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第二部 最大級の使い捨てパンチ
「誘拐は食後にお願いします」
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その日の夜、エレナは呑気に屋台で串焼きを買って歩いてた。なぜ一人かと言うと晩御飯だけでは腹が満たせず、そして今日は腹の虫が収まってくれそうになかったからだ。
まあ一日色々あって疲れたんだろうな、こんなときくらい自分にご褒美上げないとな。そんなふうに自身の言い訳をしながら街に繰り出した。
「いやぁ夜の街なのに結構明るいっすねぇ。人もいっぱいで賑やかなのはいいっすけどちょっと落ち着いて食べたいっすよね」
一人なのに大きめに呟いた。周りからみれば少しアホの子であるがエレナは気にしない。なぜならアホの子だから。
そして本当に路地裏に入ってしまう。屋台など通りは大賑わいだが、治安は良くないとされているこの街で大通りをはずれるということは襲ってくださいと言っているようなものだ。
案の定それを付け入る数人の影がエレナに気が付かれぬよう慎重についていく。
「じゃあいただきまー」
エレナが大口を開けて食べようとしたその時、地面の砂が踏み潰される音がして、視線は自然とそちらに向けられた。するとどこからどう見ても悪党ですという姿形のごろつきが数名揃ってねっとりとした笑みを浮かべてエレナを見ていた。
「ひゃひゃひゃ、女ぁ、殺されたくなきゃ大人しくしな」
そう言うとエレナを囲うように後ろからもフードを深く被った品の悪そうな集団がくる。前には顔を出したごろつき、後ろにはフードを被った集団。そしていまフード被っだ集団を見てごろつきたちも慌てて顔をフードで隠した。
もう遅いだろというツッコミはせず、うんざりしたような目で集団を見回した。
「ぞろぞろとなんすか?」
その声は特に震えておらず、この状況下においても冷静であることを示している。
「おら眠っちまいな」
ごろつきの一人がそう言いながらエレナに突っ込む。手には布切れを持っていて、直前に何かの液体をかけていた。
吸えば気を失う劇薬だったが、スピードには自信があるエレナはさっと避ける。串焼きが落ちないよう最大限配慮しつつ最小限の動きでかわした。まるで通り抜けるように避けられたごろつきは勢い余って地面に転倒した。
「ちょ、串焼き食べるまで待ってください」
エレナは迷惑そうにそう言った。そしてまた口を開く。文句を言う為ではなく串焼きを食らうために。
「んなこと言われて待つバカがいるかよっ」
「待ってって言ってんでショーがー!!!」
2人目が同じ様に薬品をかけた布をエレナに押し付けてきたが、先程の繰り返しのように避けられる。エレナは串焼きを頬張り急いで咀嚼している。しかし味わう心は忘れずに、両頬に手を当てタレの味を嗅覚と味覚で感じ取りながらとろけるような表情をする。
「この女ただものじゃねえ」
「この状況で串焼きくってんぜ」
この状況で串焼きを貪るエレナにごろつきたちは若干引いている。
「んぐんぐ、これおいしいっすね。タレが甘辛くってなんとも言えないっす。今度はロット君たちも一緒に食べたいっすね。あー誰か飲み物持ってたら欲しいっす」
本来怖がるはずのごろつきたちに対して飲み物の要求までするエレナにリーダーらしき人物が怒りを露わにする。
「てめえ、調子に乗りやがって」
「あの、水ならありますけど」
「てめーも渡してんじゃねーよ!」
思わず飲み物を渡したごろつきはリーダーらしき人物にげんこつを食らう。それを尻目にエレナは口の中いっぱいにある串焼きの後味を水で体内に流し込んだ。
「くぅー。やっぱ美味しいもののあとに飲むのはうまいっすねー。あ、お待たせしたっすね。ごちそうさまでした。それで何のようです?」
もはや怖がる素振りどころか感謝するエレナにリーダーらしき人物は頭をかきむしりながら悶えている。
「野郎どもかかれ!」
かろうじてそれだけ指示すると、そこは悪者の集団だけあり一斉にエレナを標的に行動を開始した。しかしエレナが両手を左右に突き出してストップをかける。その堂々たる仕草に思わずごろつきの足が止まった。
「待つっす!あたし痛いの勘弁なんで、人さらいなら大人しくついていくんで乱暴しないでくれますか?」
エレナは大真面目な顔でそういった。そんな事を言う被害者にあったことがないリーダーらしき人物は
「へ?」
と間の抜けた声を漏らした。もちろん他のごろつきたちの困惑も必須であり、互いに顔を見合わせる。こいつで合ってるよな、頭おかしいのか?などゴソゴソ話し合っている。
その様子に何故かエレナの方からじれったそうに提案した。
「だから人さらいっすよね?この人数じゃ善戦できても多分最終捕まっちゃうんで怪我しないうちに大人しく捕まります」
「お、おう」
もはやエレナのペースで話が進む。捕まえる側が捕まる側の指示を受けながら拘束するというよくわからない事態に納得いかないごろつきたちは怪訝な顔をしつつ手足を縛る。
「んーまあまあっすね。あたし逃げる気はないんでできれば手荒な真似はせず連れてってくださいね」
「ま、まあ、一応傷はできるだけつけるなって言われてるからな」
もはやごろつきたちはエレナの運ばれごごちまで気を使いながら慎重に持ち上げた。そして見た目では囚われの身となったエレナが偉そうに言う。
「じゃ、行きましょうか」
捕らわれたエレナを先頭に集団が動いていく。あまりにも自然に。
