幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第38話 再び森の中

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 目の前に現れた崖を勢いよく駆け下りた私たちを待つのは「大河」であった。
 もしかしなくてもこれを渡るという事実に私は更に落ち込む。

「それじゃあ、川を渡るぞ」

 腕をブンブン振って楽しそうに言うシグマに私とガウェインは「やめてくれよ……」と声を絞り出す。
 既に川の上に「立っている」ニャルラも楽しそうに川の上を歩いている。
 その様子を見た私とガウェインはてっきり「泳いでいく」ものだと思っていたので、虚を突かれるのだった。

「水上歩行も崖下りと同じ要領だ」

 ガウェインにアドバイスらしきものを投げかけるシグマは、私を腕に抱えたまま川の上を走りだす。
 邪神教を復活させないためにも、先を急ぐのだというシグマの言い分にガウェインも観念したように川へと一歩踏み入れた。
 最初はびちゃびちゃと水を跳ね散らかしていたガウェインも、だんだんとコツをつかんでシグマ達に遅れることなくついてくる。
 ワタアメを抱える私は、崖下りに比べると恐怖をあまり感じない水上歩行のほうが楽だと思うのだった。


----


 長いこと走ったのち、川を越えた私たちはまた崖を登るのだった。
 降りたときと同じように岩肌を蹴りながら登っていく一同。
 ガウェインも問題なくついてきて、無事に崖を登りきったところで再び森が目の前に広がる。

「また森の中を走るのね」

 私はシグマの腕の中で独り言つ。
 シグマが言うにはこの森を抜けたところに「廃城」があるという。
 いよいよ目的地につくというわけで、私たちの間に緊張感のある空気が流れるのだった。
 ここまで数日間野営を重ねて森を駆け、山を越えてきた最大の理由である「調査」がようやく果たされる時なのである。

「しかし、本当にあなたたちは元気ね」

 ただシグマの腕の中でのんびり運ばれているだけの私が言う。
 私を抱えて走るシグマや巨大な荷物を背負っているニャルラ、鎧を着こんで剣と盾を持って走るガウェイン。
 3人ともいくら武人であるとはいえ、幼女の私からすると信じられない体力である。
 それに対してガウェインは「昔のままでしたら無理でした」と答えた。
 魔王軍に来てからの修行とシグマ達の指導あってのものだと言う彼にシグマ達も「殊勝な心掛けだ」と褒める。


----

 森の中を進むことしばらく、私たちは敵と遭遇することもなく軽快に歩みを進めていた。

「邪神教の魔物も出てこなくなると、少し暇になってしまうのう」

 このまま順調に進めば明日にでも「廃城」にたどり着けるとシグマは言った。
 道中の暇つぶしに雑魚が出てきてくれないかと言うシグマに、私とガウェインは「雑魚はわざわざ死にに来ないでしょう」と思ってしまう。
 そんな平和な空気の中、私は調査が終わった後も同じルートでも戻るのかしらとあれこれ考えていた。
 何気なく進行方向から目をそらして横を向いていた私は、とんでもないものが視界に移ったことに気づく。

「ちょっと止まって!!ねえ、あれってもしかして……」

 突然声を荒げてストップと声をかける私に、シグマをはじめとしたメンバーは「何事だ!?」と困惑する。
 私は目に映った景色が信じられず、ドクドクと胸の鼓動が早まっていくのを感じた。
 魔王妃から停止命令が下ってその場に一時停止した一同は、私が指さすほうを見て息をのむ。

「お嬢様……あれは……」

 私と同じように目を見開いて驚愕した様子のガウェイン。
 彼の隣に立ち、同じように目標物を見ているニャルラは「けっこういっぱい落ちてるもんなのかニャ?」と地面に突き刺さったものを呑気に見ていた。
 ニャルラの質問に対し「いや、巨人族は大戦時に誰一人として同じ武器を持つものはいなかった」とシグマが答える。

「じゃあ、あの「ハサミ」は私たちが道中で見つけたものと同じものってことね?」

 私は自分で言いながら、その言葉の意味を理解して震える。
 カチャリと鎧の金属音を鳴らして膝をついたガウェインも「そんな……まさか……」と私のほうを見た。
 流石に頭脳が弱いとヴァネッサに称されていたシグマでさえ「ああ、同じところを歩かされているのう」と起きている事態に気づく。
 だが、震える私やガウェインとは違い、意外にもシグマは冷静であった。

「それじゃあ、「隠蔽魔法陣」を探しに行くニャ」

 そして、同じくあっけらかんとした様子で私の肩をポンと叩くニャルラお姉さんであった。
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