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邂逅

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 『やっと見つけた……』

 放課後、特に部活などやっていなかった俺は、同じく帰宅部の康太と一緒に廊下を歩いていた。
「中央商店街のゲーセンにさ、新しいゲーム入ったらしいんだけど、恭平も行かねえ?」
「あ~あの、シューティングか??俺、昨日行ってみたけど、人一杯で出来なかったぞ」
「そーなのか??うーん…でもいいや、ちょっと見に行くだけ行ってみよ」
 中央商店街は俺の家(仮の、だけど)…というか喫茶店兼住居のある場所だから、中心街の外れに家がある康太よりは気軽に行ける。おかげで、大人気ゲームの情報をいち早く知ることが出来たのだが──正直、俺はソコまでゲームが好きな訳でもない訳で。

 ならどうして、さっそくゲームセンターへ行っていたのか?と言うと、新しい物好きな弟たちに強請られて付き添ったからだった。

「俺、このゲーム入るの、楽しみにしてたんだ~!」
 空とカオル、2人の弟(これまた仮の、だが)を伴って訪れたゲームセンターは、驚くほどの人ごみで溢れかえっていた。正直『こんな大勢の人間、いったい、どこから出てきたんだ??』と真面目に頭を傾げたくなる勢いだったのだけれど。
「画面も見ずに帰れるもんか!!」
「空ったら諦め悪いな~付き合うけど」
 ──と、それでも諦めきれずに、空とカオルはその小さな体を利用して、混みあう人々の隙間を縫って潜入し、お目当てのゲーム筐体の前まで行って来たようだ。…根性!
 だがしかし、やっとたどり着いたそこで、最後尾は『2時間待ちだ』と言われたらしく、大人しくすごすごと戻ってきてしまった。

 可哀相だけど、まあ、仕方ないよな。
 なにせ、2時間も待っていたら、夕飯の時間に遅れてしまうし。

「無念だが、飯の時間に遅れる訳にはいかねえ」
「遅れたら乾兄、怖いもんねえ…」
「………ははっ、確かにな」
 食事の時間に遅れた場合の、凄みある乾一さんの笑顔を思い出したら、俺でも怖くて仕方ないもんな。年少2人が恐れるのも無理はなかった。
 そんな訳で、結局、昨日は諦めざるを得なかったのだけれど、空はリベンジを誓っていたから、また近々、ゲームセンターを訪れる羽目になるんだろう。俺も興味なくもないから、別に良いんだけど。

「あ、おい、恭平ッ、見ろ見ろ。例の転校生だぜ」
「………え?」
 昨日のことを思い出してぼんやりしていたら、突然、康太にひそひそ声で話しかけられ我に返った。
「ああ……今朝言ってた…」
 康太の視線がさす方を見てみると、俺らの進行方向に女の子が1人で立っていた。誰かを待ってでもいるのだろうか?落ち着かなさげにキョロキョロと、その子の視線は辺りをさまよっている。
「可愛いよな~…恭平もそう思うだろ??」
「……まあ、そうだな…?」
 本人に聞こえぬよう小さな声で話しつつ近付いていくと、俺らの存在に気付いた彼女がこちらに視線を向けてきた。つぶらな黒い瞳に見詰められて、俺は訳もなくドキッとする。

 こうして近くから見てみると、より確かに彼女の可愛らしさが解った。なんというか、ウサギみたいな印象だ。その小柄な身長とスレンダーな体付きが、彼女をより幼く見せているのもあるだろう。

 だけどなんだろう??

 妙に胸がドキドキする。

 恋とか一目惚れとか、そんなんじゃなくて。

 あえて言うならそれは──

 いつもの、あの夢の中にいるような

 訳の分からない──恐怖

『やっと見つけた』
「──ッ!?」
 おかしな感覚に怯えながら、彼女とすれ違った瞬間、

 可愛らしい少女が、邪悪な笑みを浮かべた気がした。
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