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「蓮…気が付いたか…!!」
「ン……リア、ム…?」
蓮が次に目を覚ましたのは、目に優しい白い壁が四方を囲み、開かれた明るい窓から、優しい風が吹き込んでくる病室の中だった。
「リアム………ッ」
心配そうな顔で覗き込んでくる愛しい番の顔に、蓮はふわりと優しく微笑みかける。そんな彼の表情と様子に、リアムは心の底からホッと安堵の息を吐いた。
「ここ……病院…?」
それから少し、落ち着かなげな様子で室内を見渡す蓮に、リアムは彼の感じている不安を察して事情を説明する。
「ああ、大丈夫だ。ここは、ジャックらの知人の病院だから…」
「…そっか…なら、良かった…」
人とは異なる身体の事があるので、リアムも蓮も人間の病院は鬼門だ。まず真っ先にソレを案じているらしい蓮を安心させるため、リアムはこの病院の素性を知らせたのだ。
「リアム、大丈夫だよ。医者なら心当たりがあるから!」
蓮が気を失っている間に、リアム等は彼らの村のすぐ隣にある町の、小さな診療所へ駆け込んでいた。この診療所のまだ若い院長は名を長谷部一郎といい、その正体はジャックらと同じく混血人狼一族の末裔である。
長い長い間、人との混血を進めて来てもやはり、どうしても未だ人とは違う一族の治療や診察を、昔から何代も続くこの小さな診療所がすべて行ってきたのだ。
自分達の素性は何もかも承知の上。だから何も心配することはない、そうと察して蓮は、やっと安堵してベッドに深く身を預けた。
「リアムは…傷はもう平気…?」
「ああ。俺はちょっと貧血起こしたくらいで傷はもうねえよ」
証拠とばかりに借り物のシャツの袖を捲って見せるリアムに、蓮は嬉しそうに微笑んでしがみ付いてくる。
「リアム…リアム、良かった…ッ」
「ああ、蓮…蓮…ッ」
無事でよかった。会えてよかった。帰って来られて良かった。そんな様々な想いを抱くように、2人は強く互いの身体を抱き締め合い、何度も何度も口付けを交わし合う。が、
「あ……わ、悪い…」
「………リアム?」
突然、何かを思い出したようにリアムは、蓮の唇から離れて申し訳なさそうに謝った。抱擁を中断され『どうして?』と子犬の様に小首を傾げる蓮に、リアムはいかにも言い難そうにしどろもどろで言葉を紡ぐ。
「や…お前、あの……セオドアに、無理矢理……その」
「…………?」
「お…犯されたって……」
「…………え?」
そう、金色の狼セオドアとの戦いの最中、明かされた事実をリアムは思い出したのだ。
『蓮を抱いたよ』
戦闘を有利にするための挑発目的なのは明らかだったが、セオドアはリアムにそう言って彼を酷く狼狽させた。けれど、その事はもう良い。もはやどうにもならない、そもそも不可抗力であるから、彼に犯された蓮には何の罪も咎もない。
ただひとつ、リアムが案じているのは、他の男に犯されてしまった蓮の心だった。
「やっ……嫌っ、いや…だ、リアム…リアム、助けて…!!」
「蓮……!蓮、しっかりしろ…!」
実をいうと3年前のあの日からしばらくの間、蓮はリアムとの性交渉の最中にも、酷く怯えて取り乱すことがあったのだ。
「リア…ム、リアム……ごめ…ん」
「大丈夫だ…俺が…俺が側に居るから」
相手はリアムだと、愛する番だと、そうと解っていても、蓮は思い出して泣いてしまう。身体の自由を奪われ、次々と犯される恐怖を思い出して、自分ではどうしようもないほど怯えてしまうのだ。
結局、蓮の心が癒されるまで、およそ2年もの月日を要した。
「ン……リア、ム…?」
蓮が次に目を覚ましたのは、目に優しい白い壁が四方を囲み、開かれた明るい窓から、優しい風が吹き込んでくる病室の中だった。
「リアム………ッ」
心配そうな顔で覗き込んでくる愛しい番の顔に、蓮はふわりと優しく微笑みかける。そんな彼の表情と様子に、リアムは心の底からホッと安堵の息を吐いた。
「ここ……病院…?」
それから少し、落ち着かなげな様子で室内を見渡す蓮に、リアムは彼の感じている不安を察して事情を説明する。
「ああ、大丈夫だ。ここは、ジャックらの知人の病院だから…」
「…そっか…なら、良かった…」
人とは異なる身体の事があるので、リアムも蓮も人間の病院は鬼門だ。まず真っ先にソレを案じているらしい蓮を安心させるため、リアムはこの病院の素性を知らせたのだ。
「リアム、大丈夫だよ。医者なら心当たりがあるから!」
蓮が気を失っている間に、リアム等は彼らの村のすぐ隣にある町の、小さな診療所へ駆け込んでいた。この診療所のまだ若い院長は名を長谷部一郎といい、その正体はジャックらと同じく混血人狼一族の末裔である。
長い長い間、人との混血を進めて来てもやはり、どうしても未だ人とは違う一族の治療や診察を、昔から何代も続くこの小さな診療所がすべて行ってきたのだ。
自分達の素性は何もかも承知の上。だから何も心配することはない、そうと察して蓮は、やっと安堵してベッドに深く身を預けた。
「リアムは…傷はもう平気…?」
「ああ。俺はちょっと貧血起こしたくらいで傷はもうねえよ」
証拠とばかりに借り物のシャツの袖を捲って見せるリアムに、蓮は嬉しそうに微笑んでしがみ付いてくる。
「リアム…リアム、良かった…ッ」
「ああ、蓮…蓮…ッ」
無事でよかった。会えてよかった。帰って来られて良かった。そんな様々な想いを抱くように、2人は強く互いの身体を抱き締め合い、何度も何度も口付けを交わし合う。が、
「あ……わ、悪い…」
「………リアム?」
突然、何かを思い出したようにリアムは、蓮の唇から離れて申し訳なさそうに謝った。抱擁を中断され『どうして?』と子犬の様に小首を傾げる蓮に、リアムはいかにも言い難そうにしどろもどろで言葉を紡ぐ。
「や…お前、あの……セオドアに、無理矢理……その」
「…………?」
「お…犯されたって……」
「…………え?」
そう、金色の狼セオドアとの戦いの最中、明かされた事実をリアムは思い出したのだ。
『蓮を抱いたよ』
戦闘を有利にするための挑発目的なのは明らかだったが、セオドアはリアムにそう言って彼を酷く狼狽させた。けれど、その事はもう良い。もはやどうにもならない、そもそも不可抗力であるから、彼に犯された蓮には何の罪も咎もない。
ただひとつ、リアムが案じているのは、他の男に犯されてしまった蓮の心だった。
「やっ……嫌っ、いや…だ、リアム…リアム、助けて…!!」
「蓮……!蓮、しっかりしろ…!」
実をいうと3年前のあの日からしばらくの間、蓮はリアムとの性交渉の最中にも、酷く怯えて取り乱すことがあったのだ。
「リア…ム、リアム……ごめ…ん」
「大丈夫だ…俺が…俺が側に居るから」
相手はリアムだと、愛する番だと、そうと解っていても、蓮は思い出して泣いてしまう。身体の自由を奪われ、次々と犯される恐怖を思い出して、自分ではどうしようもないほど怯えてしまうのだ。
結局、蓮の心が癒されるまで、およそ2年もの月日を要した。
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