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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「エルフは高値で買いますよお」

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地下室に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。薄暗い照明の下、豪華な服に身を包んだ小太りの商人が立っており、ぎとついた笑みを浮かべて待ち構えていた。

「いらっしゃいまし、お客様」

奴隷商人は深々と頭を下げ、その態度は一見丁寧だが、どこか嫌らしさが滲んでいる。レナはその挨拶を受け流すように、冷ややかな目で彼を見つめる。

「あぁ、手下が世話んなったね」

言葉には、皮肉がこもっている。奴隷商人はそれに気づいた上で、むしろさらに喜色を浮かべた。

「反逆の牙の頭首様ですね?こちらこそ、素晴らしい商品をありがとう御座いました。本日は頭首自らお買い物ですかな?奴隷の素晴らしさに気づかれたようで、嬉しゅうございます」

商人はメガネをキラリと光らせ、金歯をむき出しにして笑う。その笑みは、相手を完全に見下していることを隠そうともしていなかった。レナはその態度に苛立ちを覚えたが、それを表には出さず、静かに返す。

「調子に乗らないことだね。あたしは奴隷なんて大嫌いなのさ。今日はうちの馬鹿な手下が売っちまった人を返してもらいに来たよ。ほら、金ならある」

そう言って、レナは手元の金袋を取り出し、無造作に奴隷商人に渡した。しかし、奴隷商人はその金袋をあけて一瞥しただけで、その場を動かなかった。

「ほうほう……うーん、足りませんなぁ」

奴隷商人の言葉に、レナの眉がぴくりと動いた。彼女は冷静さを保とうと努めながらも、少し苛立った声で言い返す。

「なっ、金貨は1枚も手を付けてないよ?きっちり300枚あるはずさ」

しかし、奴隷商人は「わかっていないなぁ」という表情で首を振り、何度も経験してきた商談の一環として、楽しげに話を続けた。

「それはお売りになった価格でしょう?私達も商売としてやらせてもらっていますので、店頭価格は金貨1000枚となっております」

その言葉に、場の空気が一気に変わった。パンチが驚愕の声を上げ、ロットも青ざめた顔で奴隷商人に詰め寄る。

「なっ、ボッタクリじゃないか!そんなお金払えないよ!」

パンチは奴隷商人の胸ぐらをつかみ、ロットもすぐ横で怒りをあらわにしている。しかし、奴隷商人は豹変した。

「てめぇら、ガタガタ抜かすんじゃねえ!あの商品はその額でも買う客がいるんだよ。第一、売った時点でわたくしの商品、財産なんだ。これでもサービスしてやったってのになんて態度だ。払えねえってんなら、今すぐけえんな、貧乏人どもめ」

奴隷商人はドスの効いた声でそう言い放ち、パンチの手を強引に解き放した。レナは、思わず拳を握りしめたが、すぐに冷静さを取り戻し、静かに反論する。

「下手に出てりゃ、あたしらだって力ずくで返してもらったっていいんだからね」

その一言に、奴隷商人の目が鋭く光った。彼の口元には、まるで罠にかかった獲物を前にしたかのような、いやらしい笑みが浮かんでいた。

「ほぉ、やりますか?」

レナの挑発に、奴隷商人はニヤリと笑い、余裕たっぷりに応じた。彼は自分がこの場を完全に掌握しているという自信に満ちていた。エレナはその状況を見て、静かにレナに歩み寄る。

「まあまあ、一回戻って作戦立て直しましょ。お金さえ払えば返してくれるって言ってるッス。それに一応それだけの値打ちがつくなら、大事には扱ってくれるっすよ」

エレナは穏やかな口調でいい、レナを引き止めた。奴隷商人もまた、その言葉に耳を傾け、興味深げにエレナを見つめた。

「おぉ、あなたは話が分かる方のようだ。それにエルフではありませんか!?どうですか?エルフを売るというのなら商品を御返しに、いやさらに1000枚出しましょう!」

商人の目が輝き、交換条件を持ちかけるように提案する。通常なら侮辱に近い提案だが、エレナは気にした様子もなく、肩をすくめてみせた。

「馬鹿なこと言わないで。エレナの言う通り、一度帰りましょう。あなたの家で立て直すのよ」

ケイトの言葉に、レナは渋々頷いた。彼女たちは、商人の嫌らしい笑みを背にして、地下室から去っていった。
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