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15.温泉と病 (※)
しおりを挟む夜会の翌日になると、お茶会の招待状が何通か届いた。声をかけてきたシアスター伯爵からも、僕宛に届いた。なぜ? まだ僕のことを揶揄い足りないんだろうか?
「フィリップ様、どうしましょう?」
「そんなものは無視だ、無視!」
軽い殺気を飛ばしながら不機嫌そうに言うと、旅の支度を整え、早々に王都を出立した。
怒ってる?
「ほら来い」
「一緒に入るのですか?」
「何だ? 恥じらっているのか?」
フィリップ様は豪快にバサっと服を脱いで歩いていったけど、こんなに明るいところで裸を見られるのは恥ずかしい。
温泉っていう、温かい地下水が湧いている街なんだけど、この街はお湯が豊富にあるから公衆浴場がたくさんある。その一つを貸し切って一緒に入ろうと言われたのは数時間前のことだ。
石を積み重ねた池みたいなところにお湯が並々とあって、周りは壁で囲まれているから、人に見られることは無いんだけど、昼間だから明るいんだ。
「俺はお前の体は全部見てる。今更恥ずかしがっても遅いぞ」
もたもたしていると、フィリップ様に服を剥ぎ取られた。
お湯に浸かると、肌がツルツルした。このお湯はただのお湯じゃないんだ。凄い。
「フィリップ様、肌がツルツルです!」
「よかったな。ここの湯に浸かると美肌になるらしいぞ」
「ほら、ツルツル。触ってみてください」
そう言って腕を出したら、その腕を掴まれて引き寄せられた。
後ろから抱きしめられるみたいな格好で湯に浸かる。明るいし、外だし、いけないことをしているみたいでドキドキした。広いんだからこんなに密着しなくてもいいのに。でも、少しだけ嬉しかった。
「どれ、ツルツルになったんだって?」
「あっ、やだ、そんなとこ……」
フィリップ様が優しいってのは撤回しようと思う。フィリップ様は意地悪だ。こんなところで僕の胸や陰茎を弄り倒して、僕は何度も吐精してしまった。
「挿れてほしくなったか?」
「フィリップさま、いじ、わ、る……」
「おいテオ、顔が真っ赤だぞ。のぼせたか?」
本当はこの街では温泉に入るだけで、今日は次の街まで行って泊まる予定だったんだけど、僕が倒れたからこの街で泊まることになった。
「悪かった」
ベッドに寝かされて、窓から生温かい風が入ってくる。フィリップ様は本当に悪いと思ってるみたいで、扇子で僕にずっと風を送ってくれている。
そんなトラブルもあったけど、長い馬車の旅も終わって、やっとベルガー辺境伯領に戻ってきた。
やっぱり王都よりこっちの方が涼しい。
窓から入ってくる風も、そこまでの熱は含んでいなくて心地いい。
領地に戻ってひと月ほどすると、僕は体調を崩した。夏バテってやつかもしれない。そう思ってたのに、どんどん悪化して、お気に入りだったトマトの冷たいパスタも食べられなくなった。
もしかして、僕は死ぬんだろうか?
「テオ、お前もしかして……」
「僕は死ぬのかもしれません」
怖くて夜になるとフィリップ様に縋り付いて泣いた。
それなのに、フィリップ様はちょっと嬉しそうな顔をしている。やっぱり僕のことが嫌だったんだ。いなくなった方が嬉しいんだと思った。
山が緑から黄色や赤に変わり、庭から聞こえていた秋の虫の鳴き声も止んだ頃、少しだけ体調はマシになった。
「支えてやるから少し散歩をするか」
「僕になんて優しくしなくていいですよ」
「また拗ねてるのか? ほら体も回復してきただろ?」
仕方なく一緒に庭を散歩した。庭師が綺麗に整えてくれている庭園、窓から眺めるだけであまり来たことはなかったけど、ここにはこの地でしか育たない花も植えてあるらしい。
この花たちを愛でながら、残りわずかの命を穏やかに過ごしたいと思った。
僕は毎日、メイドたちと庭園に向かった。体力が落ちた僕のために、眺めがいい場所にベンチも用意してくれた。
「綺麗ですね」
「冬は寂しいですが、また春になったら別のお花も咲きますよ」
そっか。でも春の花は、僕は見られないかもしれないな。
最近、フィリップ様は昼間は忙しく動いている。使用人なのか愛人なのか分からないけど、見たことのない女の人も何人か見かけるようになった。
不貞は働かないなんて言ったけど、僕の体調が悪いせいで夜の相手ができないから、欲求不満なのかもしれない。仕方ないよね。僕が勤めを果たせないんだから。
胸の奥が、ズキズキと痛んだ。
僕はフィリップ様を独り占めしたかったのかもしれない。僕だけのフィリップ様でいてほしかったのかもしれない。
もう先のない僕がそんなこと願っても仕方ないんだけど。
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