57 / 130
57
しおりを挟むついにAランク試験当日がやってきた。いい緊張感を持てているし、調子も悪くない。武器の手入れも念入りに行った。朝にはコクヨウに付き合ってもらって手合わせをした。俺の動きも鈍ったりしていない。自信を持っていこう。
コクヨウが同行を申し出てくれたので、俺の試験を見届けるギルド職員とコクヨウと共にオークの巣に出向いていた。俺の目的はオークキングだが、そこに辿り着くまでには中々大変だ。きっちりとオークを倒して進まないと奥にいるオークキングと戦うときに危険だからな…。
聞いている情報では、このオークの巣は20程のオークとオークキングで構成されているらしい。これはまだ小さい方の巣だな。発見が早かったのだろう。オークは繁殖が早いので、すぐに巣の規模が大きくなる。
狩り逃しのないようにオークを狩っていくのが大事だ。出来るだけ素早く、一対一で仕留めていくのが理想だ。他の敵に悟られることなく、静かに…一撃で命を刈り取る。
「気をつけてね、タカミ」
「おう」
「コクヨウさん、過度なアドバイスは禁止ですよ。」
「ハイハイ…」
「うしっ!行くぜ。取り敢えずはオーク全部狩るから、ちょっと待っててくれ。気配消していきたいから、少し距離開けてくれるか?」
「うん、危なくなったらすぐ駆けつけるからね!」
「おう、頼りにしてるぜコクヨウ」
「お気をつけて。」
嗅覚の鋭いオーク対策に匂い消しを振りかけ、静かに、確実にオークの背後に迫る。そして手にした小刀で首筋を適切に狙い突き刺す。時々2体引っ掛けてしまうこともあったが、慌てることなく冷静に対処した。
ふむ、粗方片付いた。けれど残りの数体が居ない。恐らくキングのところにいる。多対一になるか…。まぁ予想の範囲内。今まで使っていたオークの血に塗れた小刀をしまい、使い慣れた相棒である長剣に手をかける。
狭い空間での戦いになるので小刀を使っていたが、さすがにキングオークの相手は小刀では無理だ。あとは魔法…今まで消費魔力を抑えるために温存したが、ここからは躊躇なく使う。
進んでいった最奥。自然の洞窟を利用したオークの巣の中でも広めの場所に出る。キングオークが侵入者である俺達を無警戒に眺めている様子なのは、自分の方が強いと思っているに他ならない。予測したとおり、キングオークに侍るように5体のオークがいた。
「ふぅ…取り敢えず、取り巻きから始末する。」
向かってくるオーク共にむけてファイアーランスで攻撃する。皮膚が厚いので、当たる場所によっては効果が薄い。しかし、怯んではくれるのでその隙をついて、切りつける。奇襲のようなものだが、取り巻きのオークは片付いたので良しとしよう。
本番はここからだ。取り巻き達が居なくなってようやく俺が脅威となる敵なのだと認識したらしい。オークの2倍もの巨体でありながら、オークよりもよっぽど素早く力も強い。つまり一撃でも浴びれば一貫の終わりだ。
魔法も使うが、基本的には剣に纏わせる。そうすることで切れ味や破壊力を高める。猛然と向かってくるのを引き付けつつ交わし、切りつける。浅い傷しか負わせられないが、それでいい。
浅い傷でも積み重ねれば大ダメージだ。一発で倒せたらそりゃあカッコイイだろうよ。だけど俺には出来やしねぇ。俺はただの凡人だ。そんな俺には俺なりの戦いってもんがある。地道に泥臭く行く。
「はぁ…はぁ…よし…俺の勝ちだ。」
勝ち切る頃にはヘトヘトになっていたが、俺は確かにキングオークに勝利した。そして街に戻り、俺は正式にAランク冒険者となった。
37
お気に入りに追加
1,274
あなたにおすすめの小説

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)
【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。
N2O
BL
狼の獣人(異世界転移者)×兎の獣人(童顔の魔法士団団長)
お互いのことが出会ってすぐ大好きになっちゃう話。
待てが出来ない狼くんです。
※独自設定、ご都合主義です
※予告なくいちゃいちゃシーン入ります
主人公イラストを『しき』様(https://twitter.com/a20wa2fu12ji)に描いていただき、表紙にさせていただきました。
美しい・・・!
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

獅子王と後宮の白虎
三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品
間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。
オメガバースです。
受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。
ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。

ひとりぼっちの嫌われ獣人のもとに現れたのは運命の番でした
angel
BL
目に留めていただき有難うございます!
姿を見るだけで失禁するほどに恐ろしい真っ黒な獣人。
人々に嫌われ恐れられ山奥にただ一人住んでいた獣人のもとに突然現れた真っ白な小さな獣人の子供。
最初は警戒しながらも、次第に寄り添いあい幸せに暮らはじめた。
後悔しかなかった人生に次々と幸せをもたらしてくれる小さな獣人との平和な暮らしが、様々な事件に巻き込まれていき……。
最後はハッピーエンドです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる