幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

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第20話 魔王と魔王妃

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「邪神教?なにそれ?」

 アドルの口から出た物騒な言葉がすごく気になる私。
 だが、質問する私に対して、魔王が横から「お前には関係ない」と言う。
 魔王の突き放すような言い方にイラっと来た私はまたしても怒りをあらわにするのだった。
 いち早く危険を察知したワタアメは私の腕から抜け出し、アリシアの膝の上へと非難する。

「魔王妃ならば、魔王の悩みについて一緒に考えるものなんじゃないのかしら?」

 私を魔王妃にするつもりで連れてきたのではないのかとキレる私。
 ちょっと後ろにのけ反る魔王が、両手をひらひらさせて「お前は魔族について何も知らないからな」と呆れたように言う。
 書庫に入っていいから少しは勉強してから出直せと怒られる私であった。
 たしかに、魔王の言う通り私は魔族についての知識がほとんどない。

「アドラメレク、忙しいところ悪いがこいつにいろいろ教えてやってくれ」

 アドルに向かって、私に対する態度とは打って変わって丁寧に頼む魔王。
 その対応の違いに少し腹が立ちつつも「書庫」でアドルにいろいろ教われるという事実に歓喜した。
 かつて公爵家の書庫に引き籠っていた私にとっては、「書庫」は「厨房」と同様に特別な場所なのである。
 降ってわいた幸運に喜びを隠せない私は「怒ったと思ったらニヤニヤする情緒不安定な王妃」だと噂されるのだった。


----


 魔王から「勉強しろ」と言われて歓喜した私は、周りの魔族に「魔王妃様って個性的だよな」と言われながら食堂を後にしたのだった。
 魔族は基本的に勉強があまり好きではないのである。
 そして、一日の予定がすべて終わった私たちは部屋へと戻った。
 私たちは用意された寝間着に着替え、程なくして就寝する。

 翌朝、まだ日も昇りかけの早朝に目覚める私。
 その傍らには、眠たそうに欠伸をするワタアメが転がっていた。
 彼女も私の魔力は安心するのだろうか、寝るときも布団に入ってきたのである。
 抱き心地もよく、ぬいぐるみのような感覚で接する私は完全に幼子のそれであった。

「おはようございます、お嬢様」

 眠たそうな様子は特にないアリシアが私に挨拶する。
 彼女とガウェインも「オーキンスとの約束」についてきてくれるらしく、私と同様に早起きしたのだった。
 フィジカルエリートであるメイドと騎士は、これくらいの早起きは特に苦でもないらしい。
 彼らの余裕っぷりを見て、もやしっ子幼女の私にも少し体力を分けてほしいと思う限りであった。

 早起きな執事たちに見送られ、私たちは屋敷を後にする。
 城内の廊下はまだ魔物たちも疎らであり、すれ違う者たちに逐一挨拶をしていく。
 魔王妃とはやはり憧れの地位なのか、私に声をかけられたものは皆嬉しそうにしていた。
 やっぱり、家臣とのコミュニケーションは大事だからね。
 できるだけ魔物たちとも接触していこうと思う私であった。

 厨房につくとオーキンス達は既にせわしなく働いていた。
 開いている扉をくぐる私たちに気づくと「魔王妃様、朝早くからわざわざすみません」と謝るオーキンス。
 それに対して「魔王様も起きて働いているみたいだしねえ」と笑いながら言う私。
 普段偉そうにしてるだけあって、魔王は国民のためにきちんと働いているようである。
 これに関しては純粋に感心する私であった。

 私はオーキンスから今日の献立を聞き、それにあった料理法や工夫の余地などについてコック達にレクチャーしていく。
 ガウェインも「俺は基礎体力が足りていない!」と昨日の訓練から反省したらしく、重たい材料などを運んでトレーニングに励んでいた。
 殊勝な心掛けである。
 アリシアも厨房のコック達を手伝いながら世間話をすることで、魔王軍の日常について情報収集していた。
 こちらも、なんとも優秀なメイドである。
 私なんかにはもったいないくらいだ。
 ちなみに、ワタアメは厨房にある椅子の上でスヤスヤと眠っている。


---


「なかなかうまくいかないな」

 出来上がった朝食を食べながら、私は思ったよりも料理のコツを掴めないコック達について悩んでいた。
 というのも、魔物と人間では生まれ持った「繊細さ」が違うらしいということが分かったからだ。
 つまり、感覚のきめ細かさのようなものが異なるということである。
 それゆえ、細かい味付けや火加減が難しいのだという。

「まあ、こればっかりは頑張って覚えてもらうしかないよなあ」

 その分だけ力強かったり、体力がすごかったりするので「魔物」であるからと言って「人間」よりも一概に不利であるとは言えない。
 なので、彼らにもおいおい成長してもらえればそれでいいのだ。
 いずれは「素晴らしいコック」として独り立ちしてくれることだろう。

 私は忙しそうにさっさと食堂を後にする魔王を横目に、これからの教育プランを考えるのであった。
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