幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

文字の大きさ
9 / 91

第8話 魔王城の一室にて

しおりを挟む


 黒翼の銀髪美青年系の魔物であるアドルことアドラメレクによって、私たち3人は魔王城の一室に通される。
 明らかに他の部屋とは異なる豪奢な扉を抜けた先には、公爵家のお屋敷がそのままスッポリとはいるようなサイズの空間があった。
 そして、庭園の中央にはヴィクトリアン・ハウスのような様式の建物がある。
 というかこれ、部屋って言っていいのだろうか?

「すごいですね・・・・・・」

 目の前に広がる庭園とお屋敷に、アリシアもガウェインも唖然とする。
 室内に屋外があって、更には空まであるという事実に私も驚かざるを得ない。
 私たちの様子に気づいたアドルは「魔王城は人間で言うところの国のようなものですからね」と答えた。
 彼の話によれば、魔王軍は魔王誕生のたびに魔物たちが集って群れを成すというシステムらしい。
 そのため、一つの土地に住み着いて国を作るといった考え方ではないのだ。

「それじゃあ、この魔王城中にこういった空間がたくさんあるわけかしら?」

 お屋敷へと続く石畳を歩きながら、私はアドルに質問する。
 それに対してアドルは「いえ、こちらのようにお城の一部をくり抜いたような場所は少ないです」と答えた。
 今私たちがいる空間は所謂「中庭」のような構造をとっており、ドーナツの様にお城の廊下の外壁がそのまま壁として使われている。
 さっきすれ違った犬部隊の宿舎なんかは、「離れ屋」のように少し外を歩いて建物に入るというシステムだという。
 ただ、お城が「異常にデカい」ことにより城の外郭が実質国境のようになっているというわけだ。

「それじゃあ、城塞都市国家ってことになるわけね」

 アドルの話を聞いた私が、なるほどといった様子で人差し指を口に当てて言う。
 その仕草はなんだか悪戯を企む子供のようであったらしく、アリシアが温かい目でこちらを見つめていた。

「大雑把に言うとそうなりますね」

 アドルが城内に用意された私の屋敷の扉に手をかけながら答える。
 扉の向こう側には、お屋敷の使用人たちが私たちを待っていた。
 玄関の端から延びるように、赤い絨毯を挟んで並び立つ使用人たち。

「お待ちしておりましたメルヴィナ様、私はこのお屋敷のハウス・スチュワードを任された「ラビアンローズ」と申します。以後お見知りおきを」

 使用人たちの中でもとりわけ背の低いウサギの魔物が、私の前で深々と礼をする。
 自らを執事長であると申し出た執事服のウサギさんは、幼女の私よりも少しばかり背が低かった。
 そのなんとも可愛らしい容姿に、生前遊んでいたおもちゃのなんとかファミリーを思い出す。

 様々な種族から構成される魔族のメイドたちにお辞儀される中、私たちは部屋へと案内された。
 こちらの建物は魔王城とは違い、人間サイズに作られた廊下と天井である。
 あたりを見回しながら歩く私に、ガウェインが「魔王城ってすごいところですね……」と感想を漏らしていた。

「こちらがお部屋になります」

 執事長のラビアンローズが扉の前で立ち止まる。
 謁見の間から歩くこと数十分、私たちはようやく客間へとたどりついたのであった。


----


 魔王城の中に用意されたお屋敷の一室で一息つく3人。
 豪華とはいっても、もともと公爵家で暮らしていたのであまり気にならないでくつろぐ私たち。
 この城にやってきた時から感じていた疑問を、私は二人にぶつけてみることにした。

「ねえ、魔王城ってどこにあるかしらね」

 魔物たちに「転移魔方陣」で連れてこられた私たちは、魔王城がこの世界のどこに存在しているのかが分からないのである。
 アリシアやガウェインも現在地の見当はつかないらしく、あとでラビアンローズに聞いてみようと思った私であった。
 ただ、これだけ大きな城が存在する以上は人間に知覚されていてもおかしくはないはずである。
 それなのに、人間国家では「魔王」などというワードを聞いたことが無い。
 私たち人間に捕捉されないようにプロテクトみたいなものが魔王城にかけられているのかしら?

 考えても答えは出ないのだが、気になったことはとことん気になり始めてしまう私なのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...