【奨励賞】花屋の花子さん

●やきいもほくほく●

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第三章 青紫色のアジサイ(前編)

①③ 雨の季節

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給食が終わって昼休みになった。
教室の中にまで雨の音が響いていた。
パチパチと窓を打ちつける激しい雨音にため息を吐いた。

「あーあ、また雨じゃん。外で遊べないね」
「……うん、そうだね」

机の上で頬づえをついて話している夏希ちゃんも、ガッカリとした顔をしている。
教室は人で溢れ返っていた。
なんだかムシムシするし、暑いし過ごしずらい。
梅雨の時期だからしょうがないけど、もう四日も雨続き。
雨の日は校庭で遊べないから残念だ。

「小春ちゃん、夏希ちゃん……!」
「あっ、凛々ちゃん!」
「凛々だ~!」

凛々ちゃんが手を振りながら楽しそうにこちらにやってくる。
花子さんの一件から、凛々ちゃんは悪口を言うのはやめた。
わたしと夏希ちゃんも長い休み時間には凛々ちゃんと話すために隣のクラスに行ってお喋りしていた。

「凛々ちゃん、今日の髪型かわいいね。きれいに編み込んである」
「ママにやってもらったの。雨で髪がくるくるになっちゃうから」
「わかる~! 今日前髪が決まらなくってさ」

凛々ちゃんもわたしたちがいるって思うと安心して不安はなくなったみたい。
前のクラスの仲良かった子たちにも会いに行っているんだって。
そのおかげなのか、今のクラスの人たちとも少しずつ話しているみたい。
でもまだ悪口を言っていた影響は残っているんだって。
少し警戒されていると、凛々ちゃんが言っていたことを思い出す。
でも凛々ちゃんは「自分が悪かったから、責任とらないと。少しずつみんなと仲良くなれるようにがんばる」と、前向きだった。

黒いユリが白いユリになって消えた次の日。
花子さんにお礼を言いたいと、凛々ちゃんと一緒に旧校舎に向かった。
けれど不思議なことに門の中には入れたけど、建物の中には入ることができない。
凛々ちゃんと理由を考えてみると、いつも出入りしていた赤い扉がないことに気づく。

「ここに赤くて古い扉があったよね?」
「うん……絶対にここに赤い扉があった!」

わたしと凛々ちゃんはしっかり覚えていた。
しかし今はひび割れた壁しかない。
赤い扉はどこにもなくなっていた。
これでは旧校舎の中には入れないと、入り口を探してみるけど、どこも施錠されている。

その日、わたしと凛々ちゃんは花子さんに会えないまま家に帰った。
その次の日は三人で旧校舎に向かう。
夏希ちゃんは怖いのか、門の前で待つと言っていた。
わたしと凛々ちゃんは、赤い扉の入り口を探した。
でも結局、赤い扉は見つからない。

わたしたちは『旧校舎の花屋』について、噂を知っている人に聞いて調べることにした。
すると、不思議なことがわかった。
凛々ちゃんのように旧校舎の三階の女子トイレで花をもらった人はいなかったということだ。
旧校舎に行ったけど、建物の中には入れなかった人がほとんど。

誰から噂を聞いたのかわからないみたい。
そうなると、実際に花子さんに会ったことがいる人はいなかった。
たしかに三階の女子トイレの中で花屋を開いている花子さんがいるとは思わないだろう。
だから花屋のことは知っていても、花子さんのことを知っている人はいないんだと思う。

あの日から一カ月経って、もう六月になった。
今年も暑くなるのが早くて、梅雨がきたからムシムシしている。
三人で楽しげに話していると、学校の北門のそばに青紫色の花が見えた。
花咲小学校には北門と南門がある。
南門が一番大きな門で、北門がその反対側にひっそりとある。
南門には桜が並んでいるけど、北門はひっそりとしている感じ。
いつもわたしたちが登校や下校帰る時に使うのが南門。
あまり北門に行くことがなかったから気が付かなかったけど、北門を囲むようにアジサイが並んでいる。

「あれって……アジサイかな?」
「もうアジサイの時期なんだね。てか小春、目がいいよね」

夏希ちゃんが目を細めながら北門の方を見ている。
凛々ちゃんも窓を覗き込んで、アジサイを見つけたのか本当だ、と声を上げた。

「アジサイが咲くと、梅雨って感じする」
「わかる~! カタツムリとかもいるしね」
「あとカエル!」
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