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三章 ギルド
それから。
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クロスボウのボルトに纏魔を施し、それがどの程度持続するか。その検証の為、スージィが魔法で生成したボルトと通常の鋼鉄製のボルトをそれぞれ保管し、定期的に確認する事を開始してちょうどひと月。
鋼鉄製のボルトは翌日から纏魔の効果が徐々に弱くなり、三日目には効果が無くなってしまった。しかしスージィが魔法で作ったボルトは、ひと月経った今でも纏魔の効果は持続している。
「魔力が元になっているもの同士、結びつきが強いって事か?」
チューヤがそう疑問を呈する。
「それにしても、魔法は術者が解除するか、他者が介入しないと解除できないのに、纏魔って時間経過で霧散しちゃうんだねえ?」
「だが、その魔法で生成されたモノに付与した纏魔は、そのモノが現存している限り持続するようだな」
マリンアンヌとカールが言うように、今回の検証で思わぬ事実も明るみになった。
「考えてみれば、纏魔状態のチューヤって、魔法を受けてそれを取り込んだりするじゃない? これもそれと似た感じで、土系統魔法で作られた魔法と纏魔が一体化しちゃったとか?」
このスージィの推論は妙に説得力があった。確かに纏魔状態のチューヤは自ら魔法を食らう事により、その属性の魔力を扱う事が出来るようになった。攻撃魔法は放てないが、各属性の魔力を攻撃に利用するというちょっとしたチートキャラになっている。
しかしその話を聞いていたマンセルが、珍しく冷静さを欠いて話に割って入ってくる。
「ちょ、ちょっとお待ちください! ではチューヤ様には魔法が通用しないと?」
それを聞いたチューヤはカラカラと笑って答える。
「まさか。纏魔で身体が頑丈になってる状態だから出来る事だよ。それにいくら纏魔状態だからって魔法を食らえば痛えんだぜ?」
「チューヤはこんな事言ってるけど、実際かなりの威力の魔法ぶつけても『いてっ』とか『あちっ』とか『つめてっ!』くらいの反応だし、かすり傷一つ負ってないもの。余程の大魔法でもないと、魔法でコイツを倒すのは無理だと思うわよ?」
チューヤの発言をフォローするつもりもなさそうな言葉でスージィが拾う。それを聞いたマンセルが諦めたように言った。
「かと言って、物理攻撃でも纏魔の鎧を抜けそうにはありませんからなぁ。実質無敵という事ですな」
「ほわぁ~。チューヤ様、凄いですねえ……」
そうかと思えば、ミラは目をキラキラさせながら尊敬に近い眼差しで見つめている。
「でもなあ、実際のところ、夜間のゲリラ戦とかならマリには勝てねえぞ?」
「うん? ボク?」
カールとスージィが静かに闘志を燃やし始めたところで、チューヤがマリアンヌに話を振る。それにマリアンヌはキョトン顔だ。
「ああ、そうだな」
「こっちがマリを見つける前に、クロスボウで射抜かれておしまいよね」
これについてはカールとスージィも納得のようで、あっさりチューヤの意見に同意してしまう。
「そうですな。マリアンヌ様の弱点は、せっかく敵に先んじて標的を発見しても、それを攻撃する術がなかった事です。それが今は、超長距離から狙撃できるクロスボウと、魔眼がある。このコンボは強力すぎます」
マンセルがそう言うが、マリアンヌだけは異議があるようだった。
「そ、そうかな? でもチューヤとか、野生のカンで簡単に避けちゃいそうだけど」
これにはチューヤ以外の全員が無言で首肯した。
「お前ら俺を何だと――」
――コンコン
それにチューヤが反論しかかったタイミングで、扉をノックする音が彼を遮る。
「ハナです。依頼のリストをお持ちしました」
「おー、入ってくれ」
チューヤが許可を出すと、カチャリとドアを開き、ギルドの受付をやっているハナが入室してきた。手には数枚の紙を持っている。その紙を一枚ずつアストレイズのメンバーに配っていった。
「今皆様にお渡ししたのは同じ内容のものです。依頼の内容と報酬額、その他条件などが書いてありますので、どうぞご査収下さい」
四人がそれぞれ紙に目を通していく。
「ふむふむ、バーサクラビットの討伐にイノシシの駆除、チンピラへの報復……」
「ん……?」
「なにこれ?」
「随分太っ腹な依頼人ね?」
そして一同がリストの一番下にあった依頼を見て、首を捻った。
【戦闘教練。拘束期間一日、報酬五十万】
たった一日で破格の報酬。詳しい内容は不明だが、教えるだけなら命の危険もない。ここにある報酬とは、アストレイズの四人で分配させる額なので、ギルドの運営費用などは差し引かれている。
