俺たちの××

怜悧(サトシ)

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夏休み編

探索の末に →sideY

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拉致した奴らは、オレが軽く脅したら簡単に口を割った。
襲撃前に動向をバラされたくはないから、一応まだ拘束はしたままだけど、まあ、連絡とれないという話にはなってるだろうから、早めにカタをつけなきゃならない。

それは誠士も同意見だった。

奴らから聞き出した雑居ビルの地下へ松葉杖をつきながら、逸る気持ちを抑えて階段を降りていく。
拉致した男達の話では、この二日間、東流はずっと性的暴行を受けているとの話で、すでに正気を失っているとのことだった。

リンチくらいの話だとタカをくくっていた自分が、本気でうらめしい。
無理にでも止めていればよかった。後悔は募るばかりだが、今更どうしようもない。
「康史。そんなに焦ってもどうにもならねえから。階段から落ちないようにしろよ」
話を聞いた後のオレの動揺に、危険を感じているのか落ち着かせるように誠士はオレの腕を軽く引く。
「うるせえ、…………悠長にしてっれっかよ」
すぐに駆け下りれないもどかしさがまさり、松葉杖を乱暴に床に叩きつける。
…………焦っても仕方がない。

そりゃ、誠士にいわれなくたってオレにだって分かっている。


防音になっている重い鉄の扉を開くと、側に立っている男達を松葉杖をブンと振り回しで一気に殴り倒す。

慌てて駆け寄ってくる男たちの数を数える。
…………15人か。
奥は盛況のようで、多分10人くらいはいるようだ。

「ヒダカ?」

次々になぎ倒されていく仲間たちに、驚き焦って臨戦体制に入って駆け寄ってくる男達の体を、オレは容赦なく松葉杖でぶちのめしながら、部屋に入る。

倒した後、ふらつきながら応戦しようとするヤツらを、誠士はなんなく貸したスタンガンでとどめをさしているようだ。

「誠士、背後はヨロシク」

「ハイハイ、けが人なんだから無茶しねーでよ」

ぐるりと視界を変えて、中央の高台に見えた人影に俺は目を見開いた。

むっとたちこめる独特の臭いと、湿った音が響き、部屋の中心で黒人の男に貫かれながら、金髪の男のペニスをしゃぶっている東流が視界に入る。

血の気がひいた。

そして、津波のようにせりあがった血が逆流したように頭に上っていく。

空気が止まる。

どんよりと快感に溺れた表情の彼は、オレが部屋に入ってきたことに、全く気がついていないようだった。

な、なにしてん、だよ!!?

頭の中が真っ赤になるような怒りが増して、周囲を取り囲む男達を次々に杖で殴り倒し、高台の近くへと歩みを進める。

ふざけんな。

松葉杖を支えに高台に飛び乗り、背後から黒人の男の頭に松葉杖を振り落とす。
触るな、触るな…………それは、オレのモノだ。

上がる悲鳴、怒号。
何も聞こえない。 

ぶちころす…………。

「…………トール、帰るぞ」

オレは血まみれの松葉杖を手にしたまま、動きをとめた男に脚を開いたままでいる彼を見下ろした。


黒人の男が杖で殴られた頭を抱えて、東流の体からペニスを引き抜き突き飛ばして床に転がる。

「うぎゃーッひ、oh!!アウ、チッ」

金髪の男は尻もちをついて、高台の隅にあとじさるように逃げるのを見て、俺は松葉杖を振り上げ、股間に一撃をくらわせる。

オレの声に気づいたのか、顔をあげたうつろな表情のままさまよわせた東流の視線が、ゆとくりオレをとらえる。

そして、一瞬ひどく絶望したように表情を歪めて、凍りついたように、無表情になりオレを見返す。

まだ転がったままの東流の方に歩み寄り、抱き起こそうと腕を伸ばした。

「帰るぞ、トール」

繰り返す言葉に、すぐに東流からのいらえはなかった。

触れようとして手を伸ばすと、軽く横に首を振られて拒絶されて指先を避けられた。
東流はぎゅっと眼を瞑ると、振り切るように再び眼を開き眼光に鋭さを灯し、自分で身体を起こす。

