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気付いてもらえないときのこと
嫉妬深い友人について
しおりを挟む入浴代は湯上がりのフルーツ牛乳で手を打とうと暖簾をくぐり、服を脱いで、カラカラと戸を開けて湯煙立ち込めるエデンへ。
「よぉ、ひさしぶりだな傍観者」
「人違いです」
「ンなわけあるかよ。そのツラ、忘れたことないぜ」
嫌いではないが苦手な手合いというのは誰にでもあるだろう。ぼくにとってのそれが、この荘厳な山の絵を背に不敵に笑むレヴィという男だ。
捩れる哄笑、渦巻く羨望。人好きしそうな人柄とカラッとした性格とは裏腹に、その本性こそ嫉妬がとぐろを巻いている。
「となり、失礼」
「オウ」
特に離れる理由もないので、かけ湯をしてレヴィの隣に浸かる。
「……え、なにしてんのお前」
普通に気持ちよさそうに入ってたから気にならなかったが、こいつはミッコさんに負けて故郷に帰ったはずだ。
「なにって……風呂だよ」
そりゃそうだ。
「帰ったんじゃなかったっけ?」
「ちょっとだけな。しかしまぁ風呂はいい! 銭湯だったか? やっぱ広いと最高だな!」
かはは、とレヴィは乾いた笑いを浮かべる。目の奥は笑っていない。
「その、故郷のお風呂に不満でも……?」
「話がわかるなぁオイ! やっぱお前がルチ
「いいよ、わかったわかった。迷惑になるから大きい声出さないの」
「む、オウ。失礼しました」
やけに素直に頭を下げるレヴィ。騒ぎ出した彼に注がれた驚きメインの視線も散っていく。
「ところで卑怯者」
「ベルさんも僕のことそう呼ぶよ」
「ちっ。なぁ正直者」
「わかりやすくて助かるよ」
レヴィの行動指針は嫉妬に他ならない。だから特別であろうとして、たまに変なことをするのだ。アホである。
「言ってみりゃお前さんほど正直なやつはいないさ。で、どうなんだ? お前が追いかけ回してるあの怪物とは上手く行ってんのか?」
「そこそこだよ」
「わかりやすいなぁ」
なんだというのか。
「しかし自覚はないと見た」
「なにがだよ」
「いやぁ。ただ、羨ましいことだぜ、それって」
正直なところ、僕はレヴィのことをあまり嫌いではない。苦手ではあるけれど。
彼は羨ましいだなどと笑ってみせた。レヴィらしい、アホみたいな笑顔でだ。こんなふうに笑える生き方を、素直に羨む気持ちを吐き出せる生き様を、もし来世があるのなら手に入れたいものだ。
「上がったらカノジョとフルーツ牛乳だろ? 一緒にいいか?」
「……いいよ。でも僕、長風呂派だからね」
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