人狼

RINFAM

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 そうして日々が経過し、セオドアが村を訪れるようになって数週間が経った頃。

 好青年を装っていた彼は突然に、その仮面の下の本性を露わにした。

「リアム??リアムは買い出しに行ってるよ」
 いつものように村を訪れ、山へ向かう途中で蓮の待つ家へ立ち寄ったセオドアは、リアムが夕方まで留守と知るやいなや、これまで見せていた顔とは違う本性を覗かせたのだ。
「それは丁度良かった…」
「え……?」
 垣根越しに話していた蓮へ笑い掛けると、セオドアは彼の腰までの高さしかない垣根を乗り越え、蓮のいる庭へと無言で侵入してきた。突然の行動に驚いていると、彼は蓮の細い手首を捕え、逃げを打とうとした身体を抱え込むように拘束する。
「ちょっと…なにすんの…ッ!?」
「実は私は賞金稼ぎでね…」
「え、え?…なに…??」
「蓮。君の本当の家族が、君を捜している」
 賞金稼ぎ?本当の家族??『言っている意味が解らない』と蓮は応え、離せと暴れるが、セオドアの力は強く、体も蓮の倍は大きくてビクともしなかった。
「こっそり君の髪の毛を貰ってDNA鑑定をしたが…その結果か一昨日出た。間違いなく君は、ダストン家の誘拐された子供だ」
「なに言って…俺は、そんなの知らな…」
 セオドアの言葉を半ば聞き流しながら、蓮は何とか彼の腕から逃れようとする。だが、蓮の腕は身体ごとセオドアの両腕で抱え込まれてピクリとも動かせなかった。
 そんな蓮の抵抗を愛しげな眼で見つめつつ、セオドアは彼にとってだけ重要な話を1人喋り続けた。
「君の生まれた家は欧州でも指折りの資産家でね…15年経った今も、赤ん坊の頃に攫われた君の行方を捜して、君の身柄や消息情報に莫大な賞金をかけているんだよ」
「…………っ!」
 それがどうした。そう言いたげな目で、蓮はセオドアを睨み付ける。そんな蓮の反応に『おや』と軽く驚き、意外そうな表情を浮かべてセオドアは問い掛けた。
「なんだ……君は知ってたのかい?」
「………っっ」
 そう、蓮は自分が、どこかからか攫われてきた子供だという事はとっくに知っていた。それは、人狼の村を滅ぼしたあの日、リアムが彼に教えてくれた事だった。

「蓮…あそこに蓮の本当の親が居る」
 自らの手で惨劇を引き起こした村を後にしたリアムは、山の上から遠くに見える町の光を指してそう言った。町へ行けばきっと自分を捜している家族に会える。だから、もし蓮が望むなら、人の町へ帰っても良いんだぞ、と。
「でも、あそこにはリアムが居ないよ」
「………蓮」
 リアムはこれから始まる宛てのない旅に、愛する蓮を巻き込みたくなかった。だから本音を隠し、離れたくない気持ちを押し隠して、蓮自身に選ばせようとした。
 町へ帰り、人として生きるか、リアムの雌として、共に生きるか、を。
「俺はリアムと居たい」
 だが、欠片も迷いもせずに、蓮はリアムを選んだ。本当の家族に会う事よりも、リアムと共に居る事を、愛するリアムと生きる道を選んだのだ。

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