21 / 130
21
しおりを挟むあっという間に2ヶ月が経過し、ギルドにもそろそろランクを上げないかとせっつかれていたのだが、ちょうどよくコクヨウも学校の泊まりがあるのだ。お泊り学習という名目で、親元から離れて2泊する。まぁ親離れ子離れの練習でもある。
「コクヨウ、ちゃんと忘れ物ないか確認したか?」
「うん、下着も服もちゃんとあるよ。」
「じゃあいいか。今日は早めに寝ちまうか。俺も明日は長くなりそうだからな。」
「うん」
俺は明日から指定の依頼として、商隊の街から街への移動の護衛を引き受けている。俺も自分の荷物の準備を終えている。コクヨウも真剣な顔で何度もチェックしていたので、おそらく大丈夫だろう。念の為に幾らかコクヨウにも金を持たせてあるしな。
2泊では長期依頼には心許ない期間なのだが…依頼で帰れない間は友達三人衆のところで預かってくれるというので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。その代わりコクヨウも店を手伝ってもらうと言っていたが、それは俺達の為なのだろう。
申し訳無さを感じないように配慮してくれているのだと思う。コクヨウも友達の家にお泊りだと楽しそうにしていたので、そんなに心配はしていない。流石に無償で、というのは申し訳ないのだが、いつも店で買い物してくれるお得意さんなんだから気にするな、と押し切られてしまった。
また今度帰ったら何か礼をしようと思う。例えばコクヨウに教えているように剣でも教えてみるのもいいかもしれないな。たとえ店を継ぐとしても少しくらい戦えた方がいいだろうからな。
そんなことを考えながら目を閉じればあっという間に朝がやってきた。コクヨウも新しい経験を前にワクワクしているようで、ご機嫌に尻尾が揺れる。なんだかんだ寂しがると思ったが、案外平気そうか?
むしろ俺のほうが寂しくなるぜ…。
けれど学校に送り届けたときには流石に寂しそうな様子を見せた。一応コクヨウのために準備しておいたものを渡した。コクヨウの居場所が分かるのと同じように、俺の位置を見られる魔導具だ。まぁ位置がわかるからと言って安心できる訳ではないかもしれないが…
「コクヨウ、これで俺の居場所わかるからな。」
「…うん…帰ってこなかったら地の果てまで探しに行けるね。」
一瞬背筋に悪寒が走った気がして、反応が遅れる。コクヨウが先程見せた瞳の奥の暗い影。コクヨウの心の傷が深く、まだ癒えてはいないことが垣間見える。
「は…はははっ!コクヨウもそんな冗談言うんだな。まぁちゃんと帰ってくるからよ。行ってくるぜ」
「別に冗談なんかじゃ…。まぁいいや。タカミ行ってらっしゃい」
ひらひらと手を振って、見送ってくれるコクヨウと別れる。そして依頼人と護衛仲間との待ち合わせの北門へとやってきた。商隊の面々が丁度積み込みをしていた。
「護衛依頼を受けたタカミだ。積み込み手伝うか?」
「冒険者のタカミさんですね。私はセノと申します。旅路をお世話になります。積み込み、重い物をお願いしてもよろしいでしょうか?情けない話、非力なものでして…」
「任せてくれ。置く場所の指示を頼む。」
「はい、大変助かります。ありがとうございます」
「いや、いいんだ。力仕事は得意分野だからな。」
俺の手伝いもあって、少し早めに積み込みを終えることが出来たらしい。そこへ丁度、他の冒険者達もやって来たので、早速街を出る。
53
お気に入りに追加
1,275
あなたにおすすめの小説
胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?
一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう)
湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」
なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。
そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」
え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか?
戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。
DKの青春BL✨️
2万弱の短編です。よろしくお願いします。
ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

ミルクの出ない牛獣人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「はぁ……」
リュートスは胸に手をおきながら溜息を吐く。服装を変えてなんとか隠してきたものの、五年も片思いを続けていれば膨らみも隠せぬほどになってきた。
最近では同僚に「牛獣人ってベータでもこんなに胸でかいのか?」と聞かれてしまうほど。周りに比較対象がいないのをいいことに「ああ大変なんだ」と流したが、年中胸が張っている牛獣人などほとんどいないだろう。そもそもリュートスのように成体になってもベータでいる者自体が稀だ。
通常、牛獣人は群れで生活するため、単独で王都に出てくることはほぼない。あっても買い出し程度で棲み着くことはない。そんな種族である牛獣人のリュートスが王都にいる理由はベータであることと関係していた。

王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました
サクラギ
BL
戦場で共に戦う者たちを慰める場所、聖域がある。そこでは国も身分も関係なく集うことができた。
獣人と戦士が書きたいだけで始めました。独りよがりなお話をお許し下さいます方のみお進みください。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる