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しおりを挟むコクヨウは彼らの所有する馬車へと乗り込んで行った。我慢していたが流石に視界が滲む。コクヨウから完全に見えなくなるまでは…絶対に零さない。上を向いて無理矢理耐えたが、見えなくなってしまえば気が抜ける。
ぼろぼろと涙を流しながら反対側の門へ向かって街を縦断する。まだ朝早いので人通りも少ないことが救いだろう。こんな情けない姿多くの人に見せたいものでは無いのだから。
「おい!何泣いてやがる。タカミ」
「……センリ」
「おう」
こんな時にセンリに見られるとは…なんでもないように装いつつ、出来るだけ普通に話す。もう泣いてるとこ見られてるんだから無意味な気もするが。センリは世話焼きだからな。こんな俺のことも気にしてしまうだろう。
「大丈夫…それに俺ももう行かないとならない」
「あ?一人でどこ行くんだよ」
「元いた街に帰る」
「獣人の坊主はどうした?」
「将来有望だからな…Sランクに預けた」
「そうか…」
「まぁ…そういうことだから…じゃあなセンリ」
「おう…」
センリと別れたあとは特に誰とも出会すことなく街を出ることができた。そしてスールエを目指して歩き始める。ぼろぼろになった防具と剣を頼りに、時折出てくる魔物を倒しつつ進む。
貯めていた金もすべてコクヨウに渡してしまったからな。今の俺は無一文だ。Bランク以上の強さを手に入れられる気もしないしな。また森で一人で暮せばいい。
暫くすると、無事に街に辿り着くことができた。俺の姿を見つけた面々が声をかけてくれるのに適当に答えながら、街を過ぎて森へと向かう。そこには俺達の…いや、俺の家が以前と変わらずにあった。
多少汚れてはいるが、掃除すれば問題ないだろう。取り敢えず、ベッドを寝られる状態にしないとな。今日はゆっくり眠りたい。床にホコリの積もった我が家へと足を踏み入れる。
懐かしさと共に、コクヨウの姿が脳裏をよぎる。一人で帰ってきてしまった寂しさに押しつぶされそうだ…。この家を手に入れてから殆どの時間をコクヨウと過ごしてきた。ずっと孤独だった俺の初めての大切な家族だった。
自分から手放しておいて女々しいものだな…。俺の手の中にはもう何もない。本当に独りなんだな。いつでも手を伸ばせばコクヨウがそこに居てくれる気がする。ここに帰ってきてくれるんじゃないかと思う。
一人で丁度いい筈の部屋の中が広く感じられる。ははっ…おかしいよな…こんなの。一人用のベッドも…部屋も…どうしてこんなにも広いんだよ。寝転がってみても、無意識に開けてしまう右側。そこにあるはずの無い姿を探している。
寂しい…勝手に流れる涙を拭う気力すらない。本当は掃除もしなくてはならないが、限界だ…。目を閉じる。眠れる訳でもないが…酷く疲れているのだ。目を開けても閉じても考えるのはコクヨウのことばかりだ。
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