婚約さえ出来ない令嬢はストレス発散にこっそりダンジョンに潜ります~S級冒険者や第一王子が私に言い寄ってきてますが気のせいでしょう~

柊彼方

文字の大きさ
49 / 58
ダンジョン

驚愕

しおりを挟む
「…………うっ!」

 ダンジョンに潜ってすぐにマルクは鼻を押さえた。
 この血の生臭さと金属の錆びたような臭い。
 流石に王族には慣れているはずもなく、マルクは顔をしかめている。

「やっぱりマルク様は止めておいた方がいいのでは?」
「そうだな。王族を危険な目に遭わせるわけにはいかない」

 そんな様子を見てアレンとキールが意気投合して口にする。
 日に日にマルクへのキールの態度がきつくなっていると思うのは私の気のせいだろうか。
 まぁレイ騒動の時に何かマルクとは会ったのだろうが、そこまで関係も悪化していないようなので安心していいだろう。
 
 当然、そんな舐められるようなことを言われてマルクが黙っているわけがない。

「な、舐めてもらったら困る。俺だって魔法は使えるんだよ」

 マルクは少し胸を張りながら言った。
 それに関しては二人とも文句がないようで押し黙る。

 マルクの魔法レベルはA級を超える。
 武力全振りのアレンにも渡り合えるほどの魔法を持つ。
 しかし、肉体がまだまだひょろがりなのでキール同様、激しい戦闘は出来ないだろう。

「じゃあどの階層に行く?」

 転移石の前に辿り着いたときアレンが後ろを振り返って聞いてくる。
 するとキールは少し間をおいて考えてから言った。

「61階層なんてどうです?」
「少し最前線過ぎないか? マルク様はどう思う?」

 キールの提案にアレンは頭を抱える。
 長年の経験とトラウマのせいだろう。どうやらアレンは私たちをそこまで深層には行かせたくないようだ。
 特にマルクは今日が初の冒険だ。どれだけ実力があろうと結局最後は経験がものを言う。

 そのため当の本人にアレンは聞いた。
 すると、マルクは少しだけ意地を張るように、

「俺は…………62階層ぐらいがいいね」
「…………なッ! なら僕は63階層がいいと思います!」
「いや、やっぱり64階層がいいと思うよ」

 そんな子供のような意地の張り合いをしている二人を見てアレンは溜息を吐く。
 だが、それでも二人は負けたくないようで、体外に視線をぶつけ合うように睨み合っている。

「「くっ…………!」」
「はぁ…………ならエリスはどうす…………エリス?」

 当てが外れたアレンは最後の頼みの綱である私に聞いてくる。
 しかし、アレンが振り返ったところには私はいなかった。
 そのためアレンは少しだけ焦りながら辺りを見回す。

「…………なッ! エリス!? 何をしようと」

 私を見つけたアレンは驚愕するように、いや、怯えるように私を見てきた。
 まぁ言いたいことは分かる。

 早まるな! と言いたいのだろう。

 でもね? 私に60階層レベルなんて物足りないんですよ。
 ってことで行きましょうか!

「70階層!」
「「「……………………あっ」」」

 私の元気な声に三人は茫然としている。
 その様子に私は頭をかきながら苦笑いをして答えた。
 
「一応、辺りは確認したけど誰も冒険者はいなかったわよ?」

 私の言い訳に三人は喧騒を変えて叫んでくる。

「そ、そういうことじゃない!」
「そうですよ! エリス様!? 70階層って理解してます!? 未到達地ですよ!?」
「そうだよ! 70なんてちょっとやりずぎじゃ…………」

 だが、そんな物言いもすぐに聞こえなくなってくる。
 そう。転移が開始されたのだ。

 こうして私たちの視界は真っ黒に染まった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...