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しおりを挟むついにAランク試験当日がやってきた。いい緊張感を持てているし、調子も悪くない。武器の手入れも念入りに行った。朝にはコクヨウに付き合ってもらって手合わせをした。俺の動きも鈍ったりしていない。自信を持っていこう。
コクヨウが同行を申し出てくれたので、俺の試験を見届けるギルド職員とコクヨウと共にオークの巣に出向いていた。俺の目的はオークキングだが、そこに辿り着くまでには中々大変だ。きっちりとオークを倒して進まないと奥にいるオークキングと戦うときに危険だからな…。
聞いている情報では、このオークの巣は20程のオークとオークキングで構成されているらしい。これはまだ小さい方の巣だな。発見が早かったのだろう。オークは繁殖が早いので、すぐに巣の規模が大きくなる。
狩り逃しのないようにオークを狩っていくのが大事だ。出来るだけ素早く、一対一で仕留めていくのが理想だ。他の敵に悟られることなく、静かに…一撃で命を刈り取る。
「気をつけてね、タカミ」
「おう」
「コクヨウさん、過度なアドバイスは禁止ですよ。」
「ハイハイ…」
「うしっ!行くぜ。取り敢えずはオーク全部狩るから、ちょっと待っててくれ。気配消していきたいから、少し距離開けてくれるか?」
「うん、危なくなったらすぐ駆けつけるからね!」
「おう、頼りにしてるぜコクヨウ」
「お気をつけて。」
嗅覚の鋭いオーク対策に匂い消しを振りかけ、静かに、確実にオークの背後に迫る。そして手にした小刀で首筋を適切に狙い突き刺す。時々2体引っ掛けてしまうこともあったが、慌てることなく冷静に対処した。
ふむ、粗方片付いた。けれど残りの数体が居ない。恐らくキングのところにいる。多対一になるか…。まぁ予想の範囲内。今まで使っていたオークの血に塗れた小刀をしまい、使い慣れた相棒である長剣に手をかける。
狭い空間での戦いになるので小刀を使っていたが、さすがにキングオークの相手は小刀では無理だ。あとは魔法…今まで消費魔力を抑えるために温存したが、ここからは躊躇なく使う。
進んでいった最奥。自然の洞窟を利用したオークの巣の中でも広めの場所に出る。キングオークが侵入者である俺達を無警戒に眺めている様子なのは、自分の方が強いと思っているに他ならない。予測したとおり、キングオークに侍るように5体のオークがいた。
「ふぅ…取り敢えず、取り巻きから始末する。」
向かってくるオーク共にむけてファイアーランスで攻撃する。皮膚が厚いので、当たる場所によっては効果が薄い。しかし、怯んではくれるのでその隙をついて、切りつける。奇襲のようなものだが、取り巻きのオークは片付いたので良しとしよう。
本番はここからだ。取り巻き達が居なくなってようやく俺が脅威となる敵なのだと認識したらしい。オークの2倍もの巨体でありながら、オークよりもよっぽど素早く力も強い。つまり一撃でも浴びれば一貫の終わりだ。
魔法も使うが、基本的には剣に纏わせる。そうすることで切れ味や破壊力を高める。猛然と向かってくるのを引き付けつつ交わし、切りつける。浅い傷しか負わせられないが、それでいい。
浅い傷でも積み重ねれば大ダメージだ。一発で倒せたらそりゃあカッコイイだろうよ。だけど俺には出来やしねぇ。俺はただの凡人だ。そんな俺には俺なりの戦いってもんがある。地道に泥臭く行く。
「はぁ…はぁ…よし…俺の勝ちだ。」
勝ち切る頃にはヘトヘトになっていたが、俺は確かにキングオークに勝利した。そして街に戻り、俺は正式にAランク冒険者となった。
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