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二章

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(ステファン殿下やオリーヴ王女殿下を助けたい気持ちで必死だったけど……うまくいってよかったわ)

フランソワーズは悪魔祓いを初めて成し遂げたことに、達成感を得ていた。
これは聖女の力を使って祈り続けても、消し去ることができない宝玉とは違う。
灰になった本を思い出すたびに、悪魔を完全に祓えたのだと実感できる。
フランソワーズは自分の手を開いたり閉じたりを繰り返していた。

しかし自然とマドレーヌの顔が浮かぶ。
彼女は毎回、こんなに大変なことをやっていたのだ。
そう思うとやはりヒロインの偉大さを実感する。

(マドレーヌはもっとすごい力を持っているのよね……あの宝玉が壊れるほどだもの)

今なら国を救いたいと、必死に祈り続けて宝玉を破壊した小説のマドレーヌの気持ちがわかるような気がしていた。
それだけセドリックへの気持ちも強かったのだろう。
フランソワーズもステファンとオリーヴを救いたいと思い祈り続けたが、いつもの数倍は力が出たような気がした。

(ま、まるでわたくしがステファン殿下のことを好きみたいじゃない……!)

フランソワーズが羞恥心から慌てていると、首元にチクリと痛みを感じた。
首に触れると、包帯が巻かれていくことに気づく。
最初は何故こんなところに包帯が巻かれているか、わからなかった。
それからステファンに剣を向けられたことを思い出して納得する。

(あの時、少しだけ剣が刺さっていたのね)

それを見ていたステファンの表情が一気に険しくなった。
よく見ると彼の腕や顔にも包帯が巻かれている。


「フランソワーズ、あの時は本当にすまなかった。僕たちを救ってくれようと動いていた君に……怪我をさせてしまうなんて」

「いいえ、あの時はステファン殿下は操られていたのですから仕方ありませんわ」

「……!」

「ステファン殿下が無事でよかったです」


フランソワーズがそう言って笑うと、ステファンの逞しい腕が腰に回る。
ステファンを抱きしめ返すように手を回した。
暫く抱きあっているとステファンの心臓の音が聞こえてくる。

(温かい……ステファン殿下が無事で本当によかった)

そう思っているとステファンが上半身を持ち上げる。
フランソワーズが彼を見上げると、頬を優しく撫でる手のひら。
そのまま互いに見つめ合ってあっていると……。


「フランソワーズは目覚めたというのは本当……っ」


バンッという音と共に乱暴に扉が開いた。
最後までフェーブル国王の言葉が紡がれることはなかった。
王妃もひょっこりと背後から顔を出すと「あらあら」と口元を押さえながら嬉しそうにしている。
フランソワーズは今、自分がステファンに抱きしめられていることに気がついて慌てて体を離した。
ステファンは不満げな表情でフェーブル国王を見ているが、フランソワーズは恥ずかしくてたまらなかった。


「お父様、お母様っ! どいてくださいませ」


そんな時、フェーブル国王と王妃の背後から聞こえたのは可愛らしい声だった。


「おお、すまない」

「はしたないわよ。オリーヴ」

「わたくしだってフランソワーズに御礼を言いたいのよ! お兄様ばかりずるいわっ」


先日、ベッドの上で咳き込んでいたオリーヴはどうやら悪魔を祓ったことですぐに体調が回復して元気になったようだ。
細身ではあるが顔色もよくピョンピョンと跳ねている姿を見ていると、別人のように思えてくる。
オリーヴはステファンを押し除けると、フランソワーズの手を両手で掴んで嬉しそうでブンブンと振っていた。
初めて会った時は、病弱な美少女といった感じだったのだが本来は元気いっぱいのようだ。
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