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狙いを定めたリンカ
しおりを挟む私はイヴァンが隣国に行く前に会わなくちゃと急いで執務室へ急いだ。
新しい侍女のスーザンも付いてくる。いつもはウルーシとロレンだけなのに邪魔だわ。
美形の二人を連れて歩くのが好きだから、いつもは侍女は連れて歩かない。
でもスーザンは、
「妃殿下がまた狙われる恐れもあります。なるべく大人数で移動して下さいと王妃様に言いつかっております。」
と言われては頷くしかなかった。
後ろを歩くウルーシに、
「ねえ、ウルーシ、ファビオは何処に行ったのかしら?私の護衛なのに側にいないのっておかしいと思わない?」
「私にはわがりがねまぜん。」
「まあ、ウルーシ、風邪?酷い鼻声よ!」
「ずびばぜん」
「気をつけてね。」と優しく微笑んで言ってあげた。
ハンカチも鼻に当てているし、ウルーシは私の虜ね。
「あら?そのハンカチ…私があげたハンカチではないのね。」
「びでんががら、いだだいだあんがぢは、っがえまぜんがら。」
「え⁉︎何を言っているか分からないけど、私があげたハンカチを使っていないから風邪なんかひくのよ、私のをあげるわ、使いなさい。」
と言って渡そうとすると、
「あ、鼻水が止まりました。妃殿下、お気遣い頂きありがとうございます。
ですが、妃殿下に風邪を移してしまいますのであまり近よりませんよう。」
と言って私から距離を取った。
「まあ!優しいのね、ウルーシは。」
気遣いは大事よね。
でもあの綺麗に刺繍されたハンカチは誰にもらったのかしら・・・。
イヴァンの執務室に着き、訪を告げてもらうと中からアルベルトがドアを開けてくれた。
「妃殿下、どうされました?イヴァン様は今おりませんが。」
「あらアルベルト、いつものようにリンカと呼んでほしいわ。」
「王妃様付きのスーザン様がいらっしゃいますので。それでどういった御用が?
只今執務が立て込んでおりましてイヴァン様がお戻りになられましたら御連絡させて頂きますので、一度お部屋の方に戻られてはいかがでしょうか?」
「イヴァンが隣国に行くと王妃様に聞いたの。出発する前にイヴァンに会いたかったのよ。でもアルベルトにも会いたかったの。
まだ病み上がりなのに急いで来てしまったから喉が渇いてしまったわ、お茶を一杯頂けるかしら?
スーザンもいるし、ちょうどいいわ。」
「・・・・畏まりました。ではどうぞ…。」
嫌々という感じが気になったが、執務室に入る事が出来た。
「まあロジーニもいたのね!良かったわ!」
「妃殿下、病み上がりですのに、あまり無理はなさらないよう気をつけて下さいませ。」
「フフ、優しいのね、ロジーニ。
スーザン、お茶を入れてくれるかしら。」
スーザンにお茶を入れてもらい、三人でお茶を飲みながら隣国ディオリジの問題が何なのかを聞き出そうとしたが、アルベルトもロジーニもまだ言える段階ではないと言い、教えてもらえなかった。
余程大事なのか、二人とも俯きがちで私と顔を合わせない。
ロジーニなど顔色も悪い。気分が悪いのかハンカチを口元に当てている。
「ロジーニ、体調が悪いのかしら?顔色が悪いわ、大丈夫?」
と下から覗くようにロジーニと目を合わせると、ビクっとなり目を逸らした。
ふと口元に当てたハンカチを見ると、さっきウルーシが持っていたハンカチの刺繍と同じだった。
「あら?そのハンカチはどなたから?」
と聞くと、
「・・・知り合いの奥方からお礼にと頂きました…」
「ロジーニも今日は口調が堅いのね。それより、知り合いって何方かしら?とっても素敵な刺繍ね。私も欲しいわ。」
と言うと急にアルベルトが、
「妃殿下、そろそろ私共は仕事に戻ります。
イヴァン様が出発されるまでに終わらさなければならない執務もございます。
大変申し訳ございませんが、お茶を飲み終われましたら、退室願えますか?」
「・・・そうね、ごめんなさいね、忙しい所に邪魔してしまったわ。
イヴァンが戻ったら私が呼んでたと伝えてちょうだい。
あと、ロジーニが持っていたハンカチはアルベルトも持っているの?」
「いえ、私は持っておりません。ハンカチが何か?」
「アルベルトも持っているなら私も欲しいと思ったのよ。お揃いみたいで楽しいでしょ?」
「そうでございますか。それではお気をつけてお帰り下さい。」
と言ってアルベルトは私を退室させた。
執務室から出て戻る間、考えていた。
何かおかしい・・・。
何かしらこの嫌な感じ…。
チラッと後ろを見ると、ウルーシもロレンもロジーニと同じく口元にハンカチを当てている。
チラッとしか見えなかったが、ロレンのハンカチもウルーシと同じ刺繍に見えた。
「ねえウルーシ、そのハンカチは何方に頂いたの?ロレンのハンカチと同じものよね?」
二人はしばらく黙っていたが、
「・・・・・ファビオ様の奥様のローラ様から隊長が世話になってるからと頂きました。」
とウルーシが言った。
“ローラ”
ファビオが私には目もくれず、一途に愛した女。
嫌だわ…何か嫌だわ…。
やっぱりそんな女…とても邪魔。
「そう。とても綺麗な刺繍ね。」
それだけ言って後は黙って歩いた。
そう…ローラ・・・貴方が私の邪魔をしているのね…。
貴方のハンカチが何かあるのかないのかなんて関係ない。
私のハンカチではなくローラのハンカチを使っているのが何より気に食わない。
一枚二枚あげたんじゃない、私は何枚もあげたのに、それを使わずローラのハンカチを選んで使っているのが我慢できない。
そう・・・なら私から何か結婚祝いを贈らないとね。
だって私の大事な護衛の奥様なんですもの。
何を送ろうかしら・・・フフ、奥様へのプレゼントは何が良いかしら…。
一人クスクス笑っているリンカの後ろ姿をウルーシ、ロレン、スーザンは睨みつけながらも、気味が悪いその様子に寒気がした。
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