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第2話 着飾られる幼女
しおりを挟む名医ゲンジによる「アルテミシア封印」も成功し、無事に誕生した私は「メルヴィナ」と名付けられた。
メルヴィナとは、かつて「人間」と「魔族」の和平を実現した神話の女神の名である。
人間の器の中に、強大な魔力を宿しながらも生きる宿命を与えられたのだ。
あれから時は流れていき、私は18歳となる。
健やかに育つも「アルテミシア封印」による延命により、公爵令嬢としての人生に少なくない影響が出ていた。
不幸にも身長が120㎝程度で成長を終え、生涯「幼女」のまま生きなければならなくなってしまったのである。
「しかしまあ、せっかく可愛いのになんだかなあ・・・・・・」
公爵家のお屋敷の自室でつぶやく私。
大きな姿見の前で独り言つ私は今、幼いころからの専属メイドであるアリシアによって、妹シャルロットの結婚式典参加のための着付けをされている。
鏡に映る小さな女の子は、今まで私が見たことのあるどんな美少女よりも綺麗なお人形のようであった。
肩のあたりまで伸びる青みがかった黒い髪、透き通る水色の瞳は神話に描かれる魔女「アルテミシア」に似ているという。
「お嬢様!大変よく似合っておりますよ!」
私の肩に手をのせて満面の笑みでそう言うアリシア。
彼女のその様子は、飼い主にくっついて尻尾をブンブン振る小型犬のようであった。
白に近い綺麗な金の長い髪を後ろで纏め、目はパッチリと大きく、悔しいが胸も大きい。
アリシアは今年で21歳になるのだが、平均と比べても背が低い彼女は少し幼く見える。
まあ、同年代の平均よりもぶっちぎりで小さく幼い私が指摘するのは滑稽な話だが。
彼女が選んだ服を着せられた私は、体をひねるように動かして全体像を確認する。
頭に装着されたのはサンバイザーのように広がる、黒いつば広のヘッドドレスであった。
肩から胸にかけて垂れる三角の白いカラーにはレースのような装飾が施され、下に着ている黒いジャンパースカートとよく馴染んでいる。
美しく伸びる細い脚の先には白い靴下と黒いショートブーツ。
まあ、あれだ、所謂ゴスロリ系の衣装だ。
「本当に可愛らしいわ!!これでパーティー会場の皆さんもメルヴィナ様に夢中ですわ!!」
アリシアを筆頭に、着付けを担当している侍従たちは目にシイタケ模様の光を浮かべて「尊い!」と騒がしい。
私は完全に着せ替え人形状態である。
確かに、前世が成人女性である私から見ても眩くて直視できないレベルで美形だった。
100年に一人の美少女がかすむレベルである。
惜しむらくは、これ以上伸びることのない身長と凹凸の無い体つきであった。
お人形のような扱いも、毎日のアリシアによるお肌手入れによって既に慣れたものである。
完璧な容姿の美少女として完成した私を連れて、アリシアは部屋の外へと出た。
扉の前で待っていた青年騎士のガウェイン卿が「お嬢様・・・・・・」と私の美しさに息をのむ。
未だ少年の面影を残す、燃えるような短い赤髪を立てたイケメンナイトのガウェイン。
彼は私が幼いころから「専属騎士」として私に仕えてきた。
初めて会った時から、私と目を合わせると緊張したような仕草を見せる。
大分慣れたとはいえ、それは今でも変わらない。
「どうしたのガウェイン?顔に何かついているかしら?」
いつもよりも大きく驚いて固まっているガウェインに対して、どうしたのかと尋ねる私。
するとガウェインは「い、いえ、何でもありません!」と慌てて佇まいを改める。
その横ではアリシアが柔らかな笑みを浮かべて楽しそうにしていた。
「それじゃあ、パーティ会場へ行きましょうか」
こうして準備の整った私たち3人は、後方で多くの侍従達に見送られながら妹シャルロットの結婚式典の会場へと向かったのだった。
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