「あぁ、って違うちがう。野郎どもいくぞ!俺について来い!ったくこの女なんなんだよ」
かろうじてハッと気がついたリーダーらしき人物が慌てて全員に声をかけて、エレナはどこかに連れて行かれた。流石に目隠しもされてどこに向かっているのかも分からないままで、普通ならば絶体絶命には変わりなかった。
まあ一日色々あって疲れたんだろうな、こんなときくらい自分にご褒美上げないとな。そんなふうに自身の言い訳をしながら街に繰り出した。
「いやぁ夜の街なのに結構明るいっすねぇ。人もいっぱいで賑やかなのはいいっすけどちょっと落ち着いて食べたいっすよね」
一人なのに大きめに呟いた。周りからみれば少しアホの子であるがエレナは気にしない。なぜならアホの子だから。
そして本当に路地裏に入ってしまう。屋台など通りは大賑わいだが、治安は良くないとされているこの街で大通りをはずれるということは襲ってくださいと言っているようなものだ。
案の定それを付け入る数人の影がエレナに気が付かれぬよう慎重についていく。
「じゃあいただきまー」
エレナが大口を開けて食べようとしたその時、地面の砂が踏み潰される音がして、視線は自然とそちらに向けられた。するとどこからどう見ても悪党ですという姿形のごろつきが数名揃ってねっとりとした笑みを浮かべてエレナを見ていた。
「ひゃひゃひゃ、女ぁ、殺されたくなきゃ大人しくしな」
そう言うとエレナを囲うように後ろからもフードを深く被った品の悪そうな集団がくる。前には顔を出したごろつき、後ろにはフードを被った集団。そしていまフード被っだ集団を見てごろつきたちも慌てて顔をフードで隠した。
もう遅いだろというツッコミはせず、うんざりしたような目で集団を見回した。
「ぞろぞろとなんすか?」
その声は特に震えておらず、この状況下においても冷静であることを示している。
「おら眠っちまいな」
ごろつきの一人がそう言いながらエレナに突っ込む。手には布切れを持っていて、直前に何かの液体をかけていた。
吸えば気を失う劇薬だったが、スピードには自信があるエレナはさっと避ける。串焼きが落ちないよう最大限配慮しつつ最小限の動きでかわした。まるで通り抜けるように避けられたごろつきは勢い余って地面に転倒した。
「ちょ、串焼き食べるまで待ってください」
エレナは迷惑そうにそう言った。そしてまた口を開く。文句を言う為ではなく串焼きを食らうために。
「んなこと言われて待つバカがいるかよっ」
「待ってって言ってんでショーがー!!!」
2人目が同じ様に薬品をかけた布をエレナに押し付けてきたが、先程の繰り返しのように避けられる。エレナは串焼きを頬張り急いで咀嚼している。しかし味わう心は忘れずに、両頬に手を当てタレの味を嗅覚と味覚で感じ取りながらとろけるような表情をする。
「この女ただものじゃねえ」
「この状況で串焼きくってんぜ」
この状況で串焼きを貪るエレナにごろつきたちは若干引いている。
「んぐんぐ、これおいしいっすね。タレが甘辛くってなんとも言えないっす。今度はロット君たちも一緒に食べたいっすね。あー誰か飲み物持ってたら欲しいっす」
本来怖がるはずのごろつきたちに対して飲み物の要求までするエレナにリーダーらしき人物が怒りを露わにする。
「てめえ、調子に乗りやがって」
「あの、水ならありますけど」
「てめーも渡してんじゃねーよ!」
思わず飲み物を渡したごろつきはリーダーらしき人物にげんこつを食らう。それを尻目にエレナは口の中いっぱいにある串焼きの後味を水で体内に流し込んだ。
「くぅー。やっぱ美味しいもののあとに飲むのはうまいっすねー。あ、お待たせしたっすね。ごちそうさまでした。それで何のようです?」
もはや怖がる素振りどころか感謝するエレナにリーダーらしき人物は頭をかきむしりながら悶えている。
「野郎どもかかれ!」
かろうじてそれだけ指示すると、そこは悪者の集団だけあり一斉にエレナを標的に行動を開始した。しかしエレナが両手を左右に突き出してストップをかける。その堂々たる仕草に思わずごろつきの足が止まった。
「待つっす!あたし痛いの勘弁なんで、人さらいなら大人しくついていくんで乱暴しないでくれますか?」
エレナは大真面目な顔でそういった。そんな事を言う被害者にあったことがないリーダーらしき人物は
「へ?」
と間の抜けた声を漏らした。もちろん他のごろつきたちの困惑も必須であり、互いに顔を見合わせる。こいつで合ってるよな、頭おかしいのか?などゴソゴソ話し合っている。
その様子に何故かエレナの方からじれったそうに提案した。
「だから人さらいっすよね?この人数じゃ善戦できても多分最終捕まっちゃうんで怪我しないうちに大人しく捕まります」
「お、おう」
もはやエレナのペースで話が進む。捕まえる側が捕まる側の指示を受けながら拘束するというよくわからない事態に納得いかないごろつきたちは怪訝な顔をしつつ手足を縛る。
「んーまあまあっすね。あたし逃げる気はないんでできれば手荒な真似はせず連れてってくださいね」
「ま、まあ、一応傷はできるだけつけるなって言われてるからな」
もはやごろつきたちはエレナの運ばれごごちまで気を使いながら慎重に持ち上げた。そして見た目では囚われの身となったエレナが偉そうに言う。
「じゃ、行きましょうか」
捕らわれたエレナを先頭に集団が動いていく。あまりにも自然に。
「あぁ、って違うちがう。野郎どもいくぞ!俺について来い!ったくこの女なんなんだよ」
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