「よっしゃ、討伐依頼なんかは手分けしてさっさと片付けちまおう。最後にこの金持ちの依頼を受けてやろうじゃねえか」
これには全員が同意した。
鋼鉄製のボルトは翌日から纏魔の効果が徐々に弱くなり、三日目には効果が無くなってしまった。しかしスージィが魔法で作ったボルトは、ひと月経った今でも纏魔の効果は持続している。
「魔力が元になっているもの同士、結びつきが強いって事か?」
チューヤがそう疑問を呈する。
「それにしても、魔法は術者が解除するか、他者が介入しないと解除できないのに、纏魔って時間経過で霧散しちゃうんだねえ?」
「だが、その魔法で生成されたモノに付与した纏魔は、そのモノが現存している限り持続するようだな」
マリンアンヌとカールが言うように、今回の検証で思わぬ事実も明るみになった。
「考えてみれば、纏魔状態のチューヤって、魔法を受けてそれを取り込んだりするじゃない? これもそれと似た感じで、土系統魔法で作られた魔法と纏魔が一体化しちゃったとか?」
このスージィの推論は妙に説得力があった。確かに纏魔状態のチューヤは自ら魔法を食らう事により、その属性の魔力を扱う事が出来るようになった。攻撃魔法は放てないが、各属性の魔力を攻撃に利用するというちょっとしたチートキャラになっている。
しかしその話を聞いていたマンセルが、珍しく冷静さを欠いて話に割って入ってくる。
「ちょ、ちょっとお待ちください! ではチューヤ様には魔法が通用しないと?」
それを聞いたチューヤはカラカラと笑って答える。
「まさか。纏魔で身体が頑丈になってる状態だから出来る事だよ。それにいくら纏魔状態だからって魔法を食らえば痛えんだぜ?」
「チューヤはこんな事言ってるけど、実際かなりの威力の魔法ぶつけても『いてっ』とか『あちっ』とか『つめてっ!』くらいの反応だし、かすり傷一つ負ってないもの。余程の大魔法でもないと、魔法でコイツを倒すのは無理だと思うわよ?」
チューヤの発言をフォローするつもりもなさそうな言葉でスージィが拾う。それを聞いたマンセルが諦めたように言った。
「かと言って、物理攻撃でも纏魔の鎧を抜けそうにはありませんからなぁ。実質無敵という事ですな」
「ほわぁ~。チューヤ様、凄いですねえ……」
そうかと思えば、ミラは目をキラキラさせながら尊敬に近い眼差しで見つめている。
「でもなあ、実際のところ、夜間のゲリラ戦とかならマリには勝てねえぞ?」
「うん? ボク?」
カールとスージィが静かに闘志を燃やし始めたところで、チューヤがマリアンヌに話を振る。それにマリアンヌはキョトン顔だ。
「ああ、そうだな」
「こっちがマリを見つける前に、クロスボウで射抜かれておしまいよね」
これについてはカールとスージィも納得のようで、あっさりチューヤの意見に同意してしまう。
「そうですな。マリアンヌ様の弱点は、せっかく敵に先んじて標的を発見しても、それを攻撃する術がなかった事です。それが今は、超長距離から狙撃できるクロスボウと、魔眼がある。このコンボは強力すぎます」
マンセルがそう言うが、マリアンヌだけは異議があるようだった。
「そ、そうかな? でもチューヤとか、野生のカンで簡単に避けちゃいそうだけど」
これにはチューヤ以外の全員が無言で首肯した。
「お前ら俺を何だと――」
――コンコン
それにチューヤが反論しかかったタイミングで、扉をノックする音が彼を遮る。
「ハナです。依頼のリストをお持ちしました」
「おー、入ってくれ」
チューヤが許可を出すと、カチャリとドアを開き、ギルドの受付をやっているハナが入室してきた。手には数枚の紙を持っている。その紙を一枚ずつアストレイズのメンバーに配っていった。
「今皆様にお渡ししたのは同じ内容のものです。依頼の内容と報酬額、その他条件などが書いてありますので、どうぞご査収下さい」
四人がそれぞれ紙に目を通していく。
「ふむふむ、バーサクラビットの討伐にイノシシの駆除、チンピラへの報復……」
「ん……?」
「なにこれ?」
「随分太っ腹な依頼人ね?」
そして一同がリストの一番下にあった依頼を見て、首を捻った。
【戦闘教練。拘束期間一日、報酬五十万】
たった一日で破格の報酬。詳しい内容は不明だが、教えるだけなら命の危険もない。ここにある報酬とは、アストレイズの四人で分配させる額なので、ギルドの運営費用などは差し引かれている。
「よっしゃ、討伐依頼なんかは手分けしてさっさと片付けちまおう。最後にこの金持ちの依頼を受けてやろうじゃねえか」
これには全員が同意した。
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