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しおりを挟む家を持った時にする筈だったが、コクヨウを拾って二人で暮らすことになったので、こんな年になってやっと初めてのひとり暮らしだ。コクヨウがいないだけでこんなにも静かだ。
全く持ってやる気も出ない。無気力ながらも1日明けてやっと行動を開始した。照らす朝日が寝不足の俺には眩しくて堪らない。家の中ももちろん掃除したいが、それよりも取り敢えず墓の掃除だな。
外にある分汚れやすいからな。先ずは生えに生えた雑草を取り除いていく。森に近いだけあって、直ぐに草の群そう地になってしまう。雨ざらしで錆びてしまった鎌では切れ味が悪いがそれも仕方がない。無いよりマシだしな。切れ味がない分、力任せにはなるがそう広くもない範囲だからな。
30分ほどで草刈りを終えて、次は墓本体だ。もう着なくなった服などの布を再利用して、それで水拭きしていく。苔なんかも生えていたが取り除いた。まぁ、洗浄の魔法で一発ではあるんだが、こういうのは自分でやるって気持ちも大事だろ。
半日がかりで、やっと墓掃除を終えた俺は、彼の墓の前で長々と手を合わせた。そして街を出ていたあいだのコクヨウの事を沢山報告し終えたところで、腹の虫が鳴いた。
そろそろ飯にするかと思ったところで、来客がやってきた。
「タカミさん!帰ってきたって聞いたから、母ちゃんが色々持ってけって言うから届けに来たぜ!それとコクヨウに会いに…あれ?コクヨウは?」
「サク、だったな?」
「そうだぜ。」
「質問に答えよう。コクヨウは一緒じゃない。アイツはSランクパーティーに加わったんだ。」
「え?なんで…だって…だってさ、コクヨウはタカミさんのこと大好きだったじゃん!そのタカミさんを置いてSランクパーティーに入るなんて…アイツどうしちゃったんだよ!!」
「俺が無理矢理入れた。」
「は?なんで!!アイツがそれを望まないことなんて知ってるじゃん!」
「そうだな…それでも、俺といるより良いと思っちまったんだから仕方ねぇだろ。俺はアイツを幸せにすると決めてる。」
「アンタが!!コクヨウが何よりも望んだアンタがコクヨウの幸せを勝手に決めつけるなよ!!…本当…最悪だ…。帰る」
「………」
言い返す言葉が見つからなかった。肩を落として帰っていく姿を見送ることしか出来なかった。何かを食べる気分でも無くなったな…。はぁ…どうすりゃ良かったってんだよ…
コクヨウの将来の可能性を見せ付けられて…それでも俺に縛り付けておけば良かったってのか?ずっとコクヨウの隣で…もしかしたら俺といる事を選んだのを後悔しているかもしれないと考えながら…?
俺はそんなに俺自身に自信を持ってはいねぇんだよ…。だからこそコクヨウの手を放してしまったのだから。
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