「怪我人が.......ムチャ、すんな……」

かすれ切った声を絞り出すと、唇だけでにやっと笑い返し、振り向きざま蹲る黒人を手錠がついたままの腕で容赦なく殴り倒す。
淫靡な空気を払拭するように、無敵と言われる身のこなしで手錠で拘束されたまま、高台から飛び降り華麗なる蹴りで一気に周囲の男達を床に沈めていく。

「…………ち、くしょ.......ケガ人のくせに……ッ」

ちらっとオレの足元を見やり、東流は唇についた血を舌で舐めとり凶悪な表情で、襲い掛かる男達を容易に蹴散らす。

「こんなケガくらいで、オレがザコにやられると思ったんかよ…………にしても、オマエ体力無敵すぎんだろ」
裸で何かを振り払うように暴れまわり始めた東流に、オレは目をみはる。
先ほどまで性的暴行の被害にあっていたとは到底思えない、今現在水を得た魚のように物理的暴行を加えている様子にため息をつく。

誠士は倒れている男達を裸に剥いて、携帯やカメラを没収して衣服で作った縄で拘束しはじめていた。

「うちの大将のエロ動画とか、ドコにあるんかね。まあ、俺らも脅しの動画撮らせてもらうけどな」

スマホを向けて、裸にした男達をひっくり返してにちらばっている玩具をアナルにぶちこんでは、写真と動画を撮影しカメラにおさめていく。
多人数でも二人に太刀打ちできないのか、完膚なきまでに男達が倒れていく。
壊滅状態になった部屋をためいきをつきながら見回し、誠士は転がっている手錠の鍵を拾う。

既に自分の持ち分は終わったとばかりに、全裸のままで壁に凭れ掛かっている東流に近づき、腕にかかった手錠を外す。

「大丈夫か?東流…………」
「…………ああ…………慣れてるから…………大丈夫。…………セージ、悪ぃな。……巻き込んで」
荒い呼吸をついで、らしくもなく謝る東流に誠士は眉を軽く上げて傷だらけになっている体を見やる。

「オマエ熱あんだろ。怪我もしてるし、追いはぎしといたから、とりあえず服着とけ」

男達からはがしたシャツをかけてやり、スエットの下を手渡す。
いつものように東流は平然としているようにも見えるが、なんだか様子がおかしくてオレはゆっくり近づく。
まあ、あんなふうに輪姦されてて、いつも通りだったら、逆に神経を疑うけど。
「トール、無茶しすぎ……、あんま心配させんな」
返り血で真っ赤になっちまった松葉杖をつきながら、歩み寄る。
身体の汚れを軽く拭ってスエットを履いていた東流は、オレからつっと視線を逸らした。
手を伸ばそうとすると、ひょいと軽く避けられる。
まあ、浮気とは言わないが、恋人を寝取られてオレもカチンとはきているが、だからって、そんな態度はないだろ。

まあ、弱ってるなら、泣すがるとかしてほしいし、助けにきたわけだし。

「ちっと我慢すりゃあ済む話だったからよ……。オマエが…………助けにくるまでもねぇ話だった……」

バチンッ

東流の頬が鳴り、思わず殴ってしまったことに驚いたのはオレの方だった。松葉杖を握った手はぷるぷると怒りで震えている。
「…………勝手なことばっかすんじゃねえっての……ケガしてるからって…………そんな、頼りねえのかよ、オレは」

どんよりと険悪な空気が流れ、東流は叩かれた頬を軽く指で擦ってじっと床を見つめた。

どうやら、謝る気はないらしい。

漸く助けたというのに、なんだか気持ちが重い。

「二人とも、警察来る前に帰るぞ。とりあえず、帰ってから話そうな」

微妙な空気を破って、誠士は二人の背中を叩き、地下室を出ようと急かす。

ここで傷害罪でつかまってはどうしようもない話だ。
オレは誠士の言葉に頷き、さっさと地下室を出ていく東流の背中を追った。
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