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第十一楽章 目指した先には

入部してしばらく経った頃⑥

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「チューバはこの譜面だから。」

「はい!」

斉藤はチューバの先輩である田村先輩に譜面を渡された。

練習メニューと書いてある紙だ。
だけど斉藤は初心者。
楽器を選ぶとき栗本先生から言われたのだ。

「チューバね。」

「あ、、はい。」

なぜチューバなのか。それがわからなかった。

「にしても、、。」

「はい?」

「大きな音なるなぁ。本当に初心者?」

「初心者、、ですけど。」

「そうかぁ。肺活量あるのかも。斉藤くんは何かスポーツやってたの?」

「バスケやってました。小学校高学年から。」

「なるほどな。だからそんなに筋肉質なんだ。今でもトレーニングとかしてるの?」

「まぁ気が向いたときは。昼休みとか自然と体育館行ってます。」

「へぇ!まじか。バスケ好きなんだ?」

「まぁそうですね。」

「なるほどねぇ。斉藤くん知ってる?
プロの演奏家も結構スポーツやってた人多いんだよ。」

「そうなんですか?」

「うん。楽器吹くのって体力いるからね。
チューバなんてめっちゃ息使うからね。」

「確かにそうですね。」

「でしょ?しかも重いし疲れるし
演奏も伸ばしばっかりだしソロもない。
フルートとかトランペットとか全然目立つ楽器じゃない。」

「はぁ、、。なんか悪口ばっかになってません?田村先輩。」

「おっと、、いけねぇいけねぇ。
まぁ悪いことばっかじゃないよチューバも。」

「なんかうまくまとめましたね。」

そんなことを田村先輩に言われた。
だけど斉藤はいつも思う。

俺は多分、吹奏楽部に入ってもチューバをやる。

だってチューバ好きだもん。

この重くてでかいし目立たないけど
縁の下の力持ち。

バスケでセンター守ってたときもそうだったなぁ。

「ナイスリバウンド!斉藤!!」

「おう!!」

俺はみんなを支えることしかできないけど。
この役割が大好きだ。

「なぁ?斉藤先輩なんか嬉しそうじゃね?」

「え?どこが?」

二年生の前田と谷川は
斉藤の様子を見てじっくり観察していたが
わからなかった。

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