帰らなければ良かった

jun

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復帰祝い

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刺されたあの日から一週間後には、我慢すれば痛みも大した事はなかったのに、目を離すと素振りをしそうだと言われ、三週間後になってしまった。

見つからないように、腕立て、腹筋、素振りをしていたおかげで、フラフラする事もない。


休んでいた間にあったすべての案件の調書を少しずつ読んだ。

ブライアンが心配して、少ししか読ませないから。
でも、ブライアンがいない時に一気に読んだ。


私が休んでいる間の逮捕者の数に驚いた。
イザリス公爵家の使用人やパブロフ商会、だけでも相当数だ。
そして、フランシス様やイザリス公爵夫人、私を刺したファンハイド卿の御息女、キャシー・ファンハイド。
彼女は辺境伯、私の伯父の所に幽閉となった。

キャシー・ファンハイド。

私は覚えている。
入隊試験の時、会場で見かけた。
実技試験の前にはいなくなっていた。

彼女はファンハイド卿の娘で、剣の腕もなかなかと聞いていた。

合格していたら、ミッシェルのように同期として仲良くやれていたかもしれない。

彼女は合格出来なかったのか騎士団にはいなかった。

それっきり忘れていた。


それが今になって何故?と思った。


逆恨み…なんだろう。

許しはしない。

けど、騎士になりたかったという気持ちは分かる。
父親はあのファンハイド卿だ。
私も伯父の姿を見て、騎士になったのだ。
あのファンハイド様を見てきたのなら、何故こんな事を…と思ってしまう。


フランシス様は、母親とナタリア様に狂わされてしまった。

純粋にブライアンの事が好きだったんだろうが、幼い時からの母親からの歪んだ愛情や、父親からの愛情が貰えなかった事で、どう人を愛すればいいのか分からなくなってしまったのかもしれない。

ナタリア様のブライアンに対する執着は私の想像を遥かに超えていた。

思い出したくないあの日の張本人のベルは修道院に行った。

ハア~なんか暗くなっちゃうなぁ…。


でも、私が休んでる間、みんなはその暗い澱んだ空気の捜査をしていたのだ、私が暗くなっていては申し訳ない。

「シシー、どうしたの?ため息なんかついて。」

いつの間にか来ていたブライアンが、私を抱きしめて、聞いてきた。

「いつ来たの?分からなかったよ。」

「たった今。そしたらシシーがため息ついてた。」

「ちょっと調書読んでたから疲れちゃったかな。」

「そっか。無理しないでね。
さあ!みんな待ってるよ、行こう!」

「うん!」

そう、私の復帰祝いを食堂でやってくれるそうだ。


最近はちょこちょこと団員のみんながお見舞いに来てくれていたが、ブライアンに気をつかい、皆あまり来れなかったのだとか。

と、ヤコブが言っていた。

ガース先輩は、ブライアンがいる時によく来てくれていた。

ガース先輩は、ブライアンが唯一気楽に話せる先輩だ。

穏やかで、いつもニコニコしているが、剣を持っている時と、他人を貶めるような悪口を聞いた時は、団長並みに怖い。
裏表のない尊敬出来る先輩であり、お兄ちゃんのような人だ。

ガース先輩は、ブライアンの扱い方が雑でそれが面白い。
ブライアンもそれが良いのかもしれない。

早く早くと私の腕を引っ張るブライアンは、小さな子供のようだ。

普段は仏頂面なのに。

食堂に着くと、

「「「「「オオオオオオオオーーーーーーー」」」」」

と歓声が上がった。

イーグルの人達もいる。


「シシリーが今日から復帰となる。
色々大変だったが、なんとか乗り切った。
今日は無礼講だ!飲んで食べて、シシリーの復帰を祝おうーーー!」


「「「「「オオオオオオオオーーー」」」」」





こうして宴が始まった。














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