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第26話 予想外の破滅ルート
しおりを挟む精霊祭三日目の最終日、俺は三人の女の子に取り囲まれていた。
「案ずるでないアラン。わらわは、お前さまがどんなに欲の深い男であったとしても、この身一つで受け止めてやるぞ? むろん、一度全て壊した後で……」
一人目は、マガルム帝国領のユズリハを治めるシノノメ一族の長女にして、祈祷師のシノノメ・フウコ。歳は十二歳で、若葉のような黄緑色の髪に金色の目をしている。ちらりと除く八重歯がチャームポイントで、あどけなさと大人びた感じが同時に存在する妖艶な美少女だ。
ゲーム本編ではルート次第で主人公パーティメンバーとして加入し、治癒や強化の魔法で仲間をサポートしてくれる頼もしい存在である。得意分野は木属性だ。
「ねえアラン……どうしてアタシ以外の女がアナタと親しげに話しているのかしら……? 昨日はあんなに愛し合ったのに、とっても不思議……。命が惜しくないのね……」
二人目は、同じく帝国領のサッバールという地で暮らす天才呪術師のナビーラだ。見た目は俺と同い年か少し歳上くらいなのだが、詳しい年齢を教えてくれなかった。艶のある真っ黒な髪と、深い藍色の瞳を持っているミステリアスな美少女である。
本来であれば彼女は奴隷階級だったのだが、その呪術の才能を駆使して嫌な主人を片っ端から呪い殺していった結果、特別な地位を与えられ自由に生きることを認められたのだという。もっとも、これは先ほど小耳に挟んだ噂なので真偽は不明である。嘘だといいな。
ちなみに、ゲーム本編ではフウコが仲間にならないルートを選んだ際に彼女が加入し、状態異常や弱体化の魔法で敵を呪い殺してくれる。得意分野は土属性だ。
「話くらいは聞いてあげる。――でも返答によってはぶっ飛ばすから、せいぜい覚悟しておくことねっ!」
三人目は、許嫁のドロシアである。彼女に関しては説明不要だと思う。気が強くて怒ってばかりだけど、本当は優しくて可愛い女の子だ。綺麗な赤紫色の髪と少し吊り上がった紅い瞳がチャームポイントである。
得意分野はもちろん火属性。
「あ、あはは……」
祈祷師と呪術師と魔術師の三人が相手か……しかも全員天才。流石の俺でも分が悪い。
死んだな。
「私のことっ、弄んだのねッ! 許さないんだからッ!」
「ち、違うよドロシアちゃん!」
「……いっぱいいっぱい呪ってあげる。ひひひひっ」
「ま、待ってナビーラちゃん!」
「少しくらい首が捻じ曲がっても、わらわが治してやろう」
「は、話せば分かるんだフウコちゃん!」
かくして、俺は美少女三人とニャンニャンすることになってしまったのだった。どうやら俺の人生はもうすぐ終わるらしい。
*
事の発端は精霊祭二日目に行われた『魔獣狩りの儀』という儀式である。
この儀式に参加するのは、マガルム帝国によって統治されている各部族から代表として選ばれた子供達なのだが……生粋の帝国人から選出される代表は『力比べの儀』の優勝者と決まっていたらしい。
先生達からまったく聞かされていなかったので、俺は何の準備や心構えも出来ていないまま儀式に参加することとなってしまった。
――とはいえ、先生達は俺に辞退させるつもりだったらしいからそこまで非はないがな。悪いのは危険な儀式であると知りながら出場したがった俺の方である。
あの時、素直に従っていればと悔やんでも悔やみきれない。
さて、肝心の『魔獣狩り』のルールだが、闘技場内に放たれた魔獣をより多く討伐した者が勝ちという単純明快なものである。魔獣ごとに貰える得点が決まっていて、基本的にはとどめを刺した人間がそれを取得できる。
「おにーさまぁ……死なないでーっ!」
「危ないと思ったらすぐに棄権してくださいっ!」
試合開始直前、応援に来てくれたプリシラとレスターが観客席で心配そうに叫んだ。今回の儀式は稀に死人も出るらしいので、二人とも心配してくれているのである。
ドロシアは昨日の疲れが祟ったのか自室で寝込んでいるらしく、その日は応援に来ていなかった。
なお、闘技場と観客席の間に強固な結界が張られているため、二人が魔獣に襲われるようなことは万に一つもない。
「ほお、随分と心配されておるようじゃのう? 昨日の大会の優勝者じゃと聞いたから警戒しておったが……案外大したことはないのかえ?」
「そんなに人のことばっかり見てないで、魔獣に集中した方がいいと思うなフウコちゃん」
「ほっほっほ、つれない奴じゃ」
この時点でフウコはかなり俺に絡んで来ていた。控室で待機していた時からずっとこんな調子だから、やや鬱陶しく思っていたことを覚えている。
フウコは原作の仲間キャラクターだったからそれなりに愛着があったのだが、少し嫌いになりそうだったぞ。
……結果的には、ここで嫌いになっておいた方が俺の寿命が延びたがな。
「じー……………………」
そしてナビーラの方は話しかけて来ることすらなく、ずっと俺のことを背後から見つめていた。原作ではこのゾッとする熱烈な視線を受けるのは主人公だったので、その苦労が何となく分かった。
「……呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う呪う」
「……………………」
もっとも、この時点で向けられていたのは純然たる殺意だったが。
そんなこんなで出場者が出揃い、いよいよ魔獣狩りが始まったのだが……問題が起きたのはここからだった。
結論から話すと、大会の終盤で放たれた魔獣が強すぎたのである。
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