幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第64話 戦争の匂い

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 ガウェインが目覚めてから数日後、魔王軍も邪神教と教国の二つを相手にしながら動き出す。
 先日医務室で皆と一緒に読んだ「魔王軍の方針」に描かれていた通りに各地へと調査部隊が送られていった。
 その中にはもちろんガウェインやシグマも含まれており、第3部隊隊長のスターチアも近隣の魔物諸国との外交のために留守にしている。
 驚くことに魔王軍と邪神教以外にも結構な数の魔物王国がこの世界には存在しているらしく、その辺の第3勢力達との渉外を重ねておくことが戦時中は重要だという。
 さもなければ、私たちがピンチに陥った時に思わぬ追撃を許すことになりかねないということらしい。
 
「でもさ、隊長達が不在って結構まずいんじゃないの?防衛的に大丈夫なわけ?」

 私は魔王城にある一室で思ったことを声に出す。
 外部との接触や情報収集が重要とはいえ、本部の守りを手薄にしておくのは如何なものなのかというわけである。
 私の発言などお構いなしに仕事が進んでいく政治経済部であるが、手を動かしながらもアドルが疑問に答えてくれた。

「多少の危険はありますが、城に残っている魔物たちも少なくありませんしドレイク隊長もいるから大丈夫です」

 第二部隊隊長の竜人ドレイクが残っているから大丈夫であるというアドル。
 私は彼が戦闘しているところを見たことはないが、ドレイクの部隊で訓練させてもらっていたガウェインから話を聞いたことはあった。
 1対1の戦闘ならばシグマが猛烈に強いらしいが、多数を相手取るときの戦いならばドレイクに軍配が上がるらしい。
 というのも、竜人である彼は戦闘時に「竜化」することで巨大化することができるという話であった。

「ドラゴンの隊長さんはやっぱり強いのね」

 前回の調査任務の時にシグマとニャルラの戦闘能力に驚かされた私だが、まだまだ魔王軍に眠っている凶悪な戦力については未確認である。
 同じく第3部隊の隊長であるお人形さんもガウェイン曰く「凶悪」な戦闘能力を持っているらしく「人は見かけによらないものね」と独り言つ幼女であった。
 頬に手を当て、部屋にある大きな窓からグレイナル山脈の方を見つめて呟く私に対して「知力の方も皆さん強化していってくださると助かるのですがね……」と嘆くアドル。
 私たちの後ろで少数精鋭の魔物たちが鬼の形相で書類や地図に印をつけている様子を見ると、アドルの発言にも「確かに」と思わざるを得なかった。

「それで、教国と邪神教の動きはどんな感じなのかしら?」

 執務机で頭を悩ませている魔王とその横に立つアドルに私は問いかける。
 ガウェインが起きてからの数日間は私も調査の疲れをとるという名目で書類整理や外交資料の作成などを手伝っていたため、軍事的な話にも興味がでてきたのだった。
 まあ、一応魔王妃でもあるので知っておかないとならないのだけども。

「既にシグマとヴァネッサの部隊だけでも100以上の魔物部隊を殲滅したと報告があった」

 どこか他人事のように言う私の態度に少し苛ついた様子の魔王がそれに答えてくれた。
 彼の口から出た情報に私は唖然とする。
 部隊が100以上ということなので、既に数百を超える魔物がシグマたちの手によって殲滅されていることになる。
 私が参加した調査任務とは既に規模が違った。
 しかもシグマ隊だけでその数なので、必然的に敵味方ともに既に結構な犠牲が出ていることになる。

「ここ数日間におけるスピード感とスケール感が凄まじいわ……」

 間抜けに口を開けてたまげている私を見たアドルは「教国からの攻撃ももちろんあります」と更に情報の追撃を入れてきた。
 彼の話によると「人間を殺す」のは現段階ではあまり好ましくないので「拉致」して情報を抜き出しているという。
 何気ない感じで恐ろしいことを聞かされた私の額からは冷や汗が垂れるのだった。
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