14 / 77
14
しおりを挟む
脅迫して犯したのに、セックスが気持ち良かったなんて言われてしまったら、ヤッたことはオレのしたかったことにはなってないと気づいてしまった。
「屈服したじゃねえか。セックスしただろ?」
「アンタが悦んじゃったら意味ねえの。わかる?イヤだ、ヤメテっていうのを……無理矢理じゃねえと」
卑怯な手を使って手に入れたなら、とことん嫌われてしまったほうが楽だ。屈辱をまったく感じてくれないのなら、もっと更に酷いことをしなくてはという気持ちになってしまう。
……これ以上、オレはそんなことはしたくないのに、だ。
「どうすりゃ、アンタは嫌がってくれるんだ?」
「……富田君は、俺に嫌がらせしてえの?」
吐くような思いで告げた言葉に、意味が分からないといった表情で眞壁はオレを緑の目で見返す。
どんなに犯しても屈辱を感じてはくれないのなら、一体これからどうすればいいのだろう。
「そうだよ。……じゃあ、眞壁。アンタ、オレのオンナになれ」
そうだ。いっそのことこの男を自分のモノにしてしまえば、自分のモノだと思うことができれば腹が立たないのかもしれない。
「え……オンナ?俺が着れるスカートあるかな、リップとか化粧とか……塗ったらいいのか?」
「がふっ、げほげほ、ちょ、まてまて、アンタ、何考えてんだ?」
首を傾げた眞壁が、どうしたものかと口にした台詞にオレは再度むせて咳き込んだ。
女装しろっていう話では、断然ない。見たくもない。
「いや、女になれっていうからさ。スカートでもはいたらいいのかなって」
「それは、断じてオレも見たくねえ。それにアンタが着れるようなそんなでっけえ服はねえだろ」
イケメンではあるが、その鍛え抜かれた肉体で女装したとしても、需要はなさそうである。
オレの言葉に眞壁はうんうんと頷いてそれもそうだなと納得したように返事をした。
「だよねぇ、オーダーメイドするしかないし、公共のひとたちに迷惑なんじゃないかなあと思うんだ。客観的に」
「だーかーら、セックスだけじゃなく、オレのモンになれって言ってるんだよ」
「富田君のモノ?」
合点がいかないような表情でオレを戸惑ったように見返してくる。ちゃんと言葉を選ばないとなかなか眞壁は理解してくれないようだ。
「だから、オレの……恋人になれって…………コト」
勢いで口にした単語の響きが甘すぎて、気恥ずかしくなってもごもごと声が小さくなってしまう。
「コイビト?……オマエ、俺のこと嫌いじゃねえの?」
「……嫌いだ」
違う。…………ずっと、あこがれていた。
憧れが失望に変わった時に、それと一緒に多分もっと違うものも生まれたような気がする。
だから彼に対しての苛立ちばかりが募って仕方がなかった。
オレが精一杯の告白をしたのに対して、眞壁はひどく驚いたような顔をして見つめている。
まあ、そうだよな。驚かないわけがない。
「それ、ホントに俺への嫌がらせなのか?オマエ自身への嫌がらせじゃなくて」
不思議そうな顔で返ってきた答えは、オレの言葉に対しての問いかけ。
そりゃそうだ、オレは眞壁に嫌いだと言っておいて、まったく正反対の提案をしているのだ。
「コイビトは、恋してねえとなれねえんだぞ」
心底不思議そうな顔をして、首を傾げて真意をさぐるようにオレをじっと見てくる。
もし、オレが眞壁を好きだと言えば、眞壁はオレにいい返事を返してくれるのか?そんなこと、ねえだろ。
オレは、コイツが嫌いだ。大嫌いだ……。
「アンタなんか…………嫌いだ。だからオレは……アンタをオレのオンナにしてえんだよ」
憧れすぎて、追いつけねえから、大嫌いだ。
ずっと、ずっと前から、追いつきたくてしょうがねえくらいに、恋焦がれている。
だけど、そんなこと言えっこない。
ぎゅうっと目を瞑ると、眞壁の顔がすっと近づいてくる。
何か言おうと口を開いた途端に、眞壁の唇が覆いかぶさってきて、カレー味の舌先がオレの唇へ押し込まれる。
角度を変えてためすように唇を吸い上げられて、オレもその舌をなぶるように舐め返した。鼻から漏れる呼気は熱く、外れた口元が緩くなって唾液が溢れていた。
「………なあ、ドキドキしたか?」
ゆっくり離れて糸を引く唾液を眺め、眞壁は目を伏せた。
「なんだよ、急に」
伸ばされた掌が胸に当てられて、訳が分からずオレはドキドキしてないと首を横に振った。
破裂しそうに心臓がバクバクいっていて触れている掌にも伝わっているのにもかかわらず、分かるような嘘を吐いた。
「キスしてドキドキすんのが、恋だよ。……キスしてドキドキもしないのに、お付き合いはできません」
オレの答えにすっと緑の目が細められ、真面目な顔で拒否を返された。
オレがここまで言ってんのに、悟るくらいのことしろよ。
どうして、コイツはわかんねえんだよ。
イライラがバンッと限界を超えた。
「だったら…………もうイイ。アンタなんか、オレの精液便所にしてやるから」
オレはガンッと床を蹴り、眞壁のでかい体を床に押し倒す。
手に入らないなら、このまたぶっ壊してしまえばいい。
オレの気持ちもこいつ自身も。
凶暴なキモチばかりが先走って、のしかかったその体を押さえつけた。
「何、キレてんだよ…………」
ずっと分からないままでいればいい。
「アンタをオレの性奴隷してやるって言ってンだよ。毎日ハメ倒して、ぶっ壊してやる」
悔しくて仕方なくて覆いかぶさって肩を揺すると、眞壁はオレを跳ね返すこともなく、ぼんやりした目つきで見上げている。
「っ、おい、聞こえてるのか」
力なくぐったりとした様子に不安になって問いかけるが、呼吸をせわしなくさせて、眞壁は辛そうに眉を寄せた。
「……ゆか………は………やだ……よ……」
ぜいぜいと呼吸の合間に漏らす声も、すっかり掠れてしまっていて聞き取りづらい。組み敷いた体が抱いた時よりもずっと熱をもっているのがわかる。
汗ばんだ額に手を当てると。燃えるように熱く汗ばんでいた。
「……熱、あンじゃねえか。何でいわねえんだよッ」
必死で声をかけるが、焦点は合わないようで朦朧としている様子だった。
床に転がしておくわけにはいかねえな。
眞壁の重たい身体を抱き上げてベッドに転がして、衣服を脱がせた。肌にびっしり汗をかいて、だらだらと筋肉質な体の上を伝い落ちていく。
「なあ……やさ…………しく、シて……」
「バカヤロ、すっげえ熱出してる奴を痛めつけるような男じゃねえ。みくびンじゃねえよ」
思わず怒鳴りつけてしまったが、あんな卑怯な真似をしたオレに信用なんてあるはずはないなと思いなおす。
さっき出しておいたタオルで体を拭い、ぜいぜいと繰り返す呼吸が尋常じゃなくて、オレも変な冷や汗が出る。
さっきのセックスで内臓が傷ついたのか、クスリの後遺症なのかどちらかで、体が発熱しているのだろう。
体力も相当使ったと思うし、安静にしておくのが普通なのに、なんで平気そうな顔してメシとか用意してんだ、こいつ。
ありえねえし、無茶しすぎだろ…………。
心配で、仕方がなくなる。
あんなに怒りに任せて罵倒していたというのに、だ。
この感情が何なのかは、鈍感なオレにだって分かる。
分かりたくもないのだが、分かってしまう。
体を繋いだから起こる情なのか、それとも元々持っていたものなのかどうかは分からない。
オレはずっと、欲しかった。この男にオレのことを認めて欲しくて仕方がなかった。
オレの存在を憧れの人に認めてもらいたくて、近くにいてもかなわないから、外に出た。それなのに、外に出たって、何一つ変わらなくてイラついて仕方がなかっただけだ。
人の家の洗面所を勝手に使わせてもらうのは気が引けたが、バケツを見つけて水を汲んでくると、タオルを濡らして眞壁の頭の上を冷やすように乗せた。
オレも他の奴のように、眞壁さんって呼んで慕っていた頃もあった。あんな風に純粋に慕っていられたらよかったのに。
熱にうかされながら、優しくして欲しいと言われて、どんなに酷いヤツだと思われているんだろうと思うと、酷く悲しく感じた。
脅迫までして、身体を自由にして穢したのは自分自身なのに、勝手な言い草である。
オレは、この人を好きなのだ。
そんなことも素直に言えないくらいに気持ちは歪んでしまっているけど、好きだと思っているのは間違いない。
だからさっきは拒絶されて、感情的になった。
こんな卑怯な男なんて拒絶なんかされて、当たり前だというのに。
何度かタオルを取り替えていると、ぼんやりと眞壁はオレを見上げる。
「……きもち、いい……。ありが、と、な……」
熱で潤んだ目でそんなことを言われると、最中のことを不謹慎にも思い出して下半身が熱をもつ。
「……いいから………寝とけよ」
ごわごわの金髪を撫でると安心したように、目を閉じてモゴモゴとつぶやく。
「………Danke …………schon(ありがとう)」
また、天使語かよ……。なんだよ、ダンケシェってなんだろう。起きたら聞いてみるか。
この人がどうして、最大の人数を誇る派閥をもっているのか、言われなくてもわかっている。
飄々としていて掴みどころがないのに、仲間想いで仲間のためなら単身どこにでも駆けつけるし、報復だって厭わない。
それでいて威張ることもなく、無邪気で少し抜けていて人好きのする性格をしている。
そんなことは、昔から知っている。知ってるっていうのに。
始めたゲームは、ケリをつけるまで終わることはできない。
自覚したところで、本当に彼を手に入れることなどできないし、期待なんか……もう、できない。
だったら、それなら……。
この体だけでもオレのモノにしてしまっても、いいよな。
視線の下で漸く落ち着いたように眠りに落ちた眞壁を見下ろして、その手をぎゅっと掴んで決意を新たにした。
「屈服したじゃねえか。セックスしただろ?」
「アンタが悦んじゃったら意味ねえの。わかる?イヤだ、ヤメテっていうのを……無理矢理じゃねえと」
卑怯な手を使って手に入れたなら、とことん嫌われてしまったほうが楽だ。屈辱をまったく感じてくれないのなら、もっと更に酷いことをしなくてはという気持ちになってしまう。
……これ以上、オレはそんなことはしたくないのに、だ。
「どうすりゃ、アンタは嫌がってくれるんだ?」
「……富田君は、俺に嫌がらせしてえの?」
吐くような思いで告げた言葉に、意味が分からないといった表情で眞壁はオレを緑の目で見返す。
どんなに犯しても屈辱を感じてはくれないのなら、一体これからどうすればいいのだろう。
「そうだよ。……じゃあ、眞壁。アンタ、オレのオンナになれ」
そうだ。いっそのことこの男を自分のモノにしてしまえば、自分のモノだと思うことができれば腹が立たないのかもしれない。
「え……オンナ?俺が着れるスカートあるかな、リップとか化粧とか……塗ったらいいのか?」
「がふっ、げほげほ、ちょ、まてまて、アンタ、何考えてんだ?」
首を傾げた眞壁が、どうしたものかと口にした台詞にオレは再度むせて咳き込んだ。
女装しろっていう話では、断然ない。見たくもない。
「いや、女になれっていうからさ。スカートでもはいたらいいのかなって」
「それは、断じてオレも見たくねえ。それにアンタが着れるようなそんなでっけえ服はねえだろ」
イケメンではあるが、その鍛え抜かれた肉体で女装したとしても、需要はなさそうである。
オレの言葉に眞壁はうんうんと頷いてそれもそうだなと納得したように返事をした。
「だよねぇ、オーダーメイドするしかないし、公共のひとたちに迷惑なんじゃないかなあと思うんだ。客観的に」
「だーかーら、セックスだけじゃなく、オレのモンになれって言ってるんだよ」
「富田君のモノ?」
合点がいかないような表情でオレを戸惑ったように見返してくる。ちゃんと言葉を選ばないとなかなか眞壁は理解してくれないようだ。
「だから、オレの……恋人になれって…………コト」
勢いで口にした単語の響きが甘すぎて、気恥ずかしくなってもごもごと声が小さくなってしまう。
「コイビト?……オマエ、俺のこと嫌いじゃねえの?」
「……嫌いだ」
違う。…………ずっと、あこがれていた。
憧れが失望に変わった時に、それと一緒に多分もっと違うものも生まれたような気がする。
