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四章
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しおりを挟む次の日の昼にローガンに立ち会ってもらい、マグリットは一通り、訓練の成果を披露していた。
「ど、どうでしょうか!」
「…………うーん」
「ローガン」
イザックがローガンの名前を呼んだ。
マグリットは口から心臓が飛び出してしまいそうなほどドキドキしていた。
両手を合わせながらローガンの言葉を待っていた。
「イザックがそばにいるし、おまけの合格ね!」
「~~~っ、ありがとうございます!」
ローガンにそう言われたマグリットは大喜びしていた。
「よかったな、マグリット」
「はいっ!」
イザックに抱きつきながら大きく頷いた。
マグリットが魔力を認識して抑える術を身につけたので、以前のように倒れてしまうことはないそうだ。
それに魔力コントロールは地道で、慣れていくしかないので細かいところはイザックに教わりながら体で覚えていくしかないと説明を受けた。
マグリットの力は目に見えるものではないため、尚更だろう。
その日の晩、マグリットが美味しい夕食を食べながら頬を押さえているとベルファイン国王に続き、今日は王妃の登場である。
すると少し後に前国王や王太后も合流した。
あまりの豪華な面々に驚くものの、マグリットは貴族として暮らしていなかったことや前世の記憶もあり、王族であっても恐れ多いといった感情が薄いせいかそこまで緊張することはなかった。
和気藹々とした雰囲気で食事会が進む。
どうやらマグリットとイザックの婚約のお祝いに駆けつけてくれたらしい。
「イザックのことを任せられるのはマグリットしかいない……!イザックを頼む」
「マグリット、本当にありがとう。これからは家族としてよろしくね」
マグリットの肩に手を置き頷く前国王と涙を滲ませながらマグリットの手を握る王太后。
その表情はとても嬉しそうだ。
「父上、母上。マグリットから離れてください」
「おお、すまない!だが嫉妬深いとマグリットに嫌われるぞ?」
「あなたがこうしてっ……うぅっ」
「イザックがやっと!やっと幸せに……っ!」
「母上も兄上もいい加減にしてください」
泣き出してしまった王太后と目頭を押さえる国王。
イザックは困惑しているようだ。
王太后に寄り添う前国王の姿を見て、マグリットは前世で自分を育ててくれた祖父母を思い出していた。
次に会えるのは一ヶ月後のパーティーになる。
その時には再び王城に三日ほど滞在することになるそうだ。
また一緒に食事をする約束をして、和やかな雰囲気のまま食事会は終わった。
明日はガノングルフ辺境伯領へ朝早く出発することになるため早めに大きなベッドに入る。
連日の訓練による疲労感ですぐに瞼が落ちていく。
(やっと、やっと帰れるのね……!)
そして朝日が上る前にマグリットは目が覚めた。
いつものように着替えようとするとノックの音と共に侍女たちが現れる。
マグリットの着替えを手伝ってくれるのだが、まだ侍女に世話をされることに慣れないため違和感は拭えない。
城を出てガノングルフ辺境伯領に帰るための馬車の中でイザックと共に楽しみながら旅をしていた。
一人でガノングルフ辺境伯邸に行く時とは大違いだ。
それに御者もネファーシャル子爵家から出た時と同じ人でマグリットは久しぶりの再会となった。
「あの時は最低限のお金しか持たせてもらってなかったので工夫して旅をしていたんですよね」
「マグリット様はとても料理がうまいので驚きましたよ」
「そうか……ネファーシャル子爵はそんなことを」
どうやらこの話でイザックのネファーシャル子爵家の印象はもっと悪くなってしまったようだ。
二日かけてガノングルフ辺境伯領に着くことになったのだが、マグリットはこの距離を一日で駆け抜けていったイザックに改めて驚くことになる。
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