婚約破棄されて闇に落ちた令嬢と入れ替わって新しい人生始めてます。

●やきいもほくほく●

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番外編

真っ赤な薔薇を貴女に(マルナ&パルファン)

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赤い髪が好き
吊り上がった目が好き
男らしくて努力している姿が好き
一生懸命、騎士になろうとしている姿を見て心が熱くなる。

だんだん知っていく度に好きになっていく‥

兄の友人で騎士団長の息子、パルファン・ヒューレッド





マルナは恋をしていた。

でもそれは叶わない恋だった。

まだ何も分からなかった小さい頃、出来るだけパルファンの側に居たかったマルナは、用もないのに兄の元へ行っていた。
パルファンはマルナに優しく笑いかけてくれた。
それだけでも幼いマルナは天にも登る気持ちだった。

しかし成長していくに連れて、自分の王女という立場を理解していく。


(ずっと想いを隠し続けていこう‥)


マルナはそう思っていた。







そんな時、ローズレイ・ヒューレッドが転入してきた。

パルファンの妹だから‥そう思って近付いた。
そんなマルナに、とても嬉しそうに話しかけるローズレイを見ていると、胸が痛んだ。

モヤモヤした気持ちを抱えたままお茶会の約束をしたものの、マルナの心は晴れなかった。

実現したのは父と母に頼んでから暫く経った後だった。

薄ピンクのドレスを纏ったローズレイは、この世のものとは思えないほどに美しかった。


パルファンが好きだと伝えると、口をポカンと開けて驚くローズレイ。

そして、ずっと突き刺さっていたトゲのような罪悪感。
マルナは今日、ローズレイに言わなければならない事があった。

「本当にごめんなさい。こんな理由で話しかけた自分が情けなくなってしまったの‥」

マルナが謝るとローズレイは怒るどころか、優しくマルナに微笑んで許してくれた。
やっとローズレイと本当の友達になれた気がして、マルナは嬉しかった。

マルナは叶わない苦しい胸の内を誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
そんなマルナの考えを、ローズレイは一蹴してくれた。


「きっと‥運命は変わるわ!」


全力で、ぶつかっていい。

初めて言われた言葉に困惑はしてしまうのと同時に嬉しくて仕方なかった。
初めから諦めていたマルナに、ローズレイは勇気を与えてくれた。

この出来事が本当に運命を変える事になるとは、この時はまだ知る由もなかった。















「‥パルファン様!」

「マルナ王女‥」

「私は昔みたいに名前で呼んでほしいわ」

「はぁ‥どうしたんだ、マルナ」

「ふふ、ありがとうございます」


パルファンがマルナを妹のようにしか思ってない事も知っていた。
遠回しの好意はパルファンには全く意味が無い事にも気付いたマルナは、全力で想いを伝えていく事を選択した。


「今日も世界で一番素敵です!訓練頑張って下さいね」

「‥‥マルナ、俺は」

「分かってるわ、私が勝手に好きでいたいの‥」

「‥‥」

「困らせてしまってごめんなさい‥でも、私は後悔したくないの」


ローズレイの協力もあってか、マルナは本当に幸せな時間を過ごせた。
振り向いて欲しいなんて、そんな贅沢な事は思わない。


いずれパルファンも婚約者を作り、公爵家の跡を継ぐだろう。


年々、美しさに磨きが掛かり逞しく成長していくパルファン。
騎士として、公爵家の跡取りとして本当に立派に自分の責務を果たしている。

婚約者を作らないパルファンは、学園ではモテモテであった。
誇らしいようなハラハラするような‥そんな毎日を過ごしていた。

しかしある時、マルナに隣国の王子から結婚の申し込みが来た。

国王に呼び出され、告げられた時は胸が苦しくなった。
もう自分がパルファンを好きでいられる時間は、あと僅かだ。

隣国に嫁げば、マルナは国の代表として役割を果たさなければならない。
けれど不思議なもので、悲しみは全く無かった。

この想いを伝えられていなかったら、マルナはずっと後悔していただろう。
ローズレイには本当に感謝している。


前に進もう‥この気持ちをそっと胸に閉まって。


(‥‥パルファン様、好きでいさせてくれて本当にありがとう)



何も言わないでくれたのは、パルファンなりの優しさだろう。
もう全てを忘れて思い出にしなければならない。






そう思っていたのに‥












「‥‥俺と、結婚して欲しい」

「え‥‥」



一瞬、時が止まった。
パルファンがマルナの前に跪き、手の甲に口付ける。
薔薇に囲まれた公爵家の庭‥‥マルナは瞳に涙を溜めて首を振る。


「‥‥う、嘘よ」

「嘘じゃない」

「だって‥っ、ぅ」


涙を流すマルナを、そっとパルファンは抱きしめる。
そんな温かい体温を感じながら幸せに心を震わせていた。


「ずっと前から好きだったんだ」

「‥!?」

「いつ言おうか迷っていた‥マルナはいつも"私が好きなだけだから"と、言うものだから‥」

「パルファン様‥」

「タイミングが‥分からなかったんだ」


耳まで真っ赤にしたパルファンに、マルナは思わず笑ってしまった。
こんなにも愛おしく思える。


「パルファン様、私は‥」

「マルナが好きだ‥」

「‥‥っ!!」







「俺の気持ちを受け取ってくれないか?」





「勿論です‥!!」














END

大分前からマルナに気があったが、恥ずかしくて言えなかった模様です
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