だから彼に対しての苛立ちばかりが募って仕方がなかった。
オレが精一杯の告白をしたのに対して、眞壁はひどく驚いたような顔をして見つめている。
まあ、そうだよな。驚かないわけがない。
「それ、ホントに俺への嫌がらせなのか?オマエ自身への嫌がらせじゃなくて」
不思議そうな顔で返ってきた答えは、オレの言葉に対しての問いかけ。
そりゃそうだ、オレは眞壁に嫌いだと言っておいて、まったく正反対の提案をしているのだ。
「コイビトは、恋してねえとなれねえんだぞ」
心底不思議そうな顔をして、首を傾げて真意をさぐるようにオレをじっと見てくる。
もし、オレが眞壁を好きだと言えば、眞壁はオレにいい返事を返してくれるのか?そんなこと、ねえだろ。
オレは、コイツが嫌いだ。大嫌いだ……。
「アンタなんか…………嫌いだ。だからオレは……アンタをオレのオンナにしてえんだよ」
憧れすぎて、追いつけねえから、大嫌いだ。
ずっと、ずっと前から、追いつきたくてしょうがねえくらいに、恋焦がれている。
だけど、そんなこと言えっこない。
ぎゅうっと目を瞑ると、眞壁の顔がすっと近づいてくる。
何か言おうと口を開いた途端に、眞壁の唇が覆いかぶさってきて、カレー味の舌先がオレの唇へ押し込まれる。
角度を変えてためすように唇を吸い上げられて、オレもその舌をなぶるように舐め返した。鼻から漏れる呼気は熱く、外れた口元が緩くなって唾液が溢れていた。
「………なあ、ドキドキしたか?」
ゆっくり離れて糸を引く唾液を眺め、眞壁は目を伏せた。
「なんだよ、急に」
伸ばされた掌が胸に当てられて、訳が分からずオレはドキドキしてないと首を横に振った。
破裂しそうに心臓がバクバクいっていて触れている掌にも伝わっているのにもかかわらず、分かるような嘘を吐いた。
「キスしてドキドキすんのが、恋だよ。……キスしてドキドキもしないのに、お付き合いはできません」
オレの答えにすっと緑の目が細められ、真面目な顔で拒否を返された。
オレがここまで言ってんのに、悟るくらいのことしろよ。
どうして、コイツはわかんねえんだよ。
イライラがバンッと限界を超えた。
「だったら…………もうイイ。アンタなんか、オレの精液便所にしてやるから」
オレはガンッと床を蹴り、眞壁のでかい体を床に押し倒す。
手に入らないなら、このまたぶっ壊してしまえばいい。
オレの気持ちもこいつ自身も。
凶暴なキモチばかりが先走って、のしかかったその体を押さえつけた。
「何、キレてんだよ…………」
ずっと分からないままでいればいい。
「アンタをオレの性奴隷してやるって言ってンだよ。毎日ハメ倒して、ぶっ壊してやる」
悔しくて仕方なくて覆いかぶさって肩を揺すると、眞壁はオレを跳ね返すこともなく、ぼんやりした目つきで見上げている。
「っ、おい、聞こえてるのか」
力なくぐったりとした様子に不安になって問いかけるが、呼吸をせわしなくさせて、眞壁は辛そうに眉を寄せた。
「……ゆか………は………やだ……よ……」
ぜいぜいと呼吸の合間に漏らす声も、すっかり掠れてしまっていて聞き取りづらい。組み敷いた体が抱いた時よりもずっと熱をもっているのがわかる。
汗ばんだ額に手を当てると。燃えるように熱く汗ばんでいた。
「……熱、あンじゃねえか。何でいわねえんだよッ」
必死で声をかけるが、焦点は合わないようで朦朧としている様子だった。
床に転がしておくわけにはいかねえな。
眞壁の重たい身体を抱き上げてベッドに転がして、衣服を脱がせた。肌にびっしり汗をかいて、だらだらと筋肉質な体の上を伝い落ちていく。
「なあ……やさ…………しく、シて……」
「バカヤロ、すっげえ熱出してる奴を痛めつけるような男じゃねえ。みくびンじゃねえよ」
思わず怒鳴りつけてしまったが、あんな卑怯な真似をしたオレに信用なんてあるはずはないなと思いなおす。
さっき出しておいたタオルで体を拭い、ぜいぜいと繰り返す呼吸が尋常じゃなくて、オレも変な冷や汗が出る。
さっきのセックスで内臓が傷ついたのか、クスリの後遺症なのかどちらかで、体が発熱しているのだろう。
体力も相当使ったと思うし、安静にしておくのが普通なのに、なんで平気そうな顔してメシとか用意してんだ、こいつ。
ありえねえし、無茶しすぎだろ…………。
心配で、仕方がなくなる。
あんなに怒りに任せて罵倒していたというのに、だ。
この感情が何なのかは、鈍感なオレにだって分かる。
分かりたくもないのだが、分かってしまう。
体を繋いだから起こる情なのか、それとも元々持っていたものなのかどうかは分からない。
オレはずっと、欲しかった。この男にオレのことを認めて欲しくて仕方がなかった。
オレの存在を憧れの人に認めてもらいたくて、近くにいてもかなわないから、外に出た。それなのに、外に出たって、何一つ変わらなくてイラついて仕方がなかっただけだ。
人の家の洗面所を勝手に使わせてもらうのは気が引けたが、バケツを見つけて水を汲んでくると、タオルを濡らして眞壁の頭の上を冷やすように乗せた。
オレも他の奴のように、眞壁さんって呼んで慕っていた頃もあった。あんな風に純粋に慕っていられたらよかったのに。
熱にうかされながら、優しくして欲しいと言われて、どんなに酷いヤツだと思われているんだろうと思うと、酷く悲しく感じた。
脅迫までして、身体を自由にして穢したのは自分自身なのに、勝手な言い草である。
オレは、この人を好きなのだ。
そんなことも素直に言えないくらいに気持ちは歪んでしまっているけど、好きだと思っているのは間違いない。
だからさっきは拒絶されて、感情的になった。
こんな卑怯な男なんて拒絶なんかされて、当たり前だというのに。
何度かタオルを取り替えていると、ぼんやりと眞壁はオレを見上げる。
「……きもち、いい……。ありが、と、な……」
熱で潤んだ目でそんなことを言われると、最中のことを不謹慎にも思い出して下半身が熱をもつ。
「……いいから………寝とけよ」
ごわごわの金髪を撫でると安心したように、目を閉じてモゴモゴとつぶやく。
「………Danke …………schon(ありがとう)」
また、天使語かよ……。なんだよ、ダンケシェってなんだろう。起きたら聞いてみるか。
この人がどうして、最大の人数を誇る派閥をもっているのか、言われなくてもわかっている。
飄々としていて掴みどころがないのに、仲間想いで仲間のためなら単身どこにでも駆けつけるし、報復だって厭わない。
それでいて威張ることもなく、無邪気で少し抜けていて人好きのする性格をしている。
そんなことは、昔から知っている。知ってるっていうのに。
始めたゲームは、ケリをつけるまで終わることはできない。
自覚したところで、本当に彼を手に入れることなどできないし、期待なんか……もう、できない。
だったら、それなら……。
この体だけでもオレのモノにしてしまっても、いいよな。
視線の下で漸く落ち着いたように眠りに落ちた眞壁を見下ろして、その手をぎゅっと掴んで決意を新たにした。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
禁断の寮生活〜真面目な大学生×体育会系大学生の秘密〜
藤咲レン
BL
■あらすじ
異性はもちろん同性との経験も無いユウスケは、寮の隣部屋に入居した年下サッカー部のシュンに一目惚れ。それ以降、自分の欲求が抑えきれずに、やってはイケナイコトを何度も重ねてしまう。しかし、ある時、それがシュンにバレてしまい、真面目一筋のユウスケの生活は一変する・・・。
■登場人物
大城戸ユウスケ:20歳。日本でも学力が上位の大学の法学部に通う。2回生。ゲイで童貞。高校の頃にノンケのことを好きになり、それ以降は恋をしないように決めている。自身はスポーツが苦手、けどサカユニフェチ。奥手。
藤ヶ谷シュン:18歳。体育会サッカー部に所属する。ユウスケとは同じ寮で隣の部屋。ノンケ。家の事情で大学の寮に入ることができず、寮費の安い自治体の寮で生活している。
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる