うさぎの耳はロバの耳

斑猫

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朝ごはんにお魚

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ここは天国?
柔らかくて温かい。お日様の匂い。
フカフカな毛皮の感触。ふふふ!
スリスリと頬擦りしてぎゅっと大きな
毛皮を抱きしめる。幸せ……

目を開けるとアイスブルーの瞳と目が合う。
大きな銀色の狼がじっと私を見ている。
うお!一気に目が覚めた。

「おはようニケ」

「お、おはようございますイルさん」

そうだった昨夜はイルさんのテントに泊めて
もらったんだった。
いつも寝ている物置小屋じゃない。

モフモフなイルさんを抱き枕にして寝たら
物凄く気持ちよく眠れた。

なんかスッキリ。

「朝飯を食ったらうさぎ村に行こう。
ニケ、悪いが少しテントから出ていて
もらってもいいか?」

「あ、はい」

イルさんから離れてテントの外に出る。
うわ!湖がきれい。
バタバタと近くに寄る。
朝日を浴びてキラキラ輝く水面。

昨日は薄暗かったからなんか不気味だった
けれど、実はこんなに景色が良かったんだ。

湖だよね?池と湖ってどう違うんだろう?

水が透き通っている。

「わ!魚?」

透明な水の中を大きな魚がすい~っと泳いで
行った。あ、また!

今度は小魚が群れで目の前を通過。

………じゅる。

あれ捕れないかな?
朝ごはんに魚。

……じゅる。

片手鍋で魚すくえるかな?その辺は浅そう。
わくわくと靴を脱いでスカートをたくし
上げて水に入る。
冷たい~。わ~気持ちいい。

水不足の折りに水遊びなんて贅沢~!
パシャパシャと小魚を追いかける。

素早い!

片手鍋で小魚をすくおうとしたけれど
逃げられた。

ん?あ、あそこに大きな魚が!
そ~っと近寄る。

うん。まだ動かない。
思い切り片手鍋鍋を魚めがけて振り下ろす。

バシャン!

瞬間移動?と思うほどあっという間に魚は
片手鍋鍋を避けてすい~っと少し離れた所
を優雅に泳いでいる。

おのれチョコザイな!
絶対に捕まえてやる!

バシャン!空振り。
バシャン!空振り。

すい~っと優雅に泳ぐ魚。
むかつく!

これ以上深い所に行くとせっかく昨日
イルさんに巻いてもらった膝の包帯が濡れ
ちゃうけど……あの魚が捕りたい。

もうちょっとだけ……膝が濡れないように
上半身だけ伸ばして無理な体勢で片手鍋を
魚めがけて振り下ろした。

バシャン!


魚はすい~っと逃げていき自分が頭から
水に落ちた。
ドッポン!バシャッ!

バシャッ!バシャッ!バシャッ!
足が届かない。
何でこんなに急に深いの~!!
私は泳げない~~!!

溺れていたらぐいっと凄い力で引っ張られ
抱き上げられた。

「ニケ!大丈夫か?何でちょっと離れただ
けで溺れているんだ!」

人化したイルさんだ。
上半身裸のイルさんに救助された。
助かった……危なかった。死ぬかと思った。
でも、半裸の男の人と密着。
別の意味で死にそうだ。恥ずかしい!
イルさんカッコいいし。


「ごめんなさい。魚を捕ろうと思って」

「魚?」

「朝ごはんに魚が食べたくて」

「参ったな。そんなに腹がすいてたのか。
でも泳げないのに水に入ったら駄目だろう。
とりあえず無事で良かった」

イルさんにテントまで運んでもらいタオル
と着替えに男物のシャツとズボンを手渡さ
れる。何から何までスミマセン。

借りた着替えは男物なのでサイズが大きい。
シャツもズボンも裾を幾重にも捲り上げ
ウエストは紐でぐるぐる縛った。
何とか着替えを済ませテントを出ると
なんかいい匂いがする。

「お、着替えたか。だいぶ大きいな。
悪いがしばらく我慢してくれ」

すでに先に着替え終えたイルさんが
声をかけてくれる。
あれ?焚き火で魚を焼いている。

「え?魚!」

「ニケが食いたいというから捕ってきて
焼いている。もうすぐ焼ける。
朝食にしょう。その前にそこに濡れた服
を干してくるといい」

見るとテントの側の木と木の間にロープが
張ってあり先にイルさんのズボンと下着が
干してある。あ、これに干すのね。
本当に何から何まですみません!!

朝食にいただいた焼き魚は大きくて
油がのっていておいしかった!
塩味がたまらない。

じゅる。

私が着替えている間にさらっと魚を捕って
焼いていてくれるなんてイルさん凄い。

朝ごはんにお魚。
何て贅沢なの。

朝からお腹一杯食べて幸せ。
朝食の後にまた薬を塗って新しい包帯を
巻いてもらった。

イルさんって本当にいい人~!!

私の食い意地の悪さからちょっとした
ハプニングはあったけれど私とイルさんは
予定通りうさぎ村へと出発した。













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