顔を真っ赤にして、目を潤ませて、泣かないよう我慢して。
おそらく顔はぐちゃぐちゃで、可愛らしい笑顔なんて作れていないのだろう。
ネロはきっとヒロインじゃない。
けれども、
「っネロ、」
大好きな人に抱きしめられている。
大好きな人と両想いになっている。
ネロはヒロインではないから、
ここは浜辺でもお花畑でも、お城の前でもないけれど。
「ネロ、愛してる」
大好きな人に囁かれる愛の言葉があればきっと、
部屋のベッドの上であってもそれはまるで楽園のように
天国のように素敵な場所になる。
「ネロ、俺の恋人になってくれるか…?」
その言葉が、何よりも嬉しい。
貴方と2人で幸せになる未来なんてないと諦めていたからこそ。
誰かと一緒になる貴方を想像してしまったからこそ。
本当に嬉しくて、そして苦しい。
「…っでも、身分が違うし、」
どんなに大好きな人と両想いになれたとしても、ネロは平民でアルジェントは貴族で。どんなに幸せな気持ちになっても、その真実は変わらない。
「…身分なんてもの私は一切気にしないし、両親も気にしない」
「えっ、」
「それに俺がそんなことでネロを手放すわけないだろ?…だってキミは、」
ーーー俺の運命なんだから。
~ 片想い編 Fin